第19話 条件

城の一室で王とライデル元帥が話をしていた。


セシル姫が冒険者として世界を見て周りたいと言われてから、二人は時あるごとに話をしていた。


「何故突然セシルは、世界を見て周りたいなどと言いだしたのじゃ。

わからん。わからんのう。」


「まあ、目が良くなったというのが一つの理由でしょうな。

それだけでは無さそうですが……」


「……ずっと辛い思いをさせてきた。

あの子の望みを叶えてやりたいのじゃが、あまりにも危険すぎる。

簡単に、わかったとは言えん。」


「それは、そうです!

姉エリシアが生きていても、一緒ですよ。

う〜ん。どうしたものか……」


その時、扉を開けセシル姫が入ってきた。


「お父様、叔父様〜。

ここにいらっしゃったのですね。

ふふふっ。探しましたわ〜。」


手に分厚い例の日記を持ってセシルがやってきたのだった。


「うん?何じゃ?何か用事か?」


「実は、お父様と叔父様に見て頂きたい物があって参りました。これです。」


セシルが手に待つ日記を開いて、王と元帥の前に出す。


「お母様の日記です。」


王と元帥は、日記に視線を落とす。


" 王の妃になって、何不自由のない毎日。

国を治める王のお手伝いも、そして民と触れ合う毎日もどれも愛してやまない日々。

とても充実した日々。

いつまでも続くであろう幸せな日々。

それを思うと自然に笑みがこぼれるのです。

ガーランド王国が幸せに包まれる一方で、私の知らない世界で、何が起こっているのか?

そちらの興味もわいてくるのです。

王妃となった今、世界を見て周ることはもうできない。

1番に民のことを考えないといけないから。


私のこの興味は、いずれできるであろう愛しい子に受け継いで貰いたい。

世界を見て、冒険し、困窮に、そして希望を失った者達に光を与えて貰いたい。

決してガーランド王国だけという考えではなく、世界中が幸せに溢れる未来を作って貰いたい。

これが、まだ見ぬ我が子への母としての願い。勝手な私の願いなのです。"




王と元帥が読んでセシル姫の顔を見た。


「………セシルよ。……エリシアの……其方の母の願いを叶えたいと申すのか?」


「…はい。

私が何を出来るとは思っていません。

しかし〜昔からこの日記を……お父様から託され〜何度もお母様の日記を読んできました。

目が悪くなり〜お母様の願いを叶えられないと何度も落ち込んでいました。

しかし、目が〜視力が復活して……思いが、思いが強くなったのです。

何も出来ないと思います。

しかし〜お母様の願いとともに〜視力が戻った目で世界を見たいという欲を抑えられないのです。」


「…………私としては……エリシアの……エリシアの日記を読んで、エリシアがこんなことを考えていたのかと思うと同時に、エリシアの願いを叶えようとするセシルの思いを……尊重したいと考えるが……ライデルよ、其方は……其方はどうじゃ?」


「………姫、とても危険なのですぞ。

わかっておられるのか?」


「はい!承知しておりますわ〜。

悪魔の嫁にと言われた時〜私は死を意識しました。

危険があるのはわかっていますが〜今は気持ちが高揚しています!大丈夫です。」


「………では、条件をつけよう!

王よ。私が条件を付けてよろしいですか?!」


「おお。良かろう。エリシアの弟の其方は、その権利はある!」


王の言葉に頷き、元帥は姿勢を正しセシル姫に対峙し、言う。


「姫、何度も言うが非常に危険だということを再度言わせて頂く。

その上で、それをされるというならば、姫にエルフの女戦士を二人付けましょう。

これは、まだ条件ではありませんぞ!

貴方は、ガーランドの宝なのだ。

護衛は必須ですからな。」


「はい。

それで条件は〜何でしょうか?」


「………エルフの戦士が2名付いたところで、姫の盾となるだけで、なんら危険が緩和された訳ではありません!

やはり、旅の同行者!

それも、腕の立つ冒険者の力が必要です!

あのフミヤ様とリリィ殿!

あの方達の力は、本物!

条件は、あのお二人と同行できるならということにしたい。

当然、あのお二人は寝耳に水といったところです。

姫、貴方自身が、あのお二人を説得するのです。

そして、同行を認められれば王も私も認めましょう!いかがですかな?」


すると王が言う。

「おお!それはいい!

あの二人なら安心じゃ!

新しく指名依頼すれば!

問題ないじゃろう!」


「王よ!

それでは意味がありませぬ。

姫。同行者といっても、依頼という形ではいけません!あのお二人に仲間と認めて貰わないといけません!ほんの一、二ヶ月の旅ではないのでしょう?

すれば、仲間として同行しなければいけません!」


「………ふふふっ。

これは〜なかなか難しい条件ですわ〜。

あのお二人の空間に〜お邪魔することに〜なるのですから〜。

……わかりました。

その条件で構いませんわ〜。

お仲間にしていただけるよう〜努力いたしますわ〜。」


フミヤとリリィがギルドに行っている間に、このような話がされていたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


フミヤとリリィが城に戻ると、セシル姫がすぐにやってくる。


「フミヤ様〜リリィさん!

お話よろしいでしょうか〜。」


「はい!どうしました?

フミヤ様!いいですよね!」


(ああ!いいぞ!お茶でも頂きながら聞こうか!)


俺達は、お茶を飲みながら話を聞くことにした。


「フミヤ様〜リリィさん!

率直に申します〜。

私も〜旅に連れていっては〜貰えませんか!

世界をこの目で見て周りたいのです〜。

お願いします!」


「えっえ〜!姫ですよ!

姫が本当に冒険者になるのですか!

ギルド本部長が言っていたこと、本当だったんだぁ!

ひっ姫ですよ!危険なこともあるのですよ!」


「はい。覚悟は〜しております。

本気なのです〜。母の願いを叶えたいのです〜。

世界を見て周るという願いを。」


「どっどうしますか?フミヤ様!」


(……王と元帥はどう言っているの?)


「お二人に仲間として、同行を許して頂ければという条件を出されました〜。」


(………なるほど。

う〜ん。………なら、俺とリリィからも条件を出そう。

簡単に、ハイそうですかとは言えない。

そうだろう?リリィ。

俺達と立場が違うからな。)


「まあ、そうですね。

だって、姫ですもん。ガーランド王国の姫ですもんね。で、フミヤ様、どんな条件にするんですか?」


(そうだな。……取り敢えず冒険者になるというなら、魔物が狩れるようにならないとな。

明日から、迷いの森のあの屋敷を拠点として魔物を狩ってもらおうかな。

1週間。1週間後、それで判断させてもらう。

取り敢えず、ゴブリンくらいは、単独で倒して貰わないとな。それが個人としての力量の試験。

オークくらいの魔物は、俺達との共同作業だ。パーティとして成り立つかの試験だ。

この条件をクリアしたら、いいぞ。

リリィも何か条件を付けるか?)


「そうですね〜……その条件で私も良いと思いますわ。

コブリン討伐、大体ギルドの依頼でEランクの依頼ですもの。

それくらいこなして頂けないと私とフミヤ様に付いてくるのは無理ですから。

私からは確認です。

姫、私達に同行するということは、立派な馬車などありませんよ。

歩く時は、歩きますし、馬車に乗るとしても荷馬車のような乗合馬車です。

時には、野営することもありますよ。

それでも大丈夫ですか?」


「はい!わかっています〜。

明日から〜しっかりと〜頑張りますので〜

よろしくお願いします。」


(言っとくけど、甘くないからな。

俺達は、 Aランクだ。

それなりの形にならないと、失格だからな。

それは、頭に入れといてくれ。)


「はい!

努力いたしますわ〜。」


セシルは、その後王と元帥に報告に行くと言って席を外した。


「フミヤ様。

オークは厳しすぎるのではなくって?」


(オークは単独でとは、言ってないよ。

彼女は、弓士だ後方支援だろ?

どこに矢を放てば俺達が戦いやすくなるのか、それを学習してもらうんだ。

これは、彼女だけの試験ではないよ。

俺とリリィも、彼女を含めた戦闘に慣れる1週間でもあるんだよ。)


「ふふふっ。フミヤ様。

もう同行させる気じゃないですか!」


(まあ、ある程度できるようになったらな。

俺ら以外に任せるのも、心配だなっていう気持ちもあるんだ。

こうやって出会ったのも縁だからな。)


「まあ!フミヤ様!

フミヤ様の1番は、私ですよ!

これは、姫でも譲れませんわ!」


(なっ何の1番だよ!)


「そんなの〜決まってるじゃないですかぁ。

フミヤ様ったら!」


そう言って抱きついてくるリリィ。


実体化してから、スキンシップが凄いんだけど。


俺も、男だからね。リリィ。


俺の理性はいつまで耐えれるのだろうかと思うのだった。


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