第18話 捨て台詞

侯爵派の貴族の兵団は、一旦王派の兵団によって捕らえられた。

侯爵派貴族も同様だ。


俺とリリィは、王と元帥セシル姫に促されて城にそのまま招かれた。


城は、侯爵派の兵士が攻め入った傷痕が多少残っていたが、支障はない程度のものであった。


エルフの戦士が牢屋に捕らえられていた宰相や、重臣達を解放していた。


その者達が王の前に跪く。


王が語る。


「皆が無事とはいかなかったようじゃな。

………しかし、其方達は良く生きていてくれた!

又、力を貸してくれ!

ガーランド王国は、今日!再スタートを切るのじゃ。

よろしく頼む。」


重臣達は、涙を流しながら大きく頷く。


そこに、エルフの戦士が引きづるように連れてきたのがアバズレ王妃と王子、そして王女の二人。

エルフの戦士が床に叩きつけるように投げた。


床に這いつくばる王妃達。


王妃は、王の足に縋り付く。


「あっ貴方〜こっこれは、全てスナイデル侯爵に脅されてしてしまったことですわ!

だから、お許しくださいますわよね!

貴方は、エリシアを亡くして寂しい身ですもの。

慰めるのは、私しかできませんわ。」


「離せ!離さんか!

汚らしい!

あの馬鹿侯爵と交わった体で私に触れるでない!

私は、貴様を王妃と認めたことは一度たりとない!

私の妃は、エリシアただ一人じゃ!

現に貴様とは、一切触れぬ関係であった!」


「そんなことをお言いになってよろしいのですか!

世継ぎはどうするのです!

世継ぎが居ないと困るのは貴方ですよ!

さあ、意固地にならず、私達を受け入れればよいのです。今なら私に対して吐いた暴言も許して差し上げますわよ。」


「貴様は、どの口で言っておるのじゃ!

世継ぎ?貴様に、なんの関係がある?!

なんの関係もないではないか!

そこにいる、王子を名乗る者も王女を名乗る者も私の血が少しでも通っているのか?!

貴様と馬鹿侯爵の子ではないか!

ある意味そやつら3人も貴様と馬鹿侯爵の被害者と言えるであろうな。

侯爵はクーデターの首謀者。

その本人は死亡。侯爵家は取り潰しじゃ。

罪の責任をとるのは、貴様じゃ。

追って処罰を申し付ける。

それまで牢屋に入っておれ!

貴様の子3人は、今日から平民じゃ!

このガーランド王国で平民として生きるか、よその国に行くのか好きにせえ!」


「なっなぜ!なぜ私が牢屋に!

悪いのは全てスナイデルでしょう!

今なら、許してあげますから!

世継ぎが必要なはず!」


「ふん!私は、考えたのじゃ。

私が亡き後は、ライデル元帥に王となってもらう。

ライデルは、エルフじゃ。

私が亡き後も、生き続ける。エルフは長寿じゃからな。

民達も、ライデルなら喜ぶじゃろ。

そして、セシルもエルフの血で長寿。

いずれ、セシルが伴侶を得て国の運営に興味を持てば、セシルが女王となることも良しじゃ。民は、今でもエリシアを愛してくれておる。セシルが女王となれば、ライデル同様民は喜ぶじゃろ!

しかし、貴様もしつこい女じゃ。

罪人じゃというのに!

早う牢屋に入れておけ!

そして、そこの3人は城から掘り出せ!

城に一歩たりとも踏み入れさせるな!」


エルフの戦士が王妃だった女とその子三人をひきづっていく。


王妃は、ここで捨て台詞を吐く。


「愚王が!

愚王が偉そうに!

自分の妃も守ることができない愚王が!

エリシアは、私が水に混ぜた毒を疑いもせずに飲んで死んだ馬鹿女!

いつまでもその幻影に縋りつく!女々しい愚王!」


「「「!!!」」」


王とライデル元帥、セシル姫の表情が変わる。


王がライデル元帥に向け言う。


「ライデル!殺せ!」


ライデルは、その瞬間、剣を王妃だった女の首に振り下ろす。


王子だった者と王女だった者の三人は、母親の呆気ない最期に、声すら出せなかった。

そして、ガタガタと震えるだけであった。


エルフの戦士は、そんなこと気にせず三人をひきづって城の外に叩き出すのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺とリリィは城の一室を与えられガーランド王国に滞在中は城で寝泊まりすることとなった。


そして、翌日俺とリリィは冒険者ギルドに顔を出した。


何やら受付が騒がしい。

理由はわかった。

第一王女と第二王女だった女が受付で働いていたからだ。王が情けを見せて、ギルド長ザインに預けたのだ。

我儘放題、世間知らずで育った女二人をいきなり世に放ったとなると、死ねと言っているようなもの。

王の最大限の情けと言っていいだろう。

教育係は例のサーシャだ。


「はい!笑顔!笑顔が足りないよ!

はい、そこ!依頼金の渡し方!

投げて渡さない!

いつまで偉いつもりなのかしら?!

気に入らないなら、辞めてもいいのよ!

そのほうがこっちも助かるんだけど!

何も難しいこと言ってないでしょ!

愛想良くしなさい!それだけなのよ!」


「何で私が、こんな下々に笑顔を出さないといけなくて!」


「嫌なら、辞めな!

でも、ここやめてどうやってお金を稼ぐの?

娼婦にでもなる?

それなら、どうぞ!ご勝手に!

アンタ達勘違いしないでよ。

アンタ達は王族でもなく、貴族でもない。

ただの平民よ。下々と見下してるつもりなんだろうけど、冒険者の方々のほうが稼ぎは多いわよ!

さあ、辞めるの?!

娼館は、この裏通りの奧にあるわよ!」


サーシャを睨みつける元王女だった女二人。


情けを無駄にする女二人。

正直、こいつらは無理じゃないか?

まず性格が悪すぎだもんな。


サーシャが俺達を見つけて声を掛けてきた。


「あっ!呟きリリィさんとフミヤ様!

いらっしゃいませ!

どうされましたか?」


(いや、俺も冒険者登録をしておこうかと思ってな。)


「なるほどですね!

実は、ギルド長ザインから、言われていたんです!フミヤ様が登録に来られるかもと。

来られたら、ギルド長室まで来ていただくようにと言われてました!

どうぞ!中へ!」


すると、元王女だった二人がリリィに絡みだす。


「貴方!覚えていますわよ!

凄い魔法で、我らの援軍を倒した女でしょ!

お前があんな魔法を放ったから、私達がこんな目にあっているのよ!

許さないから!」


なんと理不尽な絡み方。


「あらぁ。私があの魔法を撃った者だと認識しているのね。

だとしたら、貴方達馬鹿丸出しだけど。

私に絡んで、殺されたいのかしら。

なんなら、今ここで私の魔法で消し炭にしてあげるけど。

" どうする?" 」


一気に青ざめる元王女の二人。


こいつら本当に馬鹿だ。


すると、サーシャが元王女の二人の女の頭を叩く。


「呟きリリィさん!ごめんなさいね。

まだまだ教育中なの。

なので勘弁してね。」


「サーシャさんも大変ですね!

では、フミヤ様ギルド長のところへ行きましょう!」


俺とリリィは、受付の奧へと歩を進めギルド長室の扉をノックする。


(フミヤだが!冒険者登録に来たんだけどギルド長室に行けと言われた!)


すると、ドタバタと音がして扉が開けられる。


「フミヤ様!リリィ殿お待ちしてました!

どうぞどうぞ!」


ソファに座る俺達。


「フミヤ様!冒険者登録ですね!

実は、お二人にお話がございます!

リリィ殿は今Eランクですよね。

私は今回この目でリリィ殿の魔法とフミヤ様の実力をしっかり見定めました!

お二人を Aランクに特別に昇格したいと思います!

王族の護衛任務もこなされました。

そして、クーデターの制圧で大活躍!

実績は、問題ありません!

これをお伝えしたかったのです!」


(リリィは、わかるけど、俺今日登録するのにいきなり Aランクって良いのかよ?)


「はい!恐らくそれ以上の実力をお持ちだと認識をしているのです!

ガーランド王国を救った救世主として、最低でも Aランクにしないとギルドとしての体裁が保てません!

よろしいですね!

今日から Aランクです!」


半ば強引に俺とリリィは Aランクになってしまった。


(受付に元王女の二人がいたが、元王子はどうしたんだ?)


「元王子は、王が一般兵として情けを見せました。

今、兵舎に入って地獄を見ているのではないでしょうか?!」


(ふ〜ん。まあなんか王子、影薄かったからあんまり印象らしい印象はないんだけどな!やっていけそうなのか?)


「そこの元王女もそうですが、やらんことには金もない、住む家もないですからね!

今まで我儘放題でしたが、世の中の厳しさを知れば良いのですよ!

あっ!そんなことより、セシル姫の方が心配です!」


「セシル姫?姫がどうかしましたか?

朝も、朝食をご一緒しましたが、いつもの優しい笑顔でしたよ。ねえ!フミヤ様!」


「お二人はお聞きになっていないのですか!

セシル姫は、目も見えるようになって冒険者として世界を見て周りたいと王とライデル元帥に言ったそうですぞ!

まだ、王と元帥が反対しているようですがね。」


(へえ!姫がねぇ。

俺達は何も聞いてないな!)


「王族が冒険者……なかなか難しいのではないでしょうか?!

危険も伴いますし。」


「はい!だから王と元帥は頭を悩まされているようです。

しかし、今まで我慢をしてきた姫が、言ったことですから頭ごなしに否定することも出来ず。」


(ふ〜ん。姫が世界を見て周りたい何か理由があるんじゃないのか?

あの姫が周りを困らすようなことを簡単に言うのは不自然だよ。)


「私もそう思いますわ。」


「まあ、私から聞いたというのは伏せて置いてください。

……それで、フミヤ様とリリィ殿は今後の予定はどんな感じなのです?」


「フミヤ様次第です!私は、フミヤの行かれるところに付いていくだけですから。」


(……取り敢えず数日はまだ此処にいるよ。

その後は、そうだな〜北のドワーフの国ドラスかな。まだハッキリとは決めてない。

急ぐ旅でもないからな。)


「そうですか!ドラスに行くなら、エルフの里に立ち寄るのも良いかも知れませんよ。

あっそうそう小人族の集落も近くにありますね。

しかし、気をつける必要もありますけど。

中々強い魔物が出るといいますから。」


「なら!寄らないとダメですね!フミヤ様!

スキルを奪う為に!」


(そうだな!

スキルゲットが旅の本筋だからな!)


そんな話を長々とギルド長ザインとするのだった。

流石はギルド本部の長だけあって、どの辺りにどのような魔物が出るなど、とても詳しく、とても意味ある雑談となったのだった。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


応援ありがとうございます!


よろしければフォロー、コメントお願いします!

☆♡をポチッとして頂ければ作者のやる気に繋がります!

宜しくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る