第16話 交渉
俺とリリィは城の宝物庫へと飛んだ。
(凄えなぁ。本当に宝の山じゃないか。
金貨に白金貨。これは宝石か?!
この剣はなんか凄そうだな。
この弓もなんか凄いぞ。
素材はミスリルか?
弓の両端の羽は何を意味してんだろうな。)
「フミヤ様!そんなこと言ってないで急いで詰めますわよ。」
俺とリリィは、両手を大量な宝に向けて翳し、"収納"と言ってアイテムボックスの中に入れていく。
そして俺は不意に手を止める。
人の頭くらいの大きな石、鉱石が目に入ったからだ。
(リリィ!この鉱石、なんの鉱石かわかるか?)
「えっ?これですか?
あっ。これオリハルコンですわ。
昔、図鑑で見ました。
間違いないですわ。
凄い!伝説の鉱石ですわ!」
(オリハルコン……。
リリィ!オリハルコンって1番硬い鉱石だよな。)
「はい。そう言われてますね。
それがどうかしましたか?」
(えっ?いや、俺の求める物がこんな所にあったなぁって。
これで、人形を作ったら最強だろうなと思ってさ。
要は、人形って人で言う骨の部分じゃん。
骨がオリハルコン。最強でしょ!
剣で斬ろうとしても斬れないんだぜ。)
「確かに!逆に剣が砕けますわ!
………フミヤ様!全てが終わったら、王に交渉ですわ!
フミヤ様の働き!嫌だと言わせませんわ!」
(伝説の鉱石をくれるかな?
まあ、交渉するのはタダだから交渉してみようか。全てが終わったら。
じゃあ、取り敢えず急ぐか!)
あっという間に、宝物庫をカラにする俺とリリィ。
なんか、泥棒になった気分。
まあ、オリハルコンもちゃんと王に渡すからね。
(じゃあ、次行こうか。)
俺とリリィは、武器庫に空間転移するのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
事が済んだ侯爵が部屋から出てきた。
「王の首は?
もう仕留めたんだろう?」
「そっそれが、仕留めようとした時男が突然床から現れ、王を連れて逃げてしまいました。
すぐにご報告に来たのですが……」
「なっなんだと!
……………フフフッ。
まあ良い。城は落とした。
城の宝、そして武器は私の物だ。
王が逃げた所でライデルが居ない今、なんの脅威でもない。
すぐに、民に向けてガーランド王国が滅びたこと。そして、私が新たな王だという声明を出すのだ。
新たな国の名は、スナイデル、スナイデル王国!
王妃は、そのまま王妃。
第一王子、第一王女、第二王女は元々私の子だということを民に周知させるのだ!
そして、税収を二割増しだ!
民は、王の為に働くのは世の常だ!
逃げた愚王のように、安い税では強い国は作れぬからな!」
「………はっ!王の御心のままに。」
「フフフッ。わかっておるではないか!
お前は、重臣に取り立ててやろう!
色々決めることがある。
宰相は捕らえているな。
すぐに呼べ!
王がお呼びだとな。」
「はっ!承知いたしました!」
兵士が、動く。
スナイデルは、部屋に戻りベッドの上で微睡んでいる王妃の胸を揉みながら言う。
「あの愚王は、逃げたようだ。
しかし、この国の全てが此処にある。
私の勝ちだ。
さあ、私の国を王家の楽園を作ろうではないか!フフフッ!ハハハハッ……!」
何も知らずに高笑いするスナイデル。
すでに、宝物庫と武器庫は空っぽになっているのも知らずに。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
すぐに、王都中に声明が流される。
王都の民達は侯爵が城に攻め入ったことを見ている。
なのでこの声明が嘘ではないことを知っていた。
しかし、その内容に不満を露わにする。
" 税収二割増し!ふっふざけるな!
俺達を餓死させるつもりか!"
" やっぱりアバズレ王妃の子3人は、ガーランド王の子では無かったんだわ。
そりゃそうよ!ガーランド王が" エリシア様 "を愛して愛していたのは、我ら国民が1番わかってるもの!
セシル姫は?セシル姫はどうされたのかしら!"
" 俺は、"エリシア様"が愛したこの国だから此処に留まっていたんだ!
あんな、性獣とアバズレ王妃の国で骨を埋める気はないぜ!"
" ライデル元帥様は、どうされたんだ!
こんなこと!ライデル元帥様が許さないだろう!"
不満が爆発していた。
そこに、民として服装を変えた近衛騎士達が声を掛けてまわる。
「迷いの森の、屋敷を知っているな。
そこに、王もセシル姫もライデル元帥も居る。
一時、国を憎きスナイデルとアバズレ王妃に明け渡したが、今取り戻す為着々と準備を行っている。
今、王とライデル元帥は、私兵を募っている。
このままだと、貴殿ら民は困窮し、搾り取られるだけ搾りとられて見捨てられるぞ!
我らとともに国を取り戻すのだ!
これを、奴らに気づかれず王都中に広めてくれ。民は、国とともにある!
国の道具ではない!それを、奴らに!
わからせてやるんだ!」
それを聞いた民達は、力強く頷き言う。
" 任せろ!王都中の男を集めてやるぜ!"
" 何言ってんだい!女だって戦うよ!
ガーランド王には、長いこと愛情を頂いたんだ!ここで、戦わないと亡きエリシア様に申し訳が立たないよ!
何よりエリシア様とソックリにお育ちになったセシル姫を私達がお守りしないと!
エリシア様を守ることが出来なかった私達だよ!今、戦わないなら生きている価値などないよ!"
近衛騎士はガーランド王国、民達のガーランド王とエリシア王妃、そしてセシル姫に対しての厚い信頼と信仰にも似た愛に改めて気付かされたのだった。
そして迷いの森の屋敷では、戻ったフミヤとリリィが、王とセシル姫、ライデル元帥の前にアイテムボックスから運んできた宝と武器を出していた。
「おお!本当に、一度で全てを運ぶとは………
流石精霊殿と聖女リリィ殿だ。」
「……王様、聖女はやめてください。
ただの冒険者として生きていくと言っているではありませんか。」
(リリィは、やっぱり聖女なのか?
聖職者とは聞いていたけど……
もしかして、死んだ母親って……大聖女だったり?
大聖女も死んだって王が言ってたし…。
何より勇者パーティの聖女が修得したくても出来ない"大聖女の癒し"を使ったし…)
「ほら!王様のせいで、フミヤ様にも誤解を与えているじゃないですか!
フミヤ様は、そんなこと気になされなくても良いのですよ!
あっ!そうだ!フミヤ様!今、例の交渉をしたらどうですか?!
国を取り戻した時の成功報酬として!」
(誤解?なのか?
まあ、俺はリリィが聖女でも大聖女の娘でも別に構わないんだけど。
リリィがそれを捨てたいというなら、それでもいい。
……あっ。そうだな。
王よ。少し話がある。いいか?)
「おお。交渉とは、なんであろうか?。」
(俺とリリィに対する指名依頼は、悪魔からセシル姫を守るだったよな。
悪魔を討伐した今、この依頼は達成したと言える。
王を転移で救出したり、宝や武器を城から運び出したりしているのは、サービスみたいなもんだ。
この後、国を取り戻す為に俺達は、本来ならば手を貸さなくても良いっていうのが、ドライな感覚で言えばそうなるだろう?
もし、俺達の力を求めるなら新たに依頼を出して欲しい。それが冒険者というものだ。)
「確かに、精霊殿の言う通りじゃな。
其方達に、国を取り戻す為に戦う義理はないの。
依頼すれば力を貸してくれるのじゃな。
間違いなく、其方達の力がなければ国を取り戻すことも叶わんじゃろ。
新たに指名依頼したい。
国を取り戻す為に、手を貸してもらいたい!
依頼金は、(そこにある、オリハルコンの鉱石でどうだ?俺は、そのオリハルコンの鉱石が欲しい!)
「精霊殿は、オリハルコンの鉱石がお望みか。
構わん。お渡ししよう。
そうじゃ!これも、一緒に。」
王は、オリハルコンの前に2本の剣を置いた。
「これは、王都より北に行ったところにあるドワーフの国ドラスで伝説と呼ばれている鍛治師が作った2本の剣。
ガーランド王国との友好を誓って譲られたものじゃ。
お互いがお互いを引き合い力を引き出すと言われている聖魔剣じゃ。
こちらが、聖剣ホワイトローズ。
聖属性魔法が使える者しか鞘から抜けぬ代物じゃ。
リリィ殿のためにある剣とも言えるじゃろ。
そして、こっちが魔剣ブラックローズ。
闇属性魔法が使える者しか鞘から抜けぬ代物じゃ。
精霊殿が抜けるならば使って欲しい。
俺は、魔剣ブラックローズを手に取る。
そして、鞘から引き抜く。
真っ黒な刀身。剣というか形状は刀のようだ。片刃の剣だ。
引き込まれるような黒の輝きを見せるブラックローズ。
かなりの名剣であることがわかる。
リリィも聖剣ホワイトローズを鞘から引き抜いていた。
キラキラと赤や黄色、青のような虹を思わすような輝きを見せる剣。
こちらは、両刃の形状はロングソードだ。
「フミヤ様。いつ闇属性魔法を?
悪魔から奪ったのですか?」
(ああ。そうだよ。とても良い剣だ。
リリィの聖剣ホワイトローズもとても良いんじゃないか。)
「お互いがお互いを引き合い力を引き出す。
ふふふっ。気に入りましたわ。
私とフミヤ様みたいですもの。
夫婦剣ですわね。」
(うぐぐぐぐ。リリィ。よく照れずに言えるな。)
俺は、赤くなる。
「オリハルコンとこの2本が依頼金じゃ。
いっとくが、その2本の剣も国宝じゃぞ。
その2本の剣の素材はアダマンタイトじゃ。
その辺の剣ならば簡単に叩き斬るじゃろうて。」
(国宝なのに、良いのか?
オリハルコンだけでも国宝なんだろう?
一度貰ったら、返せと言われても返さないぞ。)
「構わんぞ。
其方達二人には、これくらいさせて貰いたい。
国を取り戻す為に働いてもらうぞ!」
王は、俺とリリィの手を取りそう言うのだった。
この親父、最初からリリィを自ら出迎えたり、王なのにやたら腰が低いんだよな。
民に愛される訳だ。
「お父様〜。私は、あの銀翼の弓を使わせて頂きますわ〜。」
「なっなんと。セシルよ。
其方も戦うというのか……!」
「はい。国を取り戻す為〜民も私兵として〜集うと聞きました。
私も〜一緒に戦わないと〜。民の皆さんに合わせる顔がありませんわ〜。
それに〜前と違って目も見えますわ〜。
射撃のスキルと魔眼のスキル、火属性魔法のスキルを今使わないで〜いつ使うのですか?!」
「良く言った!姫!
それでこそ、姉さんの娘だ。
王よ!姫は、私が守る!
大丈夫だ!」
ライデル元帥が姫の頭を撫でながら言う。
(まあ、いいんじゃないか。弓は後方支援だし。俺が1番前に元帥の代わりに出てやるよ!
元帥の剣術スキルも貰ったしな。)
「……精霊殿!
いつ私のスキルを!
では、"王剣"も"斬撃"も使えるのか!」
(ああ!" 魔法剣"もな。あっそうそう!"疾駆"もだな。)
「"魔法剣"まで!私は魔法が使えんから、意味のないスキルだったというのに。」
リリィが言う。
「フミヤ様が1番前で戦うのならば、私はフミヤ様のすぐ後ろで戦いますわ。
私の聖属性魔法が必要となる時もあるでしょうから。」
(まあ、俺から離れられているほうが心配だな。
良いだろう!しっかり付いてこいよ!リリィ!)
「やったぁ。わかりましたわ。フミヤ様!」
元帥が紙に隊列を書き出した。
「精霊殿とリリィ殿が前衛の切り込み役として、前列は近衛騎士とエルフの里の戦士、そして、王派貴族の私兵団に任せる。
その後ろに民達の私兵。
そして、後衛に貴族と私と王とセシル姫。
数が少なくても、精霊殿とリリィ殿、近衛騎士、エルフの里の戦士。
前衛が、かなり重厚な戦力!
侯爵側兵士など恐るるに足らん!」
(へぇ。エルフの里の戦士まで駆けつけてくれるのか!
元帥、やるじゃねえか!
よく、エルフの里が出してくれたな!)
ガーランド王が口を挟む。
「精霊殿!何を言ってる。
ライデルは、エルフの里の族長じゃぞ。
知らんかったのか?」
(マジで!知らん知らん!
そりゃ、侯爵もアバズレ王妃も元帥を警戒するわな!)
「ハハハハッ!精霊殿!元は、姉エリシアが族長だったんだ。
姫が持った銀翼の弓は、元々姉エリシアが使っていたもの。
姉は、エルフ一の弓士だったんだ。
魔眼と射撃でどんな遠い的でも射抜く弓士だった。」
(おいおい!それなら、セシルの目が魔眼だとわかっただろうに!
魔眼のスキルを切っていれば、目も悪くならずにアバズレ王妃達にも馬鹿にされなくてすんだだろうに!何してんだよ!)
「「………確かに……」」
ライデル元帥と王は二人して肩を落とす。
この二人愛すべきポンコツだな。
リリィと俺は顔を見合わせて笑ったのだった。
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