第15話 クーデター
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性的表現があります。
苦手な方は、そこを避けて読んでください。
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ライデル元帥は、迷いの森を駆け抜ける。
回り道をせず、木の枝から木の枝へ凄いスピードで飛び移り進んでいく。
エルフの血がなせる行動なのか。
森を難なく進んでいく。
そして、あっという間に屋敷にたどり着いた。
ライデル元帥は、扉を開ける。
その時俺とリリィ、セシル姫は食事が出来たということで、二階から一階に共に降りようとしていたところだった。
「姫!今、助けるぞ!
この悪魔め!」
「おっ叔父様!まっ待って!」
(うん?なんだ、なんだ?)
「フミヤ様。あれ、ライデル元帥かも。」
ライデル元帥は、階段を駆け上がってくる。
そして、剣を振りかぶる。
俺は、しょうがなくライデル元帥に憑依を念じる。
ライデル元帥の体内の魔石に収まる俺。
俺の体だった木の人形が階段をすべり落ちていく。
リリィが必死にその人形を追いながら言う。
「あ〜あ。大事な体なのに!」
(リリィ。すぐにそれに戻るから、服をもう一度ちゃんと人形に着せといて!頼むよ。)
リリィは、俺の言ったとおり人形に服を着せていく。
それを見ながら俺は、ライデル元帥から流れてきたスキルを確認する。
" 王剣 " "斬撃" "疾駆" "魔法剣"
4つのスキルだ。
その内、三つが剣術に関するもの。
騎士を纏める人なだけはあるな。
王剣ってなんか凄そうだな。
そう思いながら座り、リリィが人形に服を着せたのを確認して、木の人形に憑依を念じる。
そして、受肉する。
俺が抜けたライデル元帥は、痙攣している。
(取り敢えず、セシル姫。
ライデル元帥の意識が戻ったら、ちゃんと説明してくれ。又、斬りかかられたら堪らんからな。)
「はい〜わかりました〜。
ご迷惑をおかけしてすみません。フミヤ様。
リリィさん。」
その後、すぐにライデル元帥は意識を取り戻した。
セシル姫から、説明されライデル元帥は自分の早とちりだったことを理解し、俺とリリィに詫びを入れたのだった。
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情勢が動きだした。
王妃から連絡を受けたスナイデル侯爵は、出兵し、今王都の前で陣を組んでいた。
「侯爵様!報告いたします。
ライデル元帥は、王妃様の連絡通り迷いの森の悪魔の住まう屋敷へとセシル姫を救いに行ったようです。
いくら、ライデル元帥であろうともサタン級悪魔が相手。
もう命はないと思われます。」
スナイデル侯爵は、悪い笑みを浮かべ言う。
「あいわかった。フフフッ。
やっとこの時がやってきたのだな。
王の首を取る時が!
そして、この国は私の物となるのだ。
"皆の者!よく聞け!
私、スナイデルは今日、ガーランド王の首を取る!
そして、新しい王として君臨する!
逆らう者は斬り捨てよ。
ガーランドの歴史を閉じるのだ!
武勲をあげろ!
そして、新しい歴史に名を刻むのだ! "」
「「「「「「うぉ〜〜〜!」」」」」
「突撃〜〜〜!」
スナイデル侯爵によるクーデターが勃発したのであった。
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(おっ!美味いな!姫専属の近衛騎士のお姉さん料理上手だな!
この肉も良いけど、スープが最高に美味い!
味覚も戻って最高だ!
食べれるしな。)
「ふふふっ。良かったですね!フミヤ様!
今度、食べ歩きしましょうね!」
(おお!食べ歩きか!悪くないな!
それは、そうとライデル元帥。
あんた、いくら姪が心配だったからといって、城を飛び出してくるなんて少し浅はか過ぎると思わないか。
こんな絶好のタイミング、あのアバズレ王妃が逃すはずがない。アンタ、スナイデル侯爵とアバズレ王妃の抑止力という存在だったんだろ?
情勢が動くぞ。)
ライデル元帥は、ハッとして、立ち上がり部屋を出て行こうとする。
(待て待て!どこ行くんだよ!)
「何処って決まっている!城に戻らねば!
王が、王を守らねば!」
(アンタは、本当に猪突猛進だな!
今更、遅いわ!
アンタが城を出ていった時点で、アバズレ王妃がスナイデル侯爵に連絡している!
もう、動き出したんだよ!)
「では!どうしろと!
王を守らねばならんのだ!
そうせねば死んだ姉に顔向けできん!」
すると、扉が激しく開けられる。
先程、帰った近衛騎士達だった。
「たっ大変です!
あっ!元帥殿!なんでここに!
……取り敢えず大変です!
スナイデル侯爵が王都に攻め入りました!
くっ"クーデター"です!」
ここに残っていた近衛騎士の代表が言う。
「なっなんだと!何故!お前達此処に戻ってきた!王をお守りするのが、我らの仕事!
何しているんだ!」
「ヨシっ!今から戻るぞ!私も行く!」
元帥が言う。
(待て待てったら!
20人そこらで行っても何も出来んだろが。
王さえ、守れば良いんだろう?)
「フミヤ様。何か案が?」
リリィが俺を見て言う。
(俺は、悪魔のスキルを奪ったんだ。
空間転移が使える。
俺が今から空間転移で王の元に飛んで、王を連れて空間転移でここに戻ってくる。
それでいいだろ?元帥!
取り敢えず一時、王城は侯爵に乗っ取られるだろうが、王さえ無事ならなんとかなる!
元帥は、近衛騎士を使って王派の貴族を!貴族の兵をここに集めろ!
王城、王都を取り戻すのはそれからだ。)
「うっぐぐ。わかった。頼めるか!」
(ああ。今から行ってくる。リリィ、心配するな。すぐだ。セシル姫も大丈夫だからな!)
「「フミヤ様!お気をつけて!」」
俺は、王の元へと頭に浮かべながら空間転移を念じるのだった。
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王城は、大混乱していた。
スナイデル侯爵の兵達が城に雪崩れ込み、
逆らう者達を斬りふせていっていた。
「王を探せ!探して首を取れ!
首を取った者には褒賞を出す!」
「スナイデル様!王は、自室にいますわ。」
「おお!王妃か!
皆聞いたか!王は自室に居る!
首を取れ!」
王妃は、スナイデル侯爵の首に手を回し、甘えるように言う。
「スナイデル様〜。私は〜良い働きでしたでしょう。
あのライデルを悪魔に討たせましたわ。」
「フフフッ。良くやった。流石は、私の女だ。王子を立てようと思っていたが、こうなれば私が自ら王になるぞ!
お前は、そのまま王妃のままだ。
今日は、良き日だ。
後で王の自室で、お前を可愛がってやろう!」
「ああ〜。スナイデル様〜。
私は、待てませんわ〜。」
王妃は、そう言うと吸い付くようにスナイデル侯爵の唇を貪る。
スナイデル侯爵も、王妃の唇を貪りながら、右手で王妃の胸を服から剥き出し、揉みしだく。左手は、尻を撫で回していたのだった。
その頃、王は自室で剣を持ち今にも襲いかかってくるであろう侯爵の兵士達を待ち構えていた。
「……エリシアよ。
全ては、あの女を王家に入れたのが間違いじゃったな。
お前が、子がなかなか出来ず後ろめたい思いをしていたのを私が解消してやることが出来なかったのが悪いのじゃ。
だから、私が全て悪いのじゃ。
もうすぐエリシア、お前の元に行くからの。
セシルは、大丈夫じゃ。エルフの里でライデルに守られるじゃろ。
すまぬな。私が守ってやることが出来ずに。」
すると、廊下をドタドタと騒がしく走る音が聞こえてきた。
そして、扉が蹴り破られる。
兵士が剣を振り上げる。
王は、覚悟した。
その時床が光り、一人の男が現れた。
剣を振り上げていた兵士は、一瞬躊躇した。
(ギリギリじゃねえか。
王よ。行くぞ。)
フミヤは、王を左手に抱え、屋敷を思い浮かべ空間転移を念じる。
姿を消したフミヤと王。
兵士は、剣を振り上げたまま、唖然とするのだった。
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リリィとセシル姫の近くの床が突然光り出す。
そして、フミヤと王が現れた。
「おっお父様〜!」
セシル姫が王に抱きつく。
(リリィ!ギリギリセーフだったよ。
もう少し遅れていたら、王の首飛んでた。)
「もう!フミヤ様は!そんなこと軽く言って!
ダメですよ!」
元帥が俺の所に来て、膝をつく。
「……ありがとう!助かった!」
(そんなのいいよ。
それより、人は集まりそうか?
王派の貴族は少なくても、冒険者ギルドや王都に居る民は、王派だろ?この際なんでもいい。人を集めろ。)
「…民か。民を集めても……民に武器や防具がない。
それに、生死がかかることだ。
なかなか難しいだろ。」
(何言ってんだよ。国のことだぞ!
こんな時こそ、民は動くんだよ!
自分達の自由とガーランド王国の民としての誇りで。)
「………成程。
其方の言うことは間違いない。
その通りだ。馬鹿が上に立って民が幸せになるはずがない。民は、王と姉エリシアを今も愛してくれている。
わかった!民にも声を掛けるよう近衛騎士に動いてもらう。」
王とセシル姫がこっちに来る。
「精霊殿か?!
危ないところ助かった。
感謝する。」
(そんなことは、気にするな。
どうでもいい。
それよりも、王よ。
城には、武器庫はあるのか?
民に持たせる武器、防具を揃えたい。
それと、ここに城の金品を移動させる。
あんな侯爵とアバズレ王妃に好きなようにさせたくないだろう?
金品はどこにある?)
「金品は、全て宝物庫じゃ。
それから、武器庫にも沢山武器と防具がある。」
(よし、じゃあ今から行って全てここに持ってくる。)
「精霊殿。並大抵の量ではないぞ。
どうするのじゃ。」
(大丈夫だ。アイテムボックスのスキルがある。全て運べる!)
「フミヤ様!なら、私も連れて行ってください。私のアイテムボックスも使えば、時間短縮にもなりますよ。」
(リリィは、危険だから連れて行きたくなかったけど……確かに時間短縮にはなるな。
じゃあ、一緒に行くか。)
「はい!ヤッタァ!」
俺はリリィを左手で抱きしめて、城の宝物庫をイメージして、空間転移を念じるのだった。
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城の一室。
王妃とスナイデル侯爵がベッドの上で絡み合っていた。
「あんあんああぁぁ。スっスナイデル様〜。
はっ激しいですわぁ。あんぁああ。」
「フン!フン!フン!フン!……」
部屋の外では、護衛の兵士が苦虫を潰した表情で立っていた。
そこに、数人の兵士がやってくる。
「こっ侯爵様は!どこに行かれた!」
護衛の兵士は、部屋を指差して言う。
「………今、お楽しみ中だ。
理解しろ。報告は後だ。」
「マジかよ。少し困ったことになったんだ。
王が消えたんだ!」
「王が消えただと?
そんなはずあるまい。自室に居ると王妃が言っていたんだ。間違いないはずだ。」
「ああ!自室に居た!仕留めようとした所で、男が突然現れて……男とともに消えたんだ。本当だ!皆んな見ている!」
「……………そんなことがあるのか?!
…………しかし、今は……報告できん。
相手がその辺の娼婦ならともかく、王妃だぞ!いっ今は待たれよ。」
呆れたように立ち尽くす兵士達。
しかし、護衛の兵士が言う通り、侯爵と王妃の性交中に立ち入るわけにいかず頭を抱えるのだった。
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