第14話 シンボル
俺は、キッチンで固まっていた。
さあ、料理だぁ!と意気込んでキッチンに来た訳だが、よくよく考えると俺料理なんてしたことない。
生まれてから、ずっと病気で病院住まい。
病院食しか食べたことないし。
それでも、肉くらいは焼けるだろうと意を決して包丁を持ちオークキングの肉の塊に、包丁を入れる。
あっ油で滑る滑る。
思わず手が滑って、包丁が手にグサっ!
"いっ痛ぁ!痛い?痛いよな!
うん。めっちゃくちゃ痛い!
痛覚あるじゃん!
そして、手から流れる血。
血も流れるんかい!
これ、大怪我だよ。
………本当ならばね。
俺は直ぐにヒールを唱える。
血が止まり、包丁で刺した箇所の傷が塞がっていく。
ヒールって凄いなぁ〜と感心しながら、俺は諦めた。
料理、ひとりでは無理!
虚しく片付ける俺。
しかし、痛覚も復活しているとは……ということは、視覚聴覚は当然として味覚も復活と考えて良いだろう。
尚更、なんか食べてみたいものだ。
そう思いながらリリィ達の到着を待つのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リリィとセシル姫は、迷いの森に入った。
二人だけでは無かった。
王が、近衛騎士を20人ほど付けたのだ。
この近衛騎士達は、ライデル元帥を慕っている面々なので、言わばセシル姫の味方なのだ。
迷いの森、森というだけあって魔物が出る。
それも奧に行くにつれ、出てくる数も多い。
もし、リリィとセシル姫だけならば中々こうも簡単に迷いの森を歩くことは出来なかっただろう。
鍛えられた近衛騎士が、魔物を屠っていく。
リリィとセシル姫の周りは近衛騎士で完璧に防御されている。
「姫!お足元滑りやすくなっています。
お気をつけて!」
「姫!段差になっております!
お手を!」
「姫!「ふふふっ。皆〜ありがとう〜。
でも、そんなに気を使ってもらわなくても〜
大丈夫ですわ〜。
前みたいに、目が不自由なわけではありませんもの。
魔物を狩って頂けるのは、有り難いですが、
この森くらいは、手を借りなくても〜歩けますから〜。」
リリィが口を開く。
「ふふふっ。近衛騎士の皆さんに、セシル姫は愛されていますわね。
セシル姫の人柄の良さゆえのことですわね。」
「いえ、そうでしょうか〜?
全ては、お父様と元帥の叔父様のご威光があってのことですわ〜。」
「ふふふっ。すぐに、そうお答えできるのがセシル姫の人柄の良さですわ。
さあ、セシル姫。屋敷が見えて来ましたわ。
後少しです!頑張りましょう!」
「……フミヤ様は、大丈夫でしょうか?
悪魔を操ることは出来たのでしょうか?」
「セシル姫、大丈夫ですわ。
フミヤ様は、必ず悪魔を操っていますわ。
無理だったら、私の所に戻ってきているはずですもの。
だから、安心して大丈夫ですよ!セシル姫!
安全は、確保されてますわ!」
「そうですね〜。
フミヤ様が、悪魔に遅れを取るなんてこと〜ありませんよね〜。」
などと話している間に屋敷の敷地に入った。
近衛騎士達は警戒を強める。
ここで、リリィが言う。
「セシル姫は、取り敢えずここで近衛騎士とともにお待ちください。
私が、中に入ってフミヤ様を呼んできますわ。」
「でっでは、何人か近衛騎士を〜連れて行ってください〜万が一……」
「大丈夫ですわ。セシル姫。
もし、悪魔をフミヤ様が操れていなかったら、どの道私達は命はありませんから。
一人で行ってきます!」
リリィは、そう言って屋敷に駆け出す。
リリィは、扉を開けて中に入る。
そして、口を開く。
「フミヤ様〜!何処にいらっしゃるのですかぁ〜!」
(おお!リリィ着いたのか!2階だよ!)
「二階ですか?!じゃあ、降りて来てくださいよ!」
(そうだけど…ちょっと照れがあってさ。
まあいいか。今から降りるよ!)
俺は、階段を降りる。
「えっええ!ふっフミヤ様!
フミヤ様のお姿ですよね!
えっ!実体化されたのですか?!
うわぁ〜!最高です!最高ですよ!
えっ?!でも悪魔は?」
(悪魔も俺と一緒で、魔石を媒体とする者だったんだ。
この体、木の人形なんだ。ほら魔石が額にあるだろう?!
悪魔から奪ったスキル"受肉"で肉付けしたんだ。あっ。悪魔は死んだよ。
魔石に入り込んだら、居たから邪魔だったしスキル"呪殺"で殺しちゃった。)
「悪魔、死んだんですか?
殺しちゃったの?!呆気な!
呆気な!呆気なさすぎる。
流石フミヤ様です!
きゃあ、待望の実体化だし!
ちょっと、抱きついちゃお!」
リリィが抱きついてくる。
俺も抱きしめてやる。
リリィの柔らかい感触がとても心地いい。
(でも、木の人形じゃあダメなんだ。
この世界、剣があるじゃん。
木なんか剣で切れるだろ?!
この世界、人の命が余りにも軽いから、俺自身が無敵にならないと!
リリィを守らないとダメだからな。
だから、木じゃだめなんだ。)
リリィが、俺のほっぺをムニュムニュしながら言う。
「でも!ちゃんとした素材が手に入るまでは、これで良いじゃないですか!
私もフミヤ様を肉感的に感じていたいですわ。」
(この額の魔石がある以上、周りの目がなぁ。)
「フミヤ様。こうしたら、何も見えなくなるのですか?」
リリィはそう言って額の魔石を手で覆う。
(いや。受肉したから、目も出来てるだろ。
だから、目で見てるんだ。
ていうか、この体は全て俺なんだよ。
刃物で傷つけると普通に痛いし。
それこそ、………やめておこう。)
「うん?なんですかぁ?隠しごとですか!?
言って下さい!」
下から上目使いで、リリィは聞いてくる。
可愛いすぎるだろ!
(そっそれこそだな。あのなんだ、男のシンボル的な物もだな。ちゃんとあるんだよ。)
「シンボル?なんですか?それ。」
これは、何かのプレイなんですかね???
俺は、ハッキリ言うことにした。
(あるんだよ!お◯ん◯んが!)
リリィは、その瞬間真っ赤になる。
そして、慌てて言う。
「そっ、そうなのですね!
でっでは、私との子も授かることも出来るということですね!」
(あのう。リリィさんや。
子を授かるには、S◯Xをするということだよ。わかってるの?)
「フミヤ様!私を子供扱いですか!?
私は、18歳ですよ!成人して三年たっているのですよ!
それくらいの知識!わかってますわ。
フミヤ様は、私じゃ不服なんだ……。」
(……いやいや。不服なんてないよ。
リリィは、凄く綺麗だし!魅力的だし!
でも、こういうのは愛を育んでだな、然るべきタイミングでいたすべきなわけで。)
「愛を育んでいるじゃないですか!
私、フミヤ様のこと愛してますよ!
離れませんよ!一生!
フミヤ様も守ってくれるって言ったじゃないですか!」
依存だ。依存してるわ。
俺はそう思いながら、リリィの額にキスをして言う。
(はい!この話は、今日はここまで!
何もかも焦る必要ないんだ。
ずっと一緒にいるんだから。)
「ふふふっ。じゃあ、今日はここまでで許してあげます。
外で、姫も待ってますしね。
あっそうそう!さっきしようとしてたことですけど、その額の魔石を隠しても見えるのならば、タオルか何かで覆えば良いですよ!」
そう言ってリリィはアイテムボックスからタオルを出して、俺の額の魔石を覆って後ろでくくった。
(なんか気合い入っているヤツみたいじゃないか?)
「ふふふっ。タオルだからそう思われるのかしら?
また今度布を買いに行きましょう!
冒険者もたまにしてる人いるでしょう!
あんな感じにすれば違和感ないですよ!
さあ、姫の所に行きましょう!
遅いから心配してますわ。」
リリィは、俺の手を取り引っ張っていくのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
リリィに連れられ外に行く。
近衛騎士が一斉に剣を抜く。
「近衛騎士の皆さん!大丈夫です!
悪魔は、もうフミヤ様が倒されました。
こちらが、悪魔のスキルを奪って実体化なさったフミヤ様です。」
(へぇ。20人の近衛騎士がセシル姫の護衛で一緒に来たんだな。
セシル姫、愛されているじゃないか!)
セシル姫が前に出て言う。
「その声は〜確かにフミヤ様ですわ〜。
近衛騎士の皆さん〜大丈夫です。
確かにフミヤ様です。
昨日お聞きした声そのものですから〜私が証明いたしますわ〜。
剣を納めてくださいませ。」
セシル姫の一声で、近衛騎士が剣を鞘に収める。
(近衛騎士の皆さんは、帰るんだろ?
王に言っておいて欲しい。
もう心配いらない。悪魔は、倒した。
ヤツも元々実体がない奴だから、証明するものはないんだけどな。)
近衛騎士の代表なのか?一人が前に出て口を開く。
「貴方を信じていない訳ではないが、姫はガーランド王国の宝だ。
できたら、数人近衛騎士を置いて行きたい。
そうしないと、ライデル元帥に顔向けできんのだ。」
(うん。そうだよね。かまわんよ。
あっ!できたら、料理とか得意な人居ないかな?
姫も食事を取るだろ?
姫の身の回りのことをしてくれる人も必要かな。)
すると、女性の近衛騎士二人が名乗りをあげる。
そして、先程の代表らしき男性騎士。
この三人がここに残るということになった。
セシル姫が帰る近衛騎士に言う。
「今〜情勢が、お父様の置かれてる立場が危ないと聞いています〜。
どうか、父を守って下さい。
よろしくお願いいたします。」
そう言って近衛騎士に対して頭を下げるセシル姫。
近衛騎士は、膝をつきそれに応える。
そして、近衛騎士三人を残して駆け足で帰って行ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは、王城である。
ライデル元帥は、何も知らずに城に戻ってきた。
一刻も早く姪であるセシル姫の元に顔を出さねばと思っていた。
セシル姫の部屋へと急ぐライデル元帥。
そこに、王妃が通りかかる。
「あら、ライデル元帥。帰ったのね。
一足遅かったわ。
セシルは、悪魔に嫁入りしたわよ。
悪魔の要求で、私達もどうしようもなかったのよ〜
悪く思わないで。ふふふっ。」
「なっなんと申したか!
悪魔に嫁入りだと!
王は何をしていたのだ!」
そう言うとライデル元帥は、踵返すように来た道を戻ろうとする。
「あら、ライデル元帥。
いかがなさるおつもりで?」
「助けに行くに決まっておろう!
セシル姫は、姉の大事な娘!
私が助けないで誰が助ける!」
そういうと駆け出す。スキルを使っているのか
風のような速さだった。
王妃が悪い笑みを浮かべ呟く。
「邪魔者が居なくなったわ。
奴も悪魔に殺される。
スナイデル様にお伝えしないと。」
情勢が動き出したのだった。
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