第13話 裸踊り

俺は、その後セシル姫から魔石ペンダントに戻った。

セシル姫が痙攣するが、すぐに痙攣は収まる。

(セシル姫。ゆっくりと目を開けてごらん。)


セシル姫が、ゆっくりと目を開ける。


セシルが目をパチクリしている。

そして、一筋の涙が頬を、伝う。


「おっお父様〜。ああ〜。見えますわ〜。

お父様のお顔がハッキリと〜。」


王が、セシルを抱き締める。


うん。とても綺麗な涙。


俺もリリィも満足だ。


(セシル姫、やはり魔眼と言うスキルだったよ。スキルと知らず常時使い続けていたから視力に影響を及ぼしたんだ。

だから、今はスキルを切ってるからね。

君には、射撃と火属性魔法がある。

弓や魔法を遠くから狙い撃つのに、魔眼は便利かもしれないね。)


「そうだったのですね〜。

ありがとうございます。

………なんか、目が見えたら死ぬのが惜しくなりましたわ〜

欲とは怖いものです〜。

…しかし、王国の為に責務は果たしますわ〜」


「セシル姫!何を言っているのですか!

今日、フミヤ様と私が来たのは目を良くする為ではありませんよ!

そうですよね!フミヤ様!」


(その通り。君を悪魔から救う為に来たんだ。そして、君をエルフの里に逃す為にだ。)


王が口を開く。


「今、精霊殿も喋られておるのか?

先程は声が聞こえたのだが、魔石ペンダントに戻られたのか?

精霊殿と打ち合わせをせねばならんのに、これでは困るのぉ。魔石を体内に持った者にしか乗り移れないとなると……」


王、ギルド長ザイン、リリィは一斉に副ギルド長アンを見る。


「えっ!ちょっ、ちょっと、まっ待って!

心の準備が!」


副ギルド長アンが後退りする。

悪いな。アン。俺は、アンに向かって憑依を念じる。


「……これで聞こえるだろ?王よ。」


「おお!精霊殿か!

ならば打ち合わせを行おう!」


俺達は打ち合わせを始めるのだった。

ちょっと可哀想な副ギルド長アンであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


(セシル姫の体を借りて、王妃と第一王女、第二王女を懲らしめてやったぞ。)


「えっ。なっ何をされたのですか〜。」


(第一王女は、セシル姫に対して悪魔とお似合いとか、ふざけたことを言っていたから、顔面をぶん殴ってやった。

第二王女は、足元にサンダーボールを撃ってやったら失禁していた。

王妃は、サンダーボールを掌にキープした状態で壁ドンしてやったら、失神したよ。)


「まあ〜。お義母様、お姉様は大丈夫でしょうか〜……」


セシル姫は、心配している様だ。


リリィが呆れて言う。

「セシル姫!セシル姫は、お優し過ぎる!

幼き頃より散々虐められてきたのでしょう!

そんな感じだから、余計につけ込まれるのですよ!

ザマァ見ろと思わないと!」


「はぁ〜。そうなのでしょうか。」


「そうじゃ。セシル。

私は、良くやってくれたと思っておるぞ!」


「お父様〜!……そっそうですね。

わかりました〜。そう思うように努力いたしますわ。」


「それで、精霊殿、リリィ殿。

明日は、どのような動きをされるのですかな。」


(俺が、先行し悪魔の所に行く。

姫とリリィと合流するのは、悪魔を操ってからのほうが良い。

悪魔がどんな能力を持っているかもわからないんだ。

悪魔がセシル姫を殺すことは無くても、リリィが殺されない保証はないからな。

俺は、リリィの安全を第一に動きたい。

先に俺が悪魔を操っていたら、リリィも姫も安心して来れるだろう?)


「ふふふっ。フミヤ様!

私の安全を第一にって。

ふふふっ。なんか照れますわぁ。」


リリィはそう言うと顔を赤くして照れる。


「おお。それは、セシルにとっても安全じゃ。

そこで合流するとして、その後はどうするのじゃ?」


(うん?そこは、屋敷なんだろう。

そこで少し滞在する。

王よ。こんなことを言ったら失礼なんだが、王妃と侯爵に玉座を狙われているんだろう。

何かしら、動きがあるような気がするんだ。

セシル姫も、このような情勢で王を置いて自分だけエルフの里に逃げるなんて出来ないだろう?)


「はい!その通りでございます〜。

お父様を置いて自分だけ〜エルフの里に逃げるなどできません。」


「せっセシル!」


(王よ。悪魔が王城に現れた時のことを教えて欲しい。どうやって現れた?)


「……床が輝いて床から現れたのじゃ。」


(……空間転移……の類いかな。

ふ〜ん。なるほどね。

よし、わかった。

じゃあ、その流れで良いな!

じゃあ、俺は魔石から外に出ないといけないんだが……)


俺(アン)、リリィはギルド長ザインを見る。


「えっ!わっ私ですか!えっ!えっ!」


(だって、しょうがないじゃん。

ギルド長しかいないんだから。王を痙攣させるわけにいかないし。)


俺はそう言うとザインに向けて憑依を念じる。体をもっていかれ、押し出される。


幽体に戻ったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


翌日、俺は先行して悪魔の元へと行く。


王都の北に広がる迷いの森と言われる森深くに悪魔が住まいとしている屋敷があるとの事だった。


人が行くには、谷や川など障害が多くぐるっと回り道をしないと行けないが、幽体の俺は障害なんて知ったこっちゃない。直線距離であっという間に屋敷にたどり着く。


なかなか立派な屋敷だ。

昔、高位の貴族が使っていた屋敷とのことだった。

意外にも荒れ果ててといった感じではなく、

ちゃんと屋敷と言える形で残っていた。


屋敷に入る。そして、2階の奧の部屋でソイツは居た。


コイツが悪魔か。

なんか普通。見た目は、二十代の男。

顔色は、少し青いが見た目は普通だな。

ただ、頭の額に魔石があること以外は。


たしかに威圧感は、あのオークキングを大きく上回る。

流石のサタン級と言ったところか。


そう思いながら憑依を念じ、悪魔の額にある魔石に入り込む。


すると、魔石内に俺以外の何かが居た。


「なっなんだお前は!これは私の体だぞ!

何処の悪魔だ!

私は、サタン級のマモン!

無礼だぞ!」


……成程、この体は作られたものか。

コイツも魔石を媒体にして動くタイプか。


そう思いながら、俺は"呪殺"を念じる。


「うっ!ぐぐぐぐぐ……きっ貴様!なっ何を何をした!くっ苦しい。」


おお!一発じゃ死なないか。

流石!サタン級!


"呪殺""呪殺""呪殺""呪殺"…………


外に逃げたら厄介だからな。

確実に仕留めないと。

俺は、呪殺を連発した。


「あっががが………が!……」


シ〜ン……。

死んだな。


すると、頭にスキルが流れ込んでくる。


"受肉" " 闇属性魔法" "空間転移"

"魔法障壁" "隠密" "記憶操作"


6つか。サタン級だからもっと持ってるかと思ったがこんなもんか。


まあいい。予想通り、"受肉"があったぞ。

なんかイメージ的に受肉を持っているのではと思っていたんだ。


実体化に一歩近づいたな。


そして、俺は部屋の鏡を見る。


ああ。そう言うことね。

鏡に映った姿は木のノッペラボウ。


額に位置する所に魔石が嵌め込んである。


悪魔が死んで、"受肉"が解けたんだ。


手も体も足も全て木。着ていた服がスルッと落ちていた。


俺は思う。


" 悪魔も詰めが甘いよ。木じゃダメ。

俺の構想は、これじゃないんだよ。"


そう思いながらも、俺は"受肉"を念じる。


すると、体に感じる温かさ。


肉が付いていく。


そして、鏡を見る。


(おお!俺の顔だ!生きていた時の顔だよ!

顔色も青くない!

悪魔は青かったけど、あれは悪魔の肌の色だったんだな!)


俺は、下腹部に目を移す。


(おお!お◯ん◯ん!復活!

やったぁ〜!)


俺は、あまりの嬉しさにその場で裸踊りだ。

ぞうさん♪ぞうさん♪

ブラブラ〜ブラブラ〜

…………

…………

自分でやってて、馬鹿みたいに思えてきた。

そう思うと笑いが止まらなくなる。


(ハハハハッ……

ヒィヒヒヒィ。ハハハハッ!

まあ、取り敢えず服を着るか!

この姿で、リリィとセシル姫を迎える訳にいかないもんな!)


俺は、落ちている服を着る。


服は、タキシードだった。


悪魔、結婚式をするつもりだったのかな?

そんなことを思いつつ、体を動かして行く。


(うん。問題ないな。ちゃんと動く。

よし!リリィ達が来るまで時間もあるし、

アイテムボックス内にある、オークキングの肉とか野菜とかを使って料理でも作って待つか!アイテムボックスに食材入れていて良かったよ。)


前の町を出る前にアイテムボックスに入れて置いたのだ。

自分は食べれなくても、リリィが食べれると思って。

アイテムボックスが時間が止まるのは便利だな。腐らなくて良い。


…………ちょっと、待て………

俺は、口を動かす。

そして、口に指を入れる。歯があるな。

………もしかして、俺も食べることが出来る???

こっこれは、試してみないとな!

なおさら、料理を作らないと!


俺は、キッチンに走るのだった。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


いつも応援ありがとうございます!

よろしければフォロー、コメントをして頂けると作者は、大喜びです。

更に、♡☆をポチッと押していただけると、フミヤのように裸踊りをするかもしれません!


どうぞよろしくお願いいたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る