第5話 リリィ冒険者になる。

俺は、リリィに対して憑依を念じた。


体が持っていかれリリィの体内の魔石に収まったことを実感する。

頭の中にアイテムボックス、聖属性魔法という文字が浮かぶ。


リリィのスキルだ。

魔法もスキルなの?

疑問に思ったが取り敢えずスルーだ。


でもスキルが多くなると管理が難しいな。

記憶を辿らないといけないのか?

スキルゲットしたのも忘れてしまいそう。


「スキル確認できる画面が出ればいいのに。」


その瞬間目の前に画面が現れた。


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スキル一覧


吸収LV2

刺突LV2

認識阻害

鑑定阻害

アイテムボックス

聖属性魔法 (ヒール)



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以前レベルが上がったと思ったのは、スキルが上がっていたんだね。

角ウサギに取り憑いて"吸収"と"刺突"でスライムを狩っていたから。


スキルは使えばレベルがあがるのか。

人のレベルはないのかな?


スキルのことも含めて、リリィに要確認が必要だな。


画面を消すのをどうしたらいいの?

俺は手を振りかざしたり、なんか消すボタンを探したりしたが反応ない。

たまたまクローズと言った時に画面が消えた。


俺は再度、" スキル確認"と口に出す。

目の前に画面が出た。


クローズと口に出す。

画面が消えた。


ふ〜ん。なんか便利だね。


納得しながら俺(リリィ)は認識阻害のスキルを自らに使う。


そして、鏡で確認に行く。


うん!成功だ。


青みがかった白髪が茶髪に、赤色だった目の色が青色に変化していた。

顔の作りは変わらないが髪の色と目の色で大きく印象が変わったが、リリィが綺麗、美人だということは何も変わらなかった。


俺(リリィ)は、冒険者ギルドに行く為に宿屋を出る。

オッサンが死んでいるので宿屋を出る時も慎重に人の気配をさけるように出た。


そして、冒険者ギルドに入っていく。

リースの町の冒険者ギルドと作りは一緒のようだ。

入口入って正面に受付があり右に掲示板、左に酒場と食事をとれる場所となっていた。


受付に真っ直ぐにいく。

受付のお姉さんが笑顔で迎えてくれる。


「いらっしゃいませ!どういったご用件でしょうか?」


「あっ!はい。冒険者登録をしたいのですが。」


声は、リリィの声だな。まあ、体がリリィの体だもんな。声帯そのものがリリィだもんな。


「冒険者登録ですね!

銀貨5枚、登録費用に掛かりますが大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫です。

"アイテムボックス" 」


アイテムボックスから麻袋を取り出して、銀貨5枚を支払う。


「わあ。アイテムボックスのスキル持ちですか!依頼が受けやすくなりますよ!

特記事項でアイテムボックス持ちを指定される依頼者は少なくないですから。

お名前を先に登録しますね。お名前は?」


「リリアンと言います。」


「リリアン様ですね。……はい!登録しました!それでは、この水晶に手を翳していただけますか?種族、性別が自動でカードに表記されますので。」


来た!ここは、タイミングが大事だ!


俺(リリィ)は、ゆっくりと右手を水晶に翳しながら、左手を不自然にならないようカードに向ける。

そして、鑑定阻害をかける。


「はい!リリアン様!登録完了いたしました!Gランクからのスタートです!

ランクの説明をいたしましょうか?」


「あっ。はい。一応おねがいします。」


「冒険者ランクは、最高ランクでSSです。

SSランクは、有名ですよね。

世界で一人だけしかいません!勇者様ですね。そこから、S、A、B、C、D、E、F、G

というふうにランクが定められています。

Eランクまでは、依頼を受けて依頼を達成すると自然に上がっていきます。

Dからは一応試験や、指名依頼などを受けて合格すればということになります。

Dランクまで行けば一人前だと言われています。

Eランクくらいになれば、パーティを組まれたほうが良いと思いますよ。

リリアン様は聖属性魔法のスキル持ちなので、きっと勧誘されるでしょうね!」


そう言ってお姉さんは、登録証を渡してきた。


俺(リリィ)は、それを受け取り確認する。


うん。種族、人族になってる。完璧だ。


「登録証は、無くさないでくださいね。

無くすと又、銀貨5枚が必要になりますから。

色んな街や、国に入る時の身分保証書にもなりますから大事にしてくださいね。」


「そうなのですね。ご丁寧にありがとうございます!

それじゃあ。今日は遅いので帰ります。

ありがとうございました!」


俺(リリィ)は、登録証を受け取ると早々に冒険者ギルドを後にする。

長居をしてトラブルに巻き込まれないためもあるが、宿屋を探さないと駄目だからだ。


少し町を歩く。

フードも被らず、歩いている。

改めてリリィの服装を見ると、う〜ん。

悪くないけど冒険者らしくないな。

少し冒険者らしい格好をしたほうがよいかも。

後でリリィに要相談だな。


すると、目の前に小さな宿屋があった。

先程の宿屋と違って小さめだ。


宿屋の前に空室ありの看板。


宿屋に入る。


「部屋を貸して欲しいのですが。」


「はいはい!うちは、素泊まりだよ!

食事とかは、外でしてもらうが構わんかね?」


「はい。それで構いません。」


「何泊する?一泊銅貨20枚だ。

連泊するならまけてやらんでもないが。」


「う〜ん。取り敢えず一泊でお願いします。銅貨20枚ですね。お渡しします。」


「はいよ。確かに!二階の一番奥の部屋だ。部屋は鍵を掛けてくれよ。何が無くなったとかトラブルはごめんだからね。」


「はい。わかりました。」


すぐ横にある階段を登る。

一番奥の部屋って言ってたな。


二階は、五つ部屋があるようだ。

どの部屋も人の気配がするから、最後の一室だったようだ。

ギリギリセーフってところか。


部屋に入り鍵を閉める。


6畳くらいの部屋にベッドが一つ。


さっきの宿屋より狭いが、まあいいんじゃないか。


アイテムボックスから魔石を取り出して、ベッドの上に横になる。


枕元に魔石を置いて、俺は魔石に対して憑依を念じる。

体が持っていかれ、視界が変わる。

目の前には、痙攣しているリリィの顔が見える。


大丈夫かな?と少し心配。

やっぱり美人さんは、心配だよ。


少しするとリリィの痙攣がおさまり、リリィが意識を戻す。


リリィがベッドから起き上がりキョロキョロしている。


魔石から声届くかな?


(やあ。リリィ聞こえるかい?

全て上手く言ったよ。アイテムボックスに登録証入っているだろ?)


「ふっフミヤ様。

魔石に本当に入っているのですね!

登録証?!

あっ。人族になってます!」


(鏡を見てみなよ。髪色と目の色がかわってるから。)


リリィは、鏡で確認する。


「ほっ本当ですわ。

髪が茶色。目は青色に!」


(実際に変わったわけではないけどね。

あくまで認識阻害だから。

じゃあ、次は食事に行こう!

冒険者ギルドの酒場でいいんじゃないか?

あそこなら、ロクな奴がいないし、痙攣させても気にしなくてもいいし。)


俺はリリィを言葉で促して食事を取るよう進めたのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


リリィは、俺に言われるまま冒険者ギルドの酒場の席について、料理を注文し食事を始めた。魔石をテーブルの上に置いて。


(うわぁ。その肉美味そうだな。

なんの肉なんだろう?)


「もぐもぐ。ごくん。これは、ボアという猪のような魔物の肉ですね。

……フミヤ様は何も食べなくても大丈夫なんですか?」


(リリィ!今は会話しなくていいよ。

周りから見たら一人で会話しているから変な人だと思われるぞ。

俺のことは気にしなくていいから、ゆっくり食べてくれ。

俺は幽霊になってから腹は空かないんだ。

美味そうだなって感情はあるけどね。)


「フミヤ様小声で話しているから、大丈夫ですわ。」


(リリィ。君は、もっと自分を自覚したほうがいいよ。

君みたいな綺麗な女性を冒険者の男達が意識を向けないはずないだろう。

さっきから、チラチラと視線を感じないのかい?……ほら!来たよ!リリィ。)


男三人がやってくる。


一人は、いかにもチャラそうな痩せ型の男。剣士っぽいな。

もう一人は、黒のローブを着てフードをかぶっている。魔法使いって感じ。

もう一人は、背中に弓を背負ってるから弓士なんだろう。


「よう!お嬢さん!一人で食事かい!

寂しいだろう?!さっきからぶつぶつ独り言言ってたようだし。

冒険者だろ?冒険者同士仲良くやろうぜ!

食事も、その後もな。その身体だぁ。そっちも好きなんだろう?!」


痩せ型のチャラい男がそう言った。

なんだよ。最初いい奴かと思ったら、最後はゲスいのかよ。


リリィは無視して、食事を取る。


「おいおい!無視かよ。

お高くとまってんじゃねえぞ!

俺達Dランクのゴブリンの嘆きだぜ!」


リリィが口を開く。


「まあ!ゴブリンの嘆きですかぁ。

流石、パーティ名からもそのものですわね。脳みそもゴブリン並みですわ。」


おいおい!リリィ!メチャクチャ煽るじゃないか!

まあ、確かにゴブリン並みの脳みそと性欲って感じか!


痩せ型チャラ男は、顔を真っ赤にして言う。


「舐めた口聞くじゃねえか。

その口に後で罰で突っ込んでやる。

……なんだ?この魔石?!」


「!!!汚い手で触らないで!

痙攣させてやりましょうか!」


はいはい。俺の出番だね。


俺は痩せ型のチャラい男に向かって憑依を念じる。


体を持っていかれ、次は追い出される感覚。


目の前には、ぶっ倒れて痙攣する痩せ型のチャラ男。


ローブの男と弓士の男は慌てふためく。


ローブの男が言う。


「なっ何をした!ふざけやがって!」


リリィが俺を見る。


はいはい。わかりました。


ローブ男に向かって憑依を念じる。


体を持って行かれて……追い出されない。

こいつエルフか!

すぐに、弓士の男に憑依を念じる。

体を持っていかれる。そして追い出される感覚。

目の前には、男三人が痙攣している。


リリィが、手をパチパチして俺に熱い視線を送ってくる。


いきなりDランクの男三人がぶっ倒れて痙攣したのを見て周りは騒然とする。


リリィが言う。


「大した事ないわね。Dランクって本当かしら。さあ、食事も終わったし帰りましょう。」


リリィは魔石を大事に両手で持って、冒険者ギルドを後にしたのだった。


俺?


リリィが宿屋に戻るまでの間、この男達三人を順番に痙攣させてましたけど……。


リリィ。一言言っていい?

俺に仕えるとかいいながら、俺のほうが働いているのは、何故?


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