第4話 リリィ
堂々巡りを続ける間、何回オッサンに憑依して痙攣させたか。
そして、又オッサンが意識を戻そうとしているのを見て俺は、憑依を念じる。
すると、いつもの痙攣より激しく痙攣しオッサンは、オッサンは動かなくなった。
俺は、冷静に分析する。
でっぷり肥えたオッサン……心臓がもたなかったんだなと。
(あっ。死んだわ。
良かったな。手を汚さずに済んで。
ていうか、何してんだよ。)
魔族の女の人は、片膝を付き胸の前で両手を合わせてオッサンに向けて祈りを捧げている。
すると、オッサンの体から魂が抜けて消滅した。
「天に召されましたね。
いくら悪人であろうと、死んだら天に召されるべきなのです。」
ちょっと待て!なんかこの女の人やばくない?
もしかして、俺の天敵にあたる奴なんじゃないの?!
もしかしたら、俺も天に召される?
(そっそうか!あっあのう〜……
俺には祈らないでね。俺は消滅したくないし……)
「あっ貴方は、祈りを捧げても天に召されませんでした。馬車の中で祈りを捧げていましたが無理でしたので。おかげでこうして、又助けて頂けました。」
"もう既に祈ってたんか〜い!"
ふむふむ。
俺には効かないってことね。
うん?って君、何者なの?祈り捧げて魂を天に返す?魔族だよね。魔族の聖職者?
魔族のイメージとかけ離れてるんだけど。
(えっえっと〜……君、なっ何者?)
「あっ。自己紹介がまだでしたね。
私は、リリアン・っ………。
私はリリアン。母にはリリィと呼ばれてました。」
(リリィさんね。よろしく。
俺は、きりッ……いや、フミヤ・キリシマだ。
リリィさんは、聖職者かなんかなの?
魔族のイメージとかけ離れるんだけど。)
「フミヤ様ですね。
聖職者……う〜ん。聖職者の駆け出しみたいなものですね。
母が聖職者でしたので、母の元で修行をしていました。
フミヤ様がおっしゃる通り、魔族の聖職者なんて人族に認められるはずなく…
母が亡くなると、教会から追い出されて……
誰も助けてくれず……甘い言葉で近づいてきたのがこの男です。
すぐにこの隷属の首輪をはめられ、今に至ります。」
(そうか。俺は、信じられないかも知れないけど、この世界ではない所で死んで気が付いたらこの世界に来てたんだ。それも幽霊として。
リリィさんは、やはり聖職者だから俺が見れるし、会話もできるのかな?この世界の聖職者なら、俺を見れるってことかな?)
「いえ、特別だと思います。元から、魂が見えるので。
聖職者で魂が見れる者は限られています。
私は母の血をより濃く受け継いだからだと思います。」
(じゃあ、ほとんどの人には俺が見えないってことでいいんだね。助かったよ!
で、リリィさんは、これからどうするの?
元の居た町に帰る?
それとも、魔族の国?に帰る?)
「元居た町に戻っても母が亡くなった今となっては、虐げられる未来しかありませんし、魔族の国と言っても……魔族の聖職者なんて受け入れて貰えないと思います。
何処にも居場所はありません……
フミヤ様が良ければ…一緒に連れて行ってはもらえませんでしょうか。
二度もフミヤ様に助けて頂いて、恩も返さないといけませんし。貴方様に仕えるのが私の運命のような気がしてならないのです。
……魔族の血が入った私なんか、フミヤ様からすればご迷惑だと思うのですが。……」
(…迷惑とは思わないけど…
そうか、魔族だと分かると厄介なのか。
……一つ提案があるんだけど、リリィさんは魔族の血が入ってるということは、体の中に魔石があるのかな?)
「はい。あります。」
(あるんだね。じゃあなんとかなりそうだ。
取り敢えず冒険者ギルドで登録証を作る必要があるね。それがあれば、なんとかなるよ。)
「しっしかし、私のこの髪の色と目の色で魔族の血が入っていることがバレるし、登録証は特別な力で作成されると聞いています。種族も記載されると聞きますし無理ですよ。」
(うん。リリィさんの力では無理だね。
でも、僕の力があればなんとかなるよ。
ただ、僕にリリィさんの体を少し貸して貰わないと駄目だけど。)
「体を貸す?どういうことでしょうか?」
(体の中に魔石があれば、俺は憑依することができるんだ。今まで、スライムと角ウサギ?それとエルフに憑依したよ。
そしてそれぞれのスキルも使えるようになったんだ。
でも、幽霊のままではスキルを使用できないんだ。そのスキルの中に認識阻害、鑑定阻害っていうのがあるから、俺がリリィさんに憑依してリリィさんの体に認識阻害をかける。
エルフは、俺が体から抜けても認識阻害が解けていなかったから大丈夫だよ。
そして、冒険者ギルドで登録証を作る。
その時に鑑定阻害を使えば完璧だよ。
ただ、俺がリリィさんの体から抜けると、さっきオッサンが痙攣してたろ?リリィさんが痙攣してしまうんだけど。)
「……なっなるほど。痙攣ですか。
……はい、我慢します。
取り敢えず、この宿屋からも逃げないと殺人で捕まってしまいますし、憑依してください。」
(まあ、待って!まずここですべきことがある。
まずその隷属の首輪を外すこと。
金目の物を回収すること。
その首輪に鍵穴が見えるということは、このオッサンが鍵を持ってるんだろ?探そう。
そして、このオッサンの鞄の中身だね。
俺は物を触れないからリリィさん探してよ。)
リリィさんは頷いてオッサンのポケットを
探し出す。
鍵はオッサンのズボンのポケットから出てきた。
リリィが首輪を外す。
そして、鞄を逆さまにして中身を掘り出す。
出てきたのは、麻袋に入った金貨と銀貨、銅貨。そして、宝石か何かの綺麗な石。
「凄いこの人沢山お金を持っています。
それに、立派な魔石!」
(そっその石!魔石なの?)
「そうですね。魔石です。どうしますか?お金だけ頂いていきますか?」
(いや!その魔石も使い道があるよ!
魔石とお金を頂いていこう!
っていうか入れる物がないし、鞄ごと頂いていく?)
「いえ、私には鞄が必要ありません。
スキルにアイテムボックスがありますので。
" アイテムボックス" 」
リリィは、アイテムボックスと口に出す。
すると、黒い穴が現れる。
リリィは、そこにお金の入った麻袋と魔石を入れる。
(へぇ〜!便利なもんだな。
あっ。さっきチラッと言ったけど……俺は憑依すると憑依した者のスキルを使えるようになるんだ。
リリィさん、それでも憑依しても良いのか?)
「はい。フミヤ様なら構いませんわ。
二度も助けて頂いたのですし、私に憑依するのも私の為ですから。」
(そう言ってくれると助かる。
これから、リリィさんに憑依して認識阻害をかける。それから冒険者ギルドに行き登録証を作る。鑑定阻害をかけながら。
そして新しく宿を取り先程の魔石を取り出してそれに憑依する。
君の体から出たら君は痙攣するが、ベッドに倒れるよう調整するから心配しないでくれ。
その後申し訳ないが町に食事でも取りに繰り出してくれ。魔石を持ってね。
俺は適当な奴を見つけて憑依して追い出されて幽霊に戻る。
これがこれからの流れだ。いいかな?)
「フミヤ様。承知しました。
ふふふっ。私に憑依して、イタズラしないでくださいね。ふふふっ。」
(ばっ馬鹿!しっしないよ!
そっそれより様はやめてくれよ。
なんかただの幽霊なのに、偉くなったようでなんか落ち着かないよ。)
「フミヤ様こそ、さんはやめてください。
リリィと呼び捨てで。
私は、フミヤ様にお仕えすると決めたのでこれで良いのです。貴方様がいないと私には生きにくいこの世界。
凌辱される未来しか見えないのですから…」
(……リリィ…君のことは守るよ。俺の憑依で……
じゃあ、時間も時間だ。やろうか。)
俺は、リリィに向けて憑依を念じるのだった。
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