第3話 堂々巡り
朝。
なかなか爽快な朝だな。
俺は、ランドルの体を借りて欲望の限りを果たしたのだ。
ああ満足。
女達も満足して、今も熟睡だ。
ちゃんと、情報もさりげなく聞いといた。
王都に行きたいなぁ〜と一言。
女は、乗合馬車で行くのか?歩いて旅するのか?を聞いてきた。
答えずに、突いてやった。
フフフ。乗合馬車があるのか。情報収集は、バッチリさ。
俺的には、まだこの女達を名残惜しく感じているが、どうもランドルの体が悲鳴をあげているようだ。
ランドルジュニアがダラんとなったまま。
まあ、あれだけ頑張ればそうなる。
なので、このランドルの体からオサラバする時が来た。
ありがとう!ランドル。俺は君を忘れないよ。
卒業おめでとう!俺!
そう言いながら女に憑依を念じた。
すると、体を持って行かれる感覚がして、ランドルから飛び出て、女に入り込んで、その次は、ポンと追い出される感覚がして、俺は又幽霊に戻った。
痙攣している女とランドル。もう一人の女は、熟睡しているのでその二人の様子に気づかないようだ。
さあ、行こう。
宿屋の窓から俺は、フワッと出る。
町は、朝早いと言うのに動きだしている。
この町の名前はリースと言うらしい。
なので近くの森の名前もリースの森。
ガーランド王国の町の一つということだ。
なんとかという子爵が治めているそうだ。
ちゃんと、いたしながら女達から聞いている。
抜かりはない。
取り敢えずガーランド王国の王都を目指すことにしたのだが、確か町の入口に王都行きの乗合馬車があると女から聞いた。
そう思いながら、フワフワと移動していると見つけた。
馬車を操車する男だろうか?
(王都行きの馬車はコッチだよ!)
と声かけしている。
当然俺のことは見えていないから俺に声を掛けた訳ではないのだが。
俺は、スゥッと乗り込む。
乗合馬車とか言ってるけど、なんか荷馬車のようだな。
貴族が乗るような豪華な馬車ではなく、取り敢えず雨風を凌げるように布を被せてある馬車。
客は少ない。朝一の馬車だからかな。
冒険者が数人と、でっぷり肥えたハゲ頭のオッサンとその横にフードを被った女性?女の子?
だけだった。
オッサンと女性?女の子?おかしな組み合わせだなと思った。
見るからに親子でもないし…
ていうか、オッサン。女性に対する態度があまりに横暴だ。今も殴ろうとした。
訳ありっぽい。
女は奴隷なのか?オッサンの態度を見てるとそう感じたのである。
よく見れば首輪が見えた。
女性は、青い髪色…う〜んどっちかというと青みがかった白髪と言ったほうがいいか。
肩までの長さ。
スタイルは…凄く良い。出るとこ出てる。
顔は、フードで隠しているぽいが、覗きこんでみたらめちゃくちゃ美形。
目の色は赤色。
なんで、顔隠すの!?勿体ない!
覗きこんでいたら、女性と目が合った。
すると、女性はビクッと体をのけぞらせた。
そして、フードが頭から外れた。
するとオッサンが女性に言う。
「じっとしとけってんだ!!」
大きな声で怒鳴りつける。
すると、周りの冒険者が言う。
「チッ!魔族かよ!」
「へぇ〜魔族の女かぁ。
なかなかの女じゃねえか!…ひひっ。
乳もなかなか!
オッサン!触るくらい良いだろう?
ていうか、触らせろ!
魔族の女を連れてるのバレたらどうなるかわかるよな!」
「チッ!兄ちゃん!胸揉むだけだぞ!これは、王都のとある貴族様に進呈するんだからな!
胸は揉んでいいから、黙っときな!いいな!」
なっなんともゲスイ奴らだ!
魔族の女の胸に、冒険者の兄ちゃんの手が迫る。
魔族の女は唇を噛み締めている。
俺は、迷わず動いた。
冒険者の兄ちゃんに向けて憑依と念じる。
体を持っていかれる感覚の次に押し出される感覚。
目の前には痙攣している冒険者の兄ちゃん。
ざまぁ!
オッサンが言う。
「なんだよ!コイツ!興奮しすぎて痙攣しやがった!
おい!お連れさんよ!この兄ちゃん引き取ってくれ!それと、このことは内密に頼むぜ。」
「全くよぉ!何してんだか!
魔族の女に手を出そうとするからだ!
どこぞの貴族さんも、お盛んだな!」
連れの冒険者が、乱暴に兄ちゃんを馬車の角に引っ張る。
俺は、なんとか女を守ることができたとガッツポーズ。
そんな俺をジッと見つめる魔族の女。
………この女の人……もしかして、俺のこと見えてる?
思わず後退り……
魔族の女の人は、ペコリと頭を下げたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕方、小さな町に着いた。チコリの町。
王都は、まだまだ遠いらしい。
今日は、ここで一泊するようだ。
でっぷり肥えたオッサンは、例の魔族の女の人を強引に引っ張って宿屋に入って行く。
この魔族の女の人が本当に俺のことを見えてるのか気になった俺は、付いていく。
宿屋の一室に入ったオッサンと魔族の女の人。
オッサンは、魔族の女の人をベッドに乱暴に押し倒す。やっぱりそうなるよな。
「ぐへへへ〜貴族様に引き渡す前に、つまみ食いはしねぇとな!
ほら!暴れるな!暴れると刺すぞ!」
オッサンは涎を垂らし、いやらしい笑みを浮かべて腰に帯刀していた、少し大きいナイフを魔族の女の人の顔の前に突き出す。
「ぐへへへ〜。
お前も死にたくはないだろう?
大人しくしとけ!すぐに気持ち良くしてやるから。ヒッヒヒ。」
オッサンは、ナイフの刃の腹でペシペシ女の頬を叩き、ナイフの刃で女の服を切ろうとした。
俺は、女性を凌辱する奴はヘドが出る。
暴力的に犯すなど許せない。
そりゃ俺にも欲望はある。でも泣いている女を犯すのは許せない!
そう思った俺は、オッサンに向かって憑依を念じる。
いつものごとく体を持っていかれる感覚、そして追い出される感覚。
そして、今目の前には痙攣しているオッサンがいる。
女の人は、涙を拭い体を起こし俺を見ている。
俺は呟く。
" やっぱり、俺のこと見えてんのかな?
会話できたら良いんだけどな。"
すると、女の人が口を開いた。
「みっ見えています。一度ならず二度も救ってくださりありがとうございます。」
(やっぱり見えてんだ!会話もできるんだな!これは、嬉しいな!誰かと会話したかったんだ!
おっと!その前に。痙攣がおさまるまでに、このオッサンを始末したほうがいい。
自由になりたいだろう?)
「……始末……こっ殺すのですか?
でっできません。」
(じゃあ、このままで良いのか?
オッサンに凌辱され王都に行けば、どこぞの貴族に性の玩具にされてしまうんだぞ!俺は、こうやって知り合った以上君をそんな目にあわせたくないんだ。)
「……………」
魔族の女が黙り込んだ時、オッサンが息を吹き返す。
すぐさま俺は憑依を念じ、又痙攣させる。
そして魔族の女に問いかける。
(俺はこの世界のことを殆ど知らない。
だから俺のイメージで話をするよ。
君は魔族なんだろ?
あくまでイメージなんだが、魔族は人を殺すんじゃないのか?人は敵ではないのか?
人の脅威の存在ではないの?
殺すことを躊躇するイメージはないのだけど。)
「確かに人族は魔族を忌み嫌い、魔族も人族を忌み嫌っています。
魔族のほうが力も強く、人族を殺すことに躊躇いがない者ばかりなのはその通りですが、わっ私は…私は違います!」
(君は、人族を忌み嫌っていないんだね。
そうか。それは良かった。じゃあ俺とも友達になれそうだ。……あっ。俺、人族と言えないか!幽霊だもんな。ハッハハ。
いやいや、それより!君が殺さないと、俺が代わりに殺すことできないんだよ。
こんな感じで、俺は物体を通り抜けてしまうから。)
俺は、オッサンを蹴り飛ばすように足を振ったが、見事に通り抜けてしまった。
オッサンが又意識を戻そうとするので、また憑依で痙攣させる。
「わっ私は魔族でも、魔族と人族のハーフ。母が人族なのです。
母から人を殺めてはいけませんと教育されて育ちました。亡き母の教えを破ることは私にはできません。」
(……そうなのか……でもこのままだと君は、凌辱されてしまうんだぞ。
それでも良いのか?
俺は、こうやって知り合った以上君を見捨てる訳にいかないんだ。)
「りっ凌辱されるのは……嫌っ。
でも……こっ殺すことも…
だって、魔物ではないのですよ。
母は、いつも言ってました。
殺して良いのは、魔物だけと。」
なんか、堂々巡りになってきたな。
どうしたものか?
頭を悩ますのだった。
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