239話 ヒラギスとの会談

「朗報じゃ。我らは領地を貰うことにしたぞ」




 エルフの館に出向いてくれたヒラギス宰相ネイサン・パルファージ公爵に、リリアが偉そうにそう告げた。




「おお、それは朗報ですな!」




 宰相殿は単純に喜んでいる。




「領主は妾が務めることになる」




「エルフの王族がヒラギスに加わっていただけるとは! これは領地も爵位も奮発せねばなりますまいな!」




「それでじゃ。せっかくだし、獣人を集めようかと思ってな?」




 ここからが問題だ。案の定、獣人と聞いて宰相殿が怪訝そうな顔になる。なにがせっかくなのか、意味がわからなさすぎる。




「獣人、ですか?」




「そうじゃ。エルフの里があるじゃろう? ああいうのを獣人にも作ってやろうと思っての」




「それは……」




 宰相殿は老練な政治家だ。すぐにその危険性に気がついたのだろう。数は力。それも戦士としての気風が強い獣人だ。一つの勢力にまとまってしまえば面倒な存在になりかねない。




「わかっておる。獣人が力をつけるのが心配なのであろう? じゃが王国と我らを見てみよ。実にうまくやっておる。獣人もきっとヒラギスの力となろう」




 エルフが国としてまとまることで、ヒラギスでこれほどの戦果をあげることができたのは間違いない。




「それに随分と人口が減ったであろう? 他国からも獣人を呼び込めるぞ」




 それを聞いても宰相殿の表情は変わらない。メリットというより懸念している獣人の力が更に増すという話だからだろう。




「場所に関してじゃがむろん一等地を寄越せなどとは言わぬ。魔境沿いの危険の多い領地で良い」




 山岳地帯が近くにある辺境のほうが鉱山開発がしやすくなってむしろありがたい。まあヒラギスは周囲はほとんど山岳地帯だ。そこはまず心配ないだろう。




「それとエルフからヒラギスへ、大規模な援助も約束しよう。このようないい話、他ではないぞ?」




「ほう。その援助の内容は、どのような形になりましょうか?」




「まずは無償の資金援助じゃ。一〇億ゴルドを用意した」




「一〇億!?」




 日本円にしておおよそ一〇〇〇億円。なかなかの額だ。宰相殿も驚いている。




「それで足りねば有償低利での融資の相談に乗ろう。それから人的支援じゃな。今も北方砦と東部砦にエルフを置いておるが、これを今後二〇年間継続すると約束しよう」




 二〇年か。神託によって告げられた世界の破滅を念頭に置いているのだろう。




「さらに通常の復興作業の支援じゃな。知っておるとは思うが、我らには土魔法に秀でた者が何名かおってな。それらが手伝えばヒラギスの復興は早まることじゃろう」




 支援は以上のようで、しばし黙考する宰相殿の反応を待つ。




「もし断れば?」




「では支援額を二〇億としようかの」




「に、にじゅう……」




「それでもダメというなら我らはいますぐにヒラギスから手を引く。そして獣人の国は王国の我らの領地の近くにでも作ろうかの」




 国って言っちゃったよ。




「なにせ大きな事業となる。ヒラギスへの援助も厳しくなるじゃろうの?」




 初めから選択の余地などなかった。断ればエルフの援助がなくなるのみならず、獣人の多数が流出してしまう。




「いや、もちろん断るなどとありえない話です。エルフの援助に強くなる獣人領地。大歓迎ですとも!」




 宰相殿はすぐさま申し出の受け入れを決めたようだ。帝国軍でさえリリアには屈服した。その場面に宰相殿も居たのだ。




「それで良い。少しでもわだかまりを残すと後々尾を引くことにもなりかねんからの?」




 獣人はもちろんのこと、領主であるエルフとの関係もである。エルフはヒラギスの救い主でヒラギス民から絶大な人気がある。その上支援の申し出があってそれを断りそっぽを向かれたとなれば、民は元凶を許さないだろう。最悪いまの王家が倒れる。




「もちろん我らとて王国を尊重し、その一部として長きに亘って上手くやってきた実績がある。新しい領地もしばらくは我らで運営するゆえ、そのあたりは何の心配もいらぬ」




「しばらく、ですか?」




「いずれ我が夫、マサルの子のうちの誰かに譲ることになろう。ほれ、嫁には獣人が三人もおるしの」




 宰相殿もなるほどと頷いた。 




「じゃからの。領地と爵位、期待しておるぞ?」




「そうですな……場所はこの公都の少し北側が広く空いております。爵位は辺境伯でいかがでしょう?」




 元から考えていたのだろう。すぐに提案がされた。でもここの北側って、公都と北方砦の間で一番荒らされた場所じゃねーか……


 だが広い土地というなら条件に合うし、誰の所有でもない山岳地帯も隣接地帯にある。


 そして提示された辺境伯というのは伯爵の上。公爵が王の一族。侯爵が譜代の家臣で、伯爵が外様だというのが一般的らしい。辺境伯であるが伯爵よりは上で、名前からして辺境に領地を持つという性質上、ある程度の独立性もある爵位と言われている。新参者に与えるには破格の、最上の地位だ。




「それ以外でとなりますと、東部砦の近くに半分ぐらいの大きさの領地、他の場所にも候補はありますが、やはり広さはそれほど確保できませんな。もちろんエルフが援助してくださるというのなら領地替えに応じてくれる領主もいるでしょうから、他の場所にほどほどの大きさの領地が用意できましょう」




 リリアが俺を見るので頷く。場所も地位も問題なさそうだ。ヒラギスとしても獣人が本国の盾となってくれるなら、力をつけても無下にはできまい。




「爵位は十分じゃ。領地に関しては見てみぬことにはなんとも言えぬな。とりあえず最初に提案された公都の北側を見に行くこととしよう」




 地図を出して詳細な場所と境界を確認。北方砦近くはやはり最初から候補として考えていたようで、すぐに境界も確認できた。町が一つと村がいくつか。北方砦を含む、ヒラギスの北端まるごとって感じだな。


 


 すぐに皆で領地予定地の視察に向かうことにした。宰相殿に見送られフライで飛び立ってすぐ、リリアに話しかけた。




「一〇億だったのが、二〇億にして平気だったのか?」




「おお、あれのう。もともとが二〇億まで出す予定じゃったのじゃ。一〇億を最初に出してあと一〇億は小出しにせよとの父上の指示であったが、面倒じゃろ?」




「でもそんなに出して大丈夫なの?」




 エリーも話に加わってきた。獣人の里にも資金は必要だし、あんまりエルフに無理はしてほしくない。




「長年貯め込んでおったからの。この程度ではエルフの国庫はこゆるぎもせぬ」




 そして低利の融資用に一〇億。獣人の里建設の費用にも一〇億ゴルド、用意するそうである。




「金ばかり貯めても使い道もないのに、商人どもはもっともっと売ってくれとうるさくての。こちらとしても食料や素材の購入を商人たちに頼っておる以上、無下にはできぬしのう」




 結果、金貨白金貨が金蔵かねぐらに積み上がることとなった。やれやれと、まるで自分が相手をしてきたように話すが、貿易担当で苦労をしているのはリリアの兄上である。




「じゃあ低利の融資はヒラギスの領主にがんがんばら撒きましょう。どこもうちには逆らえなくなるわよ!」




 お金があるって強いなあ……


 そんなことを話し合ってるうちに領地唯一の町の上空に到着した。




「小さいな」




 町としてはずいぶん小規模。城壁だけは普通の町並のそこそこ立派なのが建てられている。崩壊しちゃっているが。




「水源が小さな川だけなのね」




 そうエリーが言う。それであまり町を拡張できなかったのか。




「水か。川の流れを変える……のはいま利用している村や町が困るか。近くから運河でも引くか」




 場所はいいのだ。開けた土地で北方砦に近いし、公都へもすぐにいける距離。それでも町や村が少ないのは魔境に近いこともあったが、水利がよくない環境だからだろうか。




「また水の精霊に頼むかや?」




「運河の建設も計画にいれて、最初はそれでいこう」




 となると町のあった場所にこだわる理由はないな。壊滅したとはいえ、元の建物もかなり残っていて、拡張性に乏しい。更地にして建設し直すなら一からでもさほど違いはない。


 


「もっと北へ」




 北方砦が見える位置まで北上して西側へ。領地予定地をぐるっと一周する。西側は平地が少ないな。それはそれで守りやすい土地なのだろうが、自分の住む町だけ守れても仕方がない。




「こことかどうかしら?」




 エリーの提案にぐるっと周囲を飛んで回る。公都と北方砦を結んだラインの、かなり北方砦寄りの立地だ。だがまあ多少の距離があっても北方砦が落ちれば一緒。それならいっそ近いほうがすぐに救援に行けていいかもしれん。


 そして北方砦さえがっちり守っていれば、領地の北側と西側は山脈となっていて、軍勢が通れるような場所じゃない。その分、地形が山がちで面倒な場所もあるが、開発してしまえばそれなりに住み良くなるだろう。


 危険だということで入植希望者は減るかもしれないが、人はじっくりと増やしていければいいだろう。




「良さそうな気がする」




 そう言っていま考えたことを説明する。




「ではここに決めようかの」




「どう思う、ミリアム?」




「えっ」




「ここに決めちゃっていいか?」




 唯一のヒラギス出身の獣人である。意見くらいは聞いておきたい。




「あ、あの。私……ええー?」




 突然の問いかけにミリアムは狼狽えている。




「今後の獣人の首都。獣人の里。聖地となる場所じゃ。もし気に入らんなら今のうちに言っておくといいのじゃぞ?」




 さらにプレッシャーがかかるようなことを言うリリア。




「どこでもいいんだ。俺たちの力があれば、どこでだって立派な町が作れる。もっと公都に近くてもいいし、なんならエルフの里みたいに北方砦の先に作ってもいい」




「ほう。それも良さそうじゃの。峠を抜けた先にはかなり広い平原が広がっておったし」




「こ、ここでいいです。ここがいいです!」




「そうか? ならばここに町を作るとしよう。宰相殿に連絡じゃ!」




 そう言ってリリアが随伴してきたエルフの部隊に指示を出した。




「場所はここでいいとして、まずは町の規模を考えないとな」




「エルフの里くらいでいいんじゃないかしら?」




「かなり大きくなるな。とりあえずどんな感じになるか、見てみるか」




 門の一つは北東に作る。北方砦へとまっすぐにいけるルートを作るためだ。それと南側に公都へと続く道。




「ここにエルフの里と同等規模の城壁かー」




 門の予定地に城壁の一部をとりあえず簡単に作ってみて、空から確認する。実際に大きさを見てみると相当に広がりがある。手間がかかるなんてもんじゃないぞ。




「まずは小さい規模の町を作りましょう。うちの村くらいの大きさでいいわ。それから獣人の里の城壁を時間をかけて順次作る。それでどうかしら?」




 内側の城壁を通常の町の規模の城壁にしておけば、一日あれば作れるな。エリーの提案に頷く。




「それでいこう」




 縄張りを決めてまずは伐採。整地。それから城壁造りだな。燃やしてしまえば手っ取り早いが、木材はいくらでも使い道がある。




「まずはこの辺り一帯の木を適当に切っていってくれ。切り株はあとで処理するから切り倒すだけでいいぞ。アイテムボックス持ちは木を回収して一箇所に集めておいてくれ。オレンジ隊は周囲の警戒だ」




 サティがさっそく剣を取り出し、スパッと木を切り倒し、それをエリーが手際よく回収する。




「ええ!? 剣でやるんすか?」




「そうだぞ。俺たちの力と技術なら剣のほうが早い。まあ気になるなら斧もあるし、数打ちの剣でもいいぞ。慣れないとすぐに剣を悪くするからな」




 そういえば最初に村を作った時は俺とサティ、アンにエリーにティリカだけだったか。




「すまんがもう一度集まってくれ。光魔法をかけてやろう」




 力も強くなるし体力が持続する。魔力の回復も早くなる。使わない理由がない。そして俺の呼びかけに師匠までしれっとやって来た。木こりの真似事はしないつもりなようで動かなかったのが、鼓舞と加護がもらえるなら話は変わるとでも思ったのか、強化をかけるとゆったりとしたペースであるが木を切り始めた。


 ウィルたち前衛組もそれを見て、慌てて木を切り倒し始める。




「わたしもやるわ」




 そう言ってアンが斧を貰いに来て、しっかりとした手付きで木を切り始めた。アンもレベル5の棍棒術持ちである。




「ティリカもやるの?」




 こっちは武器スキルはないが、肉体強化は取ってあるし、レベル相応のステータスもあって、実は一般人より相当に力も体力もある。




「剣聖と聖女殿に光魔法をかけてやることが木の伐採とはの。じつに豪勢ではないか?」




 剣聖に続いて世界最高峰の剣士部隊が木を切り倒していき、放射状に視界が開けていく。




「この光景は覚えておいて、いつか子供に話してやろう」




 剣聖とその弟子が切り開いた町。ちょっとした話のネタくらいにはなるだろう。ま、馬鹿なことを考えてないで俺も仕事をするか。




「ああ、そうそう。北方砦にも連絡しておこうか。いきなり城壁ができてたらびっくりするだろうしな」




 そう指示を飛ばして、その城壁造りを始める。もう散々やってきた作業である。東部砦や北方砦クラスの城壁ともなるとそれなりに気合も必要だが、町の城壁でいいなら流れ作業的に作ってしまえるようになった。


 伐採は順調に進み、城壁もさくさく生えていく。途中でエルフの親方も呼んで、城門の作製も依頼した。そして数時間。


 


「お昼までもかからんかったな」




 伐採はまだ一部残っているし、外周部もこれから切り開かないといけないが、そっちは後回しで大丈夫。当面は内周部にしか人は住まない予定だ。




「俺たちの家はどうするかな……」




「エルフ城みたいにしましょうよ!」




「そうじゃの。当面は妾が領主でもあるし」




 エルフのところのお城かあ。あのシンデレラ城みたいなやつ。かなり複雑だし、一気に作るのは無理だな。パーツごとに分けて考えよう。豪華なウェディングケーキみたいな構造になるのかな。一段目をベースにして広く作る。そこに二段目の建物を乗せて、最後に中心部の高い塔部分を作る。


 いや、作るときは逆からのがいいな。まず中心部の一番高い塔を建てる。その周囲に中間の高さの建物。最後に広く一層目部分。


 細かい造作は後でエルフにやってもらえばいい。俺に芸術的センスを求められても困るし。建物の内部もシンプルに、階層構造だけしっかりと作る。中心の塔が五階建て、中間層が四階。一層目が二階建て。尖った塔の先端も、まずは単純な形の円筒で済ませる。


 うろうろと歩いて実際に作る大きさを確認しながら、イメージをまとめていく。




「いけそうだ。やってみよう」




 失敗したり、変な形になってしまったらやり直せばいい。まあお城を家にするのはどうなのと思わないでもないが、俺自身に特に考えがあるわけでもなく、嫁たちが要望するならそれに沿ってやるのに何の問題もない。




 詠唱開始――


 まずは塔部分どーん!


 次に中間部分どーん!


 最後に一層目どーん!




「と、こんな感じになったけど?」




 ちゃんとお城っぽくはなっている。まあお城というより色味がこの辺りの土色なのもあって要塞と言うほうがしっくり来る感じではあるが。




「良いのではないか?」




「これはこれで無骨な感じでいいかもしれないわね」




「さすがはマサル様。良いお仕事です」




 そう親方の太鼓判も頂いた。




「じゃあ問題がなさそうなら外装の飾りの追加と内装工事を始めちゃってくれ」




「飾りは少なめで良いぞ。この無骨で力強い雰囲気を残して作るのじゃ」




「了解です、姫様」




 居住区だけなら明日にでももう住める。内装外装すべて完成させるには一週間くらいはほしいそうである。そう説明すると連れてきていた部下に矢継ぎ早に指示を出し始める。




「次は水精霊を迎える場所じゃな。城の横に池を作るぞ」




「ダークオレンジ隊用の宿舎も城の裏手にでも作っておくか」




 訓練用の広めの庭もほしいな。




「長の家とゴケライ団の宿舎も必要じゃの」




 まず道を作って区画を区切る。中央広場と商業区域の設定。長の家と獣人たちが集まったり臨時の宿舎にもなる集会場。上下水道のラインも考えておかないとな。


 このあたりはヤマノス村で一度やっているのでほぼそのとおりにやれば良さそうだ。




「神殿も作ってね。治療院と養育院も」




「学校も」




 アンとティリカも希望を出してきた。


 門のところには警備詰め所もいるな。冒険者ギルドは……人が集まってから外周部に作ればいいか。


 要望を聞きながら、エリーと一緒にぽんぽんと建物を作っていき、陽が落ちる頃には町に見えなくもない町が出来上がりつつあった。




 そこにお客人ですと、宰相殿が案内されてやってきた。北方砦に連絡した後、ちょこちょこ見に来る者もいて、そこから連絡が行ったのだろう。




「こ、これは?」




 できたてのお城を見上げて宰相殿が驚きの声を上げる。




「おお、宰相殿ではないか。見に来たのかや? 半日ほどで作ったにしてはなかなか立派であろう」




「これを本当に半日で? いやしかし、場所が決まったのは今朝がたのこと……」




 城壁に城。いくつもの建物。空き地に積み上がった大量の何の処理もしてない木に、整地してない場所は切り株が残ったままだ。


 北方砦からほど近く、公都からも馬を飛ばせば一時間もかからない距離。街道からは少し外れているとはいえ、こっそりと町一個を作っていて見過ごすはずもない。




「ここはとりあえず第一陣が住むための内周部でな。明日には建設部隊がやってきて、一週間もあれば、きちんと住民の住める町らしい町になるじゃろう」




「一週間……」




「更にここから外側を整備しての。獣人の里は、この数倍の規模となる予定じゃ」




 リリアはそう誇らしげに宰相殿に説明をする。




「これがエルフの力……聞いてはいましたがこれほどとは」




 実際に見ると聞くとでは大違いなのだろう。まあヒラギス戦中は自分の住む場所と城壁くらいしかやってこなかったし。




「そうじゃな。我らを味方につけられて、ヒラギスは実に幸運じゃぞ」


 


 メインでやったのは俺とエリーだけどな。


 住民のための住居の確保。公都と北方砦を結ぶ道路の整備。農地に灌漑用の水路。外周部と城壁の整備。


 元からあった町や村の再建もしないとな。やるべきことは多い。




「実は折り入ってご相談があるのですが」




「ふむ。そういえば復興の支援に関しては具体的な話は詰めておらなんだのう」




 現地を見に行くと言っておいて、その日のうちにいきなり町を作り出す。しかも明日からでも結構な人数が移り住める出来あがり。特に城壁は真っ先に完成させた。城門もエルフに仮設してもらって一応の完成を見ており、後日鉄製の頑丈な門へと交換する予定だ。




「いくつか早急に復興したい場所がありまして、偉大なるエルフのお力。ほんの少しでも、お借りできればと……」




「おお、宰相殿。頭を下げる必要などないのじゃぞ? 正式な任命はまだ先とはいえ、妾はヒラギスの臣下も同然の立場となるのじゃからのう」




 臣下も同然。臣下にはならない、気に入らなければいつでも関係を打ち切ると言外に言っているのも同然なのが宰相殿に理解できないはずもないだろうに、だがそれでも。宰相殿はあくまで低姿勢に、にこやかに話を進めるのだった。


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