第2話勇者しての役目

魔王軍と連合国軍は勇者と魔王が戦っていた平原とは違う場所で血戦を繰り広げていた



「怯むなッ!!!前進せよッ!!!魔王軍を打ち砕くのだッ!!!」


立派なヒゲを蓄えた老人が輿に乗りながら魔王軍の攻勢にて後退している連合国軍を鼓舞する


「教皇樣お下がり下さい!」


教皇の輿の近くに一騎の騎士が駆け寄り教皇に後ろに下がるように求める


「バルトよ此処で退けば此処は突破され連合国軍は打壊する……儂が後方で暇をもて余す暇など無い」


「しかし!」


「勇者様が劣勢をひっくり返したのだ!この勝機を逃してはならん!勇者様が必ず魔王を討つ!我等の役目は此処に十三天魔将共の足止めをするのだ!!!命尽きようとも!!!」


「……教皇様……ならばせめて聖騎士団団長バルト・ブエル・アバルト!命を賭して教皇様をお護りいたします!」


「好きにせよ勝ちに往くぞバルトッ!」


「ハッ!」


魔王軍では龍族の男が陣頭にて魔王軍先発部隊の指揮を采っている


「連合国軍共を駆逐し魔王様に勝利を捧げよ!!」


「「「「「「ウオオオオオオオォッ!!!!」」」」」」


「この十三天魔将序列9位滅龍ヴォレ・バンガスに続けぇ!!!!!」


魔王軍と連合国軍の兵士が雄叫びを上げながら戦いを繰り広げられる


とある戦線では…


「連合国軍共良く聞けぇ!空の覇者であるこの十三天魔将序列7位嵐鯨フリーガルダ様が直々に葬っでくれるッ!」


天空に浮ぶ巨大な鯨が嵐を纏いながら姿を現し連合国軍を暴風雨と雷で薙ぎ払う


「クハハハハハハッ!!!愉快愉快ィ!逃げ惑え連合国軍共!!!」


有頂天になり暴れまわるフリーガルダに声がかけられる


「趣味悪いわねーアンタッ!弱い奴虐めて楽しい訳?やっぱ魔族ってどっか可笑しいわ!」


フリーガルダが声の主の方向を向くと肩まで伸びた空色の髪に深い海いの瞳の身長が少し勇者よりも高い少女が人差し指でフリーガルダを指していた


「何?我々魔族を侮辱するのか?あの世で悔いよ人間ッ!!!」


少女は氷の礫をガトリング砲の様に放つが全てフリーガルダの風のプロテクトに防がれてしまう


「無駄である!幾ら貴様程度が氷の礫を撃ち込もうが我にしてみれば埃に等しい!」


「本当にそうかしら?くじらモドキさん?」


少女は不敵に笑う


「き、キサマァッ!!!戯言をォ!!!」


フリーガルダはより嵐を強め辺り一帯がは風で地面が抉れ雨は鎧を貫くほど強く降り絶え間なく雷が落ちる


「あ、自己紹介がまだだったわねアタシの名前はフローレンス・アルガーダ、氷の賢者って言えば分かるかしら?あとこれは質問なんだけど氷を操るアタシにこんな水を与えて良いの?」


「し、しまっ「遅いのよ」


フリーガルダはフローレンスの考えに気付き雨を止めようとするが遅かった。全身が濡れていたフリーガルダは一瞬で氷漬けになる


「お、おの…れ…人間、風情が……」


フリーガルダは地面に墜ち砕け散る


「アタシは人間じゃないわエルフよ…ってもう聞こえてないわね」


フローレンスはフリーガルダが死に雨雲が晴れた空を見上げ


「頑張りなさいよ勇…いやエルド……」


少女は一人の友の名前を呟いた


_______________________



その頃の魔王と勇者



「もう戦うの疲れた……」


勇者は魔王と停戦したその後その場で魔王の足の上に座っていて何故か魔王は勇者の髪を弄っていた


「勇者は大変だな」


魔王は他人事の様に言う


「お前が戦争を始めたせいだ」


「部下が勝手に暴走して戦争を始めただけだ」


「……え?」


勇者は常にポーカーフェイスたがこのときだけはポカンとした表情で魔王を見る


「そもそも魔王には成りたくなかった…継承順位も2位だったが兄が居ただが兄がどうしようもなく愚かで私が担ぎ上げられた」


「………魔王も大変?」


勇者は首を傾げながら魔王を見る


(ゴホッ!?なんだこの勇者!?私を殺しに来ている……!!!)←本人は気付いていないが勇者の見た目がドストライク


「分からんな………」


「戦いに正義も悪も無い……魔王?」


「?」

 

「髪弄らないで」


「すまん…」


魔王はしょぼんとしながら勇者に謝っていると先程まで曇っていた空が晴れる


「フリーガルダがやられたか…」


魔王がポツリと呟く


「………」


勇者は少し寂しそうな顔をする


「なんだ嬉しくないのか?勇者?」


「別に」


「そうか…敵の幹部がやられても喜ばんとは変な奴だな」


「…魔王こそ…部下がやられてるのに悲しんでない…」


勇者は少しムッとしながら反応する


「分かるのか…ああお前の言う通り悲しくないフリーガルダはどちらかと言うならば恨んでいた、あいつが私を担ぎ上げたせいで私は魔王に成らざる得なかった…そのせいで自由が奪われた」


「薄情者…」


勇者がジト目で魔王を見つめる


「その様な目で見るな、勝手に暴走して戦争を起こしたのはアイツの事だ王の命令を聞けん部下など部下だと思わん」


「そっか…魔王はこの後どうするの?」


「もう政治は懲り懲りだ…此処で私は死んだ事にして旅でもすることにしよう、勇者は魔王を討った英雄として頑張るなり故郷に帰るなりすれば良い」


「良いな…」


「何が良いのだ?お前は念願の魔王を討伐した英雄になり私はやっと魔王を辞められる…お互い得しか無いだろう?」


「……私には帰る場所なんて無い…捨て子だから…この戦争が終わったら…次は連合国軍同士で必ず争う……私はまた…必ず戦争に駆り出される…」


勇者は暗い表情で下を俯く


「そうかならばお前も此処で死んだ事にすれば良い」


「え?」


勇者は魔王の提案に思わず間抜けな声を上げてしまう


「死んだ者は戦えんだろう?」


「そうだけど……」


「私は…勇者だから…」


勇者のその言葉を聞いた時魔王の中で何かが切れた

魔王は勇者が情けないと思った。一人で世界を変えうる力を持っているのに…自分を押し殺している勇者が酷く情けないと思った。自分をありのままで生きれるのは強者の特権…勇者はその特権を手に入れられる筈なのに手を伸ばさない勇者に激怒した


「そうか…そうか…お前は自分を押し殺してでも神から与えられたその役目を全うしたいのか…失礼な事を言ったすまん」


「っ!」


「正直私には分からん…お前の事など…自分のやりたい事…自分自身を押し殺して他人の私利私欲を満たすために生きるのか?誰かのために?」


「辞めて……辞めて……辞めてっ…!」


「死ぬまで操り人形として扱われ使えなくなったら捨てられるか処分されるだろうなだがお前はその人生をだから受け入れるのか?」


「うるさいっ……うるさいっ……!」


勇者は頭を抱えながら蚊を殺す様な声を出す


「そしていつか死ぬ時お前はそれを神のせいにするのか?私を選んだ神のせいだ「黙ってっ!!!……もう辞めて……お願いだから……」


勇者はいつものポーカーフェイスを崩し顔を涙で歪ませながら悲痛の声を口から漏らす


「お願い……だから……」


「お前はどうしたいッ!!!勇者ッ!!!」


魔王は勇者の肩を抑えを声を荒げる


「分かんないのっ……自分がどうしたいとか……どう生きたいとか……何も考えないで生きていたから……そう教えられてきたから……」


「ならは探せば良い見つかるまで」


「え…?」


「今から探してからでも遅くない」


「で、でも「でもでは無い逃げてるだけだお前は考える事から」


「逃げてないっ!!!」


勇者が声を荒げて叫ぶ


「いや、逃げているお前は何も考え無いで済む方に逃げている」


「ち、違う」


「逃げたいなら逃げれば良い…だがその先にお前か望む世界は無い……いや…?そうか!お前は考えたく無いのだったな済まない!誰の言いなりになり搾取され続ければ良いお前の望む楽だ!何も考えずとも向こうが勝手に案内してくれるこれ程お前の望むものは無いな!」


「……やだっ…」


「お前は何も考えず殺し続ければ良い楽だろう?ただ敵を殺せば良いだけだ簡単だろう?」


「やだっ…やだっ!……やだっ!!!」


「何がやだなんだ?」


「誰かの為に生きたくないっ!自分の為に生きたいっ!!!」


「勇者らしかぬ発言だな…」


「あ…」


勇者の顔が真っ青になる


「勇者としての役目はどうした?」


「…、わ、私は…、」


「……」


静かに言葉を必死に紡ごうのする勇者を魔王は勇者と対峙していた際の眼で見つめる


「あ、う…、ゆ…、ゆ、勇者じゃ無い…」


「ほう?」


「…勇者……は…死んだ…から…」


「フハッハッハハッハァ!!!………そうだな勇者

は魔王と相打ちになったのだったな済まない勇……いや小娘」


ようやく自分に素直になった勇者を満たす魔王は

高々に笑うがそこに勇者が訂正を入れる


「違う…小娘じゃ無い……エルド…」


「?」


「私の名前はエルドっ!」


エルドが顔を拭き何処か吹っ切れた様な表情で名乗る


「あ、嗚呼…エルドか、私は…タグト・デストロイ…いや…ただのダクトだ…」


勇者の心の切り替えに驚きつつ自身も名を答える


「魔お…間違えた…タグト…覚えた…」


「何処かでまた会おうエルド」


タグトは勇者に背を向け背を歩こうとすると背中を何かに引っ張られる


「エ、エルド?」


背中を引っ張った正体はエルドだった


「着いてく…」


「!!?」


タグトは一瞬理解できずフリーズしてしまう


「エルド…」


「駄目?」


上目遣いでタグトを見つめる


「うっ…」(さっき泣かせてしまった事が引き目に感じているのと見た目がドストライクだから怯んでる)


「女の子泣かして置いて放置?」


「ゴハッ!!!」(致命傷クリティカルヒット!タグトのライフはゼロだ!)


「す、好きにしろ!」


「ありがと……」


エルドは鎧の上から着たローブを深く被り顔を隠す


「ふぐッ!!!(動作と声の可愛さにやられた)」


「………どうしたの?(上目遣い再び←天然)」


「なんだ……これは?(何故ダメージを負っているのか分からない)」


「ダクトって照れ屋?」


「ち、違う!断じて違うっ!」


エルドは微笑みなながら


「タグト…よろしく」


エルドは白くて小さい手を差し出す


「ああよろしく頼むエルド」


タグトは差し出された不器用な少女の子供には似付かわしくない豆だらけで擦り切れ白く小さい手を自身のゴツゴツした少女の手よりも遥かに大きい手で強くそして傷付けないように優しく握り締める二度と離さないと言わんばかりに


_______________________



「ごペぱッ!?」(時間差でダメージが来た)


「タグト、どうしたの?」




                    続く












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