第8話 最後のページ

 国規模のカケラを囲う行為が、露呈したのは、それからしばらくしてだった。2ページ目以降には、残りのカケラの場所が、記される様になったためだ。それに、私を確保している、アメリカ合衆国以外は、次のページにいけないのだ。1ページ目に、署名を特定する以外の意味がないことは、分かりきっていた。各国は、それぞれの思惑を超えて、動かざるを得なくなった。私を確保しているアメリカ合衆国が、一歩先んじてはいるが、カケラは、全部集まらないと意味がないということもわかってきた。


 カケラ収集委員会は、世界政府の様な役割を持たなければならなくなった。なぜかって?そりゃ、国を超えて他の星の生物、それも超知的な生物と交渉する窓口だ。世界の意思を代表する必要があるからだ。結果として、バイランプ大統領の名前で、世界連邦政府樹立準備委員会の設立が宣言された。すぐさま、日本、韓国、EU、イギリス、インドが参加を表明した。明らかに大きなカケラを持っているロシアや中国が、参加を表明するまでには、世界中のほとんどの国が参加することになっていた。本部は政治的な中立を確保する為、スイスのジュネーブにおかれることになった。各国からカケラが持ち込まれ、世界中の言語学者があつめられた。私もジュネーブに移動することになった。その移動についても、ほんと色々あったのだが、長くなるので、端折らせてもらう。新たな地のジュネーブで、カケラ集めと解析は急速に進んだ。


 数年後、解析は最終ページに至った。最終ページには、こう書かれていた。

『銀河連邦加入申込書

銀河連邦に加入するものは、下記に記す三つの条件を守らなければならない。

一つ、銀河連邦に加入する種族は、相互に独立して存在する。

一つ、銀河連邦に加入する種族は、相互に攻撃を加えてならない。

一つ、銀河連邦に加入する種族は、相互に敬わねばならない。


以上の三つを遵守できれば、銀河連邦による加入することができる。もしあなたがたが、銀河連邦に所属する他の種族や所属しない種族に攻撃された場合、銀河連邦に所属する全ての星々により守られることになる。他の種族がその様な行動に見舞われた場合は、銀河連邦の一員として所定の役割を果たさねばならない。

以上を同意する場合は、下記に署名人の氏名を記入のこと。署名され次第、このページが開き、銀河連邦議会へ通じる扉が開かれる。

尚、署名人が記した言語が、銀河連邦内での貴星の公用語として認定され、以後のやりとりは、その公用語により行われる。』


その最終ページと全てが集まったカケラを見て思ったのは、『飾り絵の多い大変美しい壁画だな。』ということだ。これが、銀河連邦の他の星に行くことができるドアになると聞いて、『ああ、昔漫画で見たどこへでもいけるドアのパクリか。』というどうでもいいツッコミを入れたくなった。まあ、この署名が終われば、僕は普通の生活に戻ることができる。なんなら手記を書いても売れるかもしれない。とにかく自由になれる。


『よし!さっさと署名しよう。』と前に進み出た。

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