第3話 少年

「お姉さん、お姉さん大丈夫ですか?」

 夢見心地な中、聞こえてきたのは、そんな声だった。


 言葉を使いを聞くと、それなりに年を重ねた青年が喋っているように思える。しかし、聞こえてきた声色は鈴を転がしたような可愛らしい少年のそれだった。

 言葉使いと声色がミスマッチ過ぎて少し抵抗感があったが、睡魔に犯された脳内では、ある意味心地の良いものである。


 そんな声に対して、 子供が今の時間外にいたら補導されてしまうよ?、と言いながら私は目を覚ました。


「僕は、大丈夫です。それより、お姉さんは大丈夫ですか?辛そうですよ?」

「?!」


 少年の姿を見て、私は息をのんだ。

 白銀の絹糸の束のような透き通った短髪。顔に綺麗に配置された瞳は、朝日を反射した湖水の表面のようだ。首には、日の光を反射する度に様々な色を生み出す降り積もった雪のようなマフラーを巻いている。

『この子は人間じゃない。』

 直感でそう思った。


「お姉さん。今の気持ちを僕に聞かせてくれないかなぁ?もしかしたら、僕が役に立てるかも知れないよ」

 少年は、心の奥深くまで見透すような澄んだ瞳で私にそう微笑み掛けた。

 何故だろう。私は一瞬、この子が年相応の少年でないように思えた。

 そして促されるまま、私は今に至るまでの出来事を少年に少しづつ語った。

 

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