第2話 クリスマス

 少し駅前の太い通りを進み、歩道橋を歩く。

 それにしても、都会の歩道橋は良いものだ。地方の歩道橋とは雲泥の差だ。地方の歩道橋が細い見るだけで橋だと分かる物に対し、こちらの歩道橋は言わば道だ。幅が広く長い、れっきとした道なのだ。


「っあ……」

 隣の駅の駅前に在る中央広場に、『あるもの』があることに気がついた。

 もう、クリスマスか。

 中央広場に在ったのは大きな大きなクリスマスツリー。様々な種類のオーナメントボールやキャンディケーン、ベル等のオーナメントが付けられていた。LEDライトも使われているのだろう。キラキラと光輝いている。


 自分とは関係無いことだな。

 ケーキなんて、一人暮らしで買う余裕なんて無いし、プレゼントをくれる人もいない。実家なんて何年も前に飛び出して行ったんだ、もう赤の他人も同然だろう。


「疲れたなぁ」

 呟いてみると、さらに疲れが増す。ここのところ、あまり寝れていないのだ。

 少し休憩するか、と近くにあるベンチに腰を掛けた。するとどうだろう。足から根を張ったように、そこから一歩も動けない。

 あぁ、寒いなぁ。

 取り敢えず、厚めのコートを着てきたが全然役に立っていない。

 このままでは、凍え死にそうだ。

 でも、その方が楽かなぁ。

 誰にも知られないで眠るように死ねたなら、どれだけ楽だろうか。仕事をしても評価に繋がらない会社で飼い殺されるよりは、ずっと楽だろうな。


 あぁ、もういっそ───

 そう思い、目蓋を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る