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 数日後、カモミールの花が沢山咲く庭に、角の丸い墓石が二つ並んだ。

 両親の友達だった人や、縁のあった人達が足を運び、花束を供えていった。


「あれ、なに?」ココロは訊いた。


 マリオはココロを抱き寄せると、「ステラとジョンのお墓だ」とこたえた。


「お父さんとお母さんは、帰ってきたの?」

「いや」

「じゃあ、あの下にいるの?」

「いると言えばいるが、いないといえば、いない」

「わかんないよ」


 五歳になったココロは、墓参りに訪れる人たちを見て涙ぐんだ。

 お墓に訪れる人々は、一様に悲しみ、涙を流し、長いこと墓石に話しかけたり、祈ったりしていた。去り際には、見守っていたマリオやココロに一声かけて、静かに帰って行った。

 その光景に、いくら幼いとは言ってもココロにはどういう意味があるかわかっていた。


 いい人だった。いいやつだった。優しい人だった。残念だ。惜しい人を亡くした。


 ココロちゃん、元気を出してね。大きくなってね。

 お父さんとお母さんが、きっと天国で見守ってくれているからね。

 そんな言葉を沢山聞いた。

 足を運んだ人達が去ると、ココロはマリオの傍を離れ、供えられた花を抱えて丘から投げ捨てた。マリオはそれに目を眇めたが、咎めはしなかった。


 ココロは、みんながお父さんとお母さんを勝手に死んでしまったことにしたような気がして、それが許せなかったのだ。寂しさとも、怒りとも言えない感情が胸に渦巻き、ココロはぼろぼろと溢れ出てくる涙を、アリソンを顔に押し付けて拭った。

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