チャプター8【断罪3】
チャプター8【断罪3】
克(すぐる)はその姿を消す前にある場所へ向かっていた。
その最中に携帯を取り出しメール画面を開きある人物を呼び出して目的の場所に向かう。
とある公園で、呼び出した人物は待っていた。
「正継(まさつぐ)ッ! テメーだろッ、二人を殺したのはッ!」
克は新宮司正継(しんぐうじまさつぐ)の姿を見るなり彼に駆け寄って勢いで胸倉を両手で掴んだ。
「……な、何の事? 俺は何も……」
「テメーがッ! 『復讐代行』を頼んだんだろーが!」
目を丸くして呆然とする正継を揺さぶって凄むように睨み付ける克。
「ふ……復讐代行って、何……?」
正継は克の視線から逃れるように顔を少しだけ背けた。
「ふざけるなッ! テメーのせいで二人が……ッ?!」
克は右拳を振り上げ正継を殴ろうとしたが、それは急に『誰か』の手によって阻まれた。
「ーーあぁッ?」
どこぞのチンピラみたく凄むように唸る克。視線を後方に向けると背後にはシンが立っていた。
「……ッ。な、なんだアンタ……って、アンタ学校の? ってかこの手を離せよッ!」
克は少し動揺してシンに掴まれている右腕を離そうとするが、
「今、殴ろうとしなかったか?」
「アンタには関係ないだろッ。いい加減離せって!」
冷静な素振りで聞いてくるシンに対し克は少し訝しげに眉をひそめシンの手から無理矢理掴まれている腕を離した。
「ーーガキにしては勘がいいな」
「何ッ?」
うすら笑いを浮かべるシンに克は殊更眉をしかめ、
「……まさかアンタが?」
「さあ、どうだろうな?」
克の問いに、シンは冷ややかな笑みを見せる。
「……ちょ、まさかアンタが復讐だい……ぅぐッ?!」
克は最後まで言葉を発する事が出来なかった。何故ならシンの手が克の口を塞いでいたから。
「お前には、少し黙っていて貰おうか」
シンは克の耳元で静かに囁き次の瞬間、克の左頬を思い切り殴りつけた。
肉体をぶつける鈍い音がして克は衝撃でその場に尻餅をつく。
「……ッてぇ! アンタ一体何なんだよッ?!」
左頬を庇うように手をあて上目遣いでシンを睨みつける克。
「五月蝿い」
「ーーぁがッ!」
シンの静かな一言と共に苦痛の叫びを発する克はシンに爪先で顔を蹴られた。痛さと、シンから滲み出る底知れぬ恐怖に克はなんとか逃げようとしたがそれはシンによって阻まれる。
シンは立ちあがろうとする克を地に抑え付け馬乗りになって克に顔面を間髪入れず数発殴りつける。
「……ぁ、ぅぐ……」
「まだ、大丈夫だろう?」
左右の頬を無造作に殴られた克の視線はもはや定まらずすぐにでも意識を手離しそうに白目をむいている。
そんな状態の彼を、シンは玩具を扱うように胸倉を掴み立ち上がらせ鳩尾に膝蹴り。再び身体を崩れ落としそうになる克の胸倉を掴んだまま顔を殴打。最後には鼻にストレートをかますと克は完全に意識を失いそのまま地面に倒れていった。
「遊びは、これからだ」
シンは愉しげに笑い指をひとつ打ち鳴らす。途端に、時間が戻ったかのように、シンの目の前の光景は克が今まさに正継を殴ろうとして右拳を振り上げている光景に『遡った』。
シンは再び克の手を掴んで彼を止める。そしてまた繰り返されるシンによる克のサンドバック。正継はその光景を、無表情なまま眺めるのだった――
復讐輪舞1巻【学級崩壊編】 伊上申 @amagin
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