断章

 コロニーを出ると、そこは砂漠だった。

 舞い上がる砂。

 生き物が寄り付かない死の地平線。

 過酷な温度環境。

 ここから別のコロニーへ渡るのは並大抵のことではない。

 だから、私はまた未来に書き込んだ。

 道中に、飲んでもいい水と食料となるものが存在する、と。

 おかげで、水にも、食糧にも困らなった。

 いや、食糧として木の実ばかりなのは困りものだった。

 時々いる、虫は口の中で暴れるものの意外と珍味だった。

 問題なのは、化け物たちだ。

 【ホワイトカラー】と言われる人間を捕食する怪物。

 掴まれれば最後、骨の髄まで貪られる。

 またなぜか掴まれると魔法が使えなくなるのも不可解だが致命的な部分だ。

 うまく避けていかないと、私の魔法量でもすべて捌くことはできない。

 時には隠れてやり過ごし、時には中核を担う【ホワイトカラー】を見定めて殺し、混乱している隙に逃げるを繰り返してきた。

 そうこうして、次のコロニーにたどり着いた。

 着いた場所は、コロニー139だった。

 どうやら、最近できたばかりのコロニーのようだ。

 設備は整っており、住んでいる住民も放浪の民と化した私を受け入れてくれた。

 だが、できたばかりのコロニーは防衛局の年齢層が浅い。

 総じて、経験が少ない。

 突発的な状況に対応できない。

 私が住み始めて3カ月の間に死者数は二桁を通り越して3桁に上った。

 そんな中、ある情報が届いた。

 隣のコロニーが陥落した、と。

 大量のたちに飲まれた、と。

 未来を見ていた私からすれば意外に遅いなあ、と感じる程度だった。

 だが、周囲は違った。

 隣のコロニーが陥落したのだ。


 次は、自分たちだ。

 防衛局の備えが足りない。

 人員をもっと増やすべきだ。

 いや、他のコロニーに救援を出すべきだ。

 このコロニーもお終いだ。

 他のコロニーに移った方がいい。

 等々、さまざまだった。

 すでにこのコロニー側は情報が錯綜していて、住民の統率が取れない状況となっていた。

 これは危ない。

 人間は疑心暗鬼になると、秩序なんてあっという間に放り捨てる。

 脱出しなければ。

 ある未来がまた見えたからだ。

 お互いが信じられなくなくなり、来るかもわからない【ホワイトカラー】の恐怖におびえる日々。

 そして【ホワイトカラー】が来る前に、コロニーでは殺し合いが発生した。

 些末なことで殴り合い、疑心にとらわれ言動一つで刺される。

 そんな未来だった。

 もちろん、そんな未来は回避する。

 だから、私はすぐにコロニーを出た。

 次のコロニーを追い求めて。

 どの方角にどのコロニーがあるのかを情報によって手繰り寄せて、だ。

 私は、歩き続けた。

 再び極限環境下の砂漠を。

 別なコロニーを目指して。

 ………それにそろそろ誕生の時も近い。



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