第5章

 あれから4年の月日が流れた。

 私の体は、しなやかで強靭になっていった。

 ゆく先々で【ホワイトカラー】に追われる日々。

 そんな中で生死を分けて戦うことも余儀なくされた。

 魔法ですべては解決しない。

 最後に頼れるのは、己の肉体だ。

 だからこそ、魔法だけでなくナイフの扱いにも精を出していた。

 小回りの利くナイフは便利だ。

 場所を取らず、重くない。

 時にはロックピックとして活用もできた。

 木の実の皮を取るのにも役に立つ。

 枝を切るのにも役に立つ。

 人の動脈を切るのにも役に立つ。

 私は生きるためにどんなことでもやることにした。


 生きる。


 他人から奪ってでも。

 生を全うする。

 それが私の目標になっていた。

 目的なんてない。

 ただの放浪の旅だ。

 そんな生活にも一つ変わったことがあった。

 「おねえちゃん!」

 そういって駆け寄ってくる小さな姿があった。

 妹だ。

 姿は、私とはあまり似ていない。

 私の髪は黒だが、妹は母親似の金色だった。

 体格も華奢な私の体格と比べると丈夫に見える。

 かなりの恵まれた体格と言っていいだろう。

 唯一似ていたのは、瞳の色くらいだった。

 どちらも淡いエメラルドの色だったことくらいだ。

 そこが私たち姉妹の共通点。

 走ってきた妹を受け止める。

 力も強くなり、私自身もよろけてしまう。

 「見てみて! リンゴの木を見つけたから何個か取ってきた!」

 そういって、私に一個渡してきた。

 「へえ。リンゴは育成が難しいから自生するのは珍しいわね。」

 この子があの箱から出たとき悩んだものだ。

 あのいけ好かない男に反抗するため、とはいえリスクが大きすぎた。

 まず泣く。

 そのせいで、襲撃されることもあった。

 得物を逃がすこともあった。

 いつも命の危機にさらされていた。

 それに煩わしかった。

 問題はそれだけじゃない。

 食料となる粉ミルクがないのだ。

 三時間置きにあげなきゃならないのも面倒だった。

 割り切るしかないとはいえ、危機感を感じた私は次のコロニーに一年という長期間過ごすことになった。

 まあ、そこでちょうど働き口があり資金調達を行うことが出きたことは上々だった。

 それに赤子が一緒だと周囲の目線は優しくなった。

 好都合だった。

 そのまま、稼いだお金でこの子の服をいくつか買って次のコロニーへ向かった。

 そのあとは、同じ日々の繰り返しだ。

 次のコロニーについたころには、妹は立つことができるようになっていた。

 そしてこの子が発した第一声は、お姉ちゃんでも、パパ、でもママでもなく、


 『お腹空いた』


 、だった。

 これには、私もびっくりしたし、笑いもした。

 私が、よく口にしていた言葉を発したのだろう。

 それから私の妹はよくしゃべるようになった。

 こういっては何だが、愛情なのかはわかないが愛着といえるものが芽生えはした。

 そうこして、今がある。

 

 

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