第34話 有銘の作戦~part2~

 瑠璃るりの声が部屋中に響いた後、部屋のドアから駆け付けた彼方かなたが入ってきた。

有銘あるめさん! 大丈夫ですか⁉」

 駆けてきた彼方は荒くなった息を整えることもなく有銘を呼ぶ。

「ああ、彼方君か。……今、ようやく終わったところだよ」

 有銘がそう言い、満面の笑みを浮かべる。

 そこに垂れる血液がいささ猟奇的りょうきてきな空気をかもし出してはいるが、その実、彼方はその表情にも言われぬ安心感を得ていた。同時にどくんどくんと脈打つ心臓の鼓動がやけに大きく響いていることにも気がついた。

 実際に起こる前から何か嫌な予感を感じていた。

 その正体がどこから来るものなのか、彼方には形容のしようもなかったが、言葉に出さなくてもヒントはすぐ目の前に示されていた。

「……ごほっ!」

 突然、瑠璃がせき込み始め、口を抑える。

 そこには鮮やかな血がついていた。

「……こ、これは……ごほっ、がはっ!」

 それは少しずつ大きくなっていき、止めようと思っても止まらないほどひどくなっていた。

「……な、何を、した⁉」

 血を吐きながら瑠璃が有銘をにらむ。

「簡単なことだ。さっき私の仲間がベストタイミングで発動させた煙の中に、私達の体質を消すような成分と人の命を奪うのに十分な毒が入っていた。それだけだ」

 口角を上げ自信満々に有銘が語る。

 しかし、そんな有銘の顔色は明らかに青ざめ、手足は小刻こきざみに震えていた。

「……ごほっごほっ……何だと、どうやって」

 苦しむ瑠璃の隣で体を地面に伏せ苦しむ老婆の姿がそこにはあった。

「お前が私たちのことをめて油断している間に、おじさんから話を聞いた情報をもとに水面下で仲間に開発させていたんだ。正直、試験も何もしていないから効くかどうかは一か八かだったが……どうやら賭けに勝ったようだ」

「……っち、く……こんな、ところで……」

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