第31話 有銘の思い
照明の消えた部屋に
まるでスポットライトが当てられているかのように輝く瑠璃はこの場の支配者であった。
「お姉ちゃんも……うん、ほんと、よくやったと思うよ。でも、やっぱり僕には
バカにしたような笑みで
「もういいかね。ったく、腕が疲れちまうよ」
老婆が田所に当てていた銃口を下げ、瑠璃の隣に移動する。
腹を抑える男も顔を
不死身の体質を奪われた時点でもはや
「……で、これから、どうしよっか?」
「とりあえず、
有銘に
「そうだね。それもいいけど……でも、それよりも面白いことを思いついちゃった」
瑠璃がそう言って目を閉じる。
――
彼方の頭の中に直接声が聞こえてくる。まるで頭の中を
――…………はい。
彼方は警戒しながら答える。
その瞬間、彼方の頭から体全体に
瑠璃が目を閉じたまま、口角を上げる。
それを見ていた男と老婆が小さく
――今から君は僕の人形だ。特別に思考だけは出来るようにしてあげるけど、体を動かすことは出来ない。いいかい? 君は心臓が動かなくなるまでお姉ちゃんと田所静江を攻撃し続けるんだ。
――っんな! そんなこと出来るわけないだろ!
――その支配を止める
――僕は絶対にやらない……やらないぞ!
――その強がりがいつまで続くかな? くっくっくっ……。
彼方が頭の中でそう訴え実際に手足を動かそうとしてみるが、瑠璃の言う通り体の自由は
「さあ、始めようか? 君達に彼を救うことが、そして僕を止めることが出来るか、はたまた敗北してこの世界の
瑠璃が両手を左右に伸ばし、胸を広げる。
何も知らない人が見れば何でも受け入れる
表情と光を失った彼方がゆっくりと瑠璃の元に歩き、くるりと身を
「…………ちっ、悪趣味なことを」
ことをいち早く察した有銘が唇を
「彼方君、どうしたの? あーめ」
「……彼方君が、あいつの
田所が目を大きくさせ驚きを
「それって……」
「彼方君にまだ自我が残っていればいいんだけど……もしかしたら、もうそれもないかもしれない」
もし仮に彼方が不死身の体であったならば、強引な手段を取って瑠璃の支配を解くことも可能だったかもしれない。
しかし、今の彼方は普通の人に過ぎない。
有銘が
彼方の体が壊れないように瑠璃の支配を解かなくてはいけない。
その難易度は瑠璃を止めること以上に高かった。
彼方の
太陽が雲に隠れ今にも雨を降らしそうなほど
彼方が有銘に向かって
有銘は
――瑠璃を気絶させ戦闘不能にすればおそらく彼方君も
有銘が必死に考えるが、
「あーめ。彼方君は私が止めておくから、その間にあなたはあいつを何とかしなさい」
彼方の
「いや、しーちゃんは」
「戦闘力は皆無だけど、今の彼方君を止めるくらいの
そう言い目を
「あなた、彼方君のことが好きなんでしょう?」
「っんな⁉」
間違いなく
一瞬にして頬は
明らかな動揺が言葉以上の回答を物語っていた。
「な、なんで、知ってるんだ⁉」
「バカね。彼方君を見るあなたを見れば一目瞭然じゃない」
「…………そうなのか?」
「そうよ。だから」
彼方の右拳を田所が避けて言う。
「諦める前にやることは……分かるわね」
「……うん。分かった。でも、無理はするな」
「分かってるわ。私もここで死ぬつもりはないから」
何ら状況が好転しているわけではなく、絶体絶命であることに変わりはない。
しかし、それでも田所は諦めていなかった。
ここで瑠璃に屈してしまったら取り返しのつかないことになる、という思いからであることは間違いないが、親友としてそれ以上に幼い頃から
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