第28話 作戦開始の第一歩
「――とりあえず
資料に目を通し始めて三時間ほどが経過し、気づけば外はすでに暗くなっていた。
「そうね。っていうか、体質を奪う体質なんて、もうチートじゃない? どんな体質があるかもわからなければ、いくつあるのかも分からない。これでどう戦えばいいってのよ……って、聞いてる、あーめ?」
「ん? ああ、大丈夫、大丈夫。あいつは私が止めるからな」
よしっ、生卵ゲット、と
「その自信はどこから来るのよ? 何か策はあるの?」
「策か、うーん……当たって
「私が
有銘は昼間からぶっ続けでゲームをしており、考えることをしない。
考えなくてもいいからせめて参加だけでもして欲しい、と
「ちなみに訊きますが、田所さんは何か夢で見たりはしませんか?」
彼方が田所に訊く。
「そうね。見たい未来を選ぶことが出来ればいいんだけど……見ることと言えば、今日あーめが何を食べたいと言い出すとか、明日あーめが何を食べたいと言い出すとか、そんな本当にどうでもいいことばっかりだから、クソの役にも立たわないわよね」
「そんなことないだろう! 私が言わなくても用意してくれるんだから、これは
「あんたは黙ってなさい!」
田所がゲームに熱中する有銘を
はーい、と言って有銘が画面に目を戻す。
「うーん……あー……むー……はあー……」
「ふー……ぐ―……うーむ……はあー……」
様々な種類の
近づいてきたと思ったらそこにいきなり大きな壁が建造される。
目的を達成するために越えなくてはいけない壁はまだまだ高く分厚く、多い。
彼方は現状の困難さに直面して
「よし。一区切りついたし、そろそろ」
「遅いわよ! こっちはすでに何時間も前からずっと、あーでもない、こーでもない、って考えてるんだから!」
「ごめんごめん。でも……うん、そろそろだな」
有銘が壁にかけられた時計を確認し
時刻はすでに二〇時を回っており、窓から見える景色は
――――トゥルルルルル、トゥルルルルル……。
すると、それを見計らったかのようなタイミングで有銘のスマートフォンが着信を告げる。
「はい。お疲れ……うん、うん……そうなんだな。ありがとう。でも、そっちは大丈夫か? ……うん、うん……ううん。そこまでで大丈夫だ。無理はするんじゃないぞ。……うん……後は
有銘がスマートフォンから耳を離しこちらを向く。
自信満々に口角を上げる表情からは迷いや悩みといった感情は一切感じられない。
こほん、と一度
「
有銘は机の上に立ち、腰に手を当てる。
「今、私が
彼方達を
しかし、そんな彼方の不安など
「私は今からそこに乗り込んで、長年の
彼方と田所は
そして、頭の
――この人はいつもいつも何もしていなかったと思えば、状況が一変するくらいの重要な情報をどこからか仕入れてきては
田所が一度深い溜息を吐き言う。
「あんたはいつもいつも後出しで物凄い情報を入れてくるんだから。振り回されるこっちの身にもなりなさいよ、ったく、もう」
田所が彼方の気持ちを
「あと、とりあえず机は乗るところじゃないから、今すぐ降りなさい」
「いや、でも」
「降りなさい」
「…………はい。すみませんでした」
低い声で静かに言う田所の声に素直に有銘が従う。
まるで母親と子供のそれであった。
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