第17話 彼方の調査
時刻は一二時三〇分を少し回ったところ。
慣れない場所で待ち合わせ場所を間違えてしまったのかもしれない、と彼方は辺りを見回し確認するが、間違ってはいなかった。
ひとつ息を
彼方はこの体質のため人とあまり関わらないようにしていた。しかし、人という種の生き物がどう考え行動しているのか、という行動心理を推測するのは好きだった。それ
――緊張した
「そこのお若いの?」
「僕ですか?」
「そうじゃ。ちょっと
腰が九〇度に曲がったそのお婆さんは
「は、はい。何でしょう?」
彼方は若干の
「この名前のホテルに行きたいんじゃが、どっちに行けばいいのかの?」
それは最近できたばかりのホテルだった。何でも〝
「ああ、そのホテルだったら――」
そう言って彼方がお婆さんに
「そうなんじゃな。ありがとうよ」
「いえいえ」
「これはお礼じゃ。取っておき」
お婆さんが手に持っていた
「いやいや、
「それが嬉しかったんじゃよ。わしのためと思って、貰っといてくれんかね?」
お婆さんが笑みを浮かべお守りを差し出す。
彼方はひとつ息を吐き、それを受け取る。
「では、ありがとうございます」
「それはこっちのセリフじゃよ」
お婆さんが手を振り去っていく。
その後ろ姿を見ながら、彼方は
――人に感謝されるということがこんなにも嬉しいことだとは。
お守りを背負っていた
「あの……坂田彼方さん、ですか?」
頭上からふと声をかけられる。
「はい」
「遅れてすみません。改めまして、私、
「あなたが一條さんですか?」
「はい。何かありましたか?」
「……いえ、事件の当事者と聞いていたので……まさかこんな若い方だとは思わなかったものですから」
そう言って彼方は失礼とは思うも、顔をまじまじと見る。
一條真美は彼方の言う通り、二〇代、もしくはどう上に見積もっても三〇代前半くらいの
「あら、まあ、ありがとうございます。でも、安心して下さい。私これでもあなたより四回りくらいは上ですので」
そう言い一條が手を口に当て、ふふふ、と笑う。
一條の言葉に彼方は
――僕よりも四回りも上⁉ まるで祖母と孫じゃないか⁉ 姉弟と言われても
そして、その顔もさることながら、手の肌も
――有銘さんに
彼方にはそんな一條に
一條の瞳が
眼球に彼方の姿を映しているのにもかかわらず、その実、眼前に広がるものを見ているのではなく、どこか
――これが
彼方はそう考える。
「話を
「はい。構いませんが……何でしょう?」
一條が
彼方は鞄の中にお守りを入れ、代わりに手帳を取り出す。
そして、そこに書いてある内容を見ながら
「生年月日は?」
「二一××年、一二月五日」
「血液型は?」
「AB型」
「ご主人の名前は?」
「
「好きな小説家は?」
「
「好きな人の好きな体の部位は?」
「……あの……これは何かのアンケートですか?」
「お
「そ、そうなんですか……」
そう言って、少し
「……み、耳です」
「好きな人の好きな仕草は?」
「……本を読んでいる時、
「好きな人との好きな体位は?」
「そ、そんなの言えるわけないじゃないですか!」
一條が顔を真っ赤にさせ
それを見て彼方が
「誠に失礼いたしました。あなたは正真正銘、一條真美さん、ご本人様と判断されました」
「そ、そうですか。それは良かったです。それじゃあ、近くの喫茶店にでも入りましょうか」
「はい」
彼方は鞄の中に手帳を
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