第15話 三人の第一歩
見ただけでお腹いっぱいになりそうな量だが、有銘はそれをものの十分程で
これが日常だった。
今は昼食も食べ終わり、リビングでくつろいでいる。
今日は今後のことについて話し合うはずなのだが、その気配は
「あの、ひとついいですか?」
そんな空気の中、彼方が声を上げる。
「ん? トイレか? トイレだったら扉を出て右手に」
「いや、そんなことじゃなくて……大丈夫なんですか?」
「ん? 何が?」
「早く何かやらないとまたあの人に何かされるんじゃないですか?」
「…………あっ、やば、伝え忘れてた」
その言葉に田所が鋭い視線を送り、それに有銘が冷や汗を流す。
「彼方君、悪い。言い忘れてたけど、そのことは順調に進んでるんだ。だから、そんなに心配しなくてもとりあえずは大丈夫なんだ……でも、最近、君の表情が硬いな、と思っていたら……なるほど、それを心配してくれてたんだな。ありがとう」
そう言って有銘が笑みを浮かべる。
「いえ、そんなことは……」
なぜか有銘に
単に褒められ慣れていないだけなのだろう、と彼方は思っていたが、田所に褒められてもここまで照れることはない。
彼方が有銘を見つめる。
「……ん? どうしたんだ?」
「いえ、別に……」
「そうか? 何か、言いたいことあったら言うんだぞ。
「はい。分かりました」
彼方はこの感情がどこから来るものなのか、まだ自覚していなかった。
「でも、それにしても遅いわね。本当は昨日来る予定だったんでしょう?」
「そう言ってたはずだけど、確かに遅いな……」
――――ピーンポーン。
「おっ、グッドタイミング!」
来訪を告げるベルが鳴り、有銘が玄関へ急ぐ。
そして、足早に戻ってきた有銘が持っていたのは自身の体を隠さんばかりに大きな段ボールであった。
「――よいしょっと」
それをリビングの空いたスペースに置く。
「えっと、これは……」
彼方が戸惑いを隠せない中、田所が口を開く。
「私達の最終的な目的は主に二つ。この体質を治す方法を見つけること。私達と同じような体質を持つ子を
有銘が次々と段ボールを運び、合計八個の段ボールがリビングに運び込まれた。広いリビングを埋め尽くす段ボールに彼方はただただ
「それを知るとっかかりとして、定期的に過去の
「それを知り合いの刑事に頼んで、特別に資料を送ってもらったんだ。
田所の言葉を
それ、私の知り合いに私が頭を下げて頼んだのよ、と田所が軽く
「データで保存されてれば楽だったんだが、何せ昭和初期くらいからの資料を送ってもらったからな……うん、仕方ない」
有銘が段ボールの口を開けていく。
彼方がその中のひとつを覗くと、そこには確かに○○事件等と書かれたファイルが
「……あの、これ、大丈夫なんですか?」
「ん? 全然大丈夫だぞ」
彼方が不安になり訊くが、有銘は事も無げに言う。
段ボールの開封を進めていくと、封印、とか、開けるな危険、とかの言葉が物々しい字体と色で書かれているのに
有銘の
「…………本当に大丈夫なんでしょうか⁉ 僕、知らないうちに前科持ちになるとか、呪いにかかってるとかは嫌ですよ」
「彼方君は心配しなくても大丈夫よ。何かあればあーめに責任取ってもらうから」
「うわっ、しーちゃん、酷い! 人でなし! 鬼! 悪魔! 腹黒! おっぱい星人!」
「黙りなさい! この
段ボールの開封作業もそこそこに有銘と田所が、ガルルル、と互いに
彼方は深い
――乗り越えないといけない障害がまだまだたくさんあるのに、こんな調子で本当に大丈夫なのだろうか……。
この先の行く
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