第14話 三人の日常
その間、彼方が特別何かをすることはなかった。
また有銘から指示が与えられることもなかった。
会議と
――こんな
幸い、この間みたいに接触してくることはなかったが、彼方は若干の
二一××年、六月
太陽光線によって熱せられたアスファルトが
湿度が高くじめじめとした空気がより熱気を
シャツ一枚でもじわりと汗をかいてしまう季節にさしかかっていた。
「なんで一緒に来ないんだ! ここは
「いいえ、まずはこちらの体力を回復させてから、少しずつ削っていく方が安全です」
「そう思わせるのが相手の作戦なのが、どうして分からない!」
「有銘さんこそ、そうやって誘われてるのが、どうして分からないんですか」
「…………あんた達、よく一緒にやれてるわね」
彼方と有銘は今、今後のことを話し合うため
そして、彼方達はその休憩時間にとあるゲームに興じていた。
三人一組になり日本刀や銃、爆弾、戦車、爆撃機など多彩に渡る武器を
「……ああ、もう、やめやめ! 君と一緒だと全然勝てないじゃないか! もうもうもう!」
有銘がコントローラーを投げ、ソファーの背に背中を預ける。
彼方ともう一人の女性が顔を見合わせ、
――いつもこんな調子で大変ですね。
――まあ、もう慣れたわよ。
女性が、よいしょ、と腰を上げる。
「じゃあ、私は昼ご飯を作るわね。あーめは何が食べたい?」
「大大オムライス! 硬め、濃いめ、ニンニクマシマシ、野菜マシマシで!」
小波が目をきらきらと輝かせ
「はいはい。特盛オムライスの卵硬め、味濃いめ、ニンニクマシマシ、シーザーサラダ五〇〇グラムね。彼方君は?」
「僕もオムライスで大丈夫ですよ」
「分かったわ。すぐ作るわね。彼方君、悪いけどテーブル片付けといてくれる? あーめは先にお風呂入ってきなさい。どうせまた四日くらい入ってないんでしょう?」
「あー、
「三日も四日も変わらないわよ。入らないとオムライス食べさせませんからね」
女性が腰に手を当て有銘を
その様はまさに母親と子供のそれであった。
「…………むー、分かったー」
有銘が頬を
その様子を横目で見ながら、女性がひとつ息を吐く。
「田所さんがいないと有銘さんは今頃、廃人になっているでしょうね」
「……あーめに助けられた身として全力で否定したいところだけど…………どうポジティブに考えてもそれが出来ないところが悔しいわね」
そう言って田所と呼ばれた女性が、ふふふ、と笑う。
同じような体質の子がいる、と有銘の言うその子がまさに田所静江であった。
本職は教師であり、高校で生物を教えているという。その
身長は彼方と同じくらいか、もしくはそれよりも高く、腰まで伸びた
一緒に事を進めていく仲間として田所は自身の体質の詳細を彼方に教えてくれた。
田所が持つ体質は夢で翌日起きることの
眠りにつき夢を見なければ未来を見ることが出来ない点、翌日のどの時間のどの出来事が見えるかは未知である点、どれだけ変えようとも結果は決して変わらないという点などその制限は多いが、有銘の目標を果たす上でこれ以上にない強力な仲間であることは間違いなかった。
彼女自身も言うように、彼方同様、有銘に助けられ有銘の手伝いをしようと集まった仲間である。
そんな彼女もまた過去に闇を抱えている女性であることは想像に
以前、
「田所さんはいつからここにいるんですか?」
「んー、もう、かれこれ五年くらいにはなるかしらね」
「結構長いんですね」
「そうね。最初はここまで長くいるつもりじゃなかったんだけど、あーめを放っておくと……ほら、心配でしょ?」
「それ、ここに来てから凄い感じてます」
田所と彼方が笑い合う。
「田所さんはどうして有銘さんを手伝うことになったんですか?」
「どうしてかしらね……まあ、成り行きみたいなものかしら」
田所が洗濯物を
「田所さんも有銘さんに強引に誘われたくちですか?」
「そうよ。あの子、こうと決めたら絶対に曲げない子だから、結局、根負けした感じね」
「じゃあ、僕と同じようなものですね」
再度笑い合う。
「ちなみに、いつ頃、自覚したんですか?」
「……この体質のこと?」
「はい」
その瞬間、田所は
「そうね、確か……あれは小学生の頃だったと思うけど」
「そうなんですか。じゃあ、その時は」
「はいはい! 私の話はここで終わり! 彼方君、乙女には秘密の一つや二つはあるものよ。それくらいミステリアスな方がいいの……それに……聞いても楽しいものじゃないわ……」
彼方の口を
その表情は優しく見守るような
それからというもの、田所に過去のことを訊くことは彼方の中で一種のタブーに
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