第3章
第13話 田所の過去
自分を他の人と違うように産んだ親を
――人と少し違うってだけで、どうして私だけ仲間外れにされなきゃいけないの? こんな体質じゃなければ私にも友達がたくさん出来たのに……どうしてこんな世界のこんな時代に私を産んだの? こんなことなら最初から産まれてこなければよかったのに……。
それは田所が図書館で小説を読んでいる時だった。
「お姉ちゃん、ねえ、お姉ちゃん」
「ん? どうしたの?」
「この本、読んで」
「うん、いいぞ。でも、ここだと迷惑になるから、あっちに行くぞ」
「うん!」
歳に
田所の前に現れた姉弟と思われる少年少女。
――私にもあんな頃があったのかしら?
図書館独特の匂いとページをめくる紙の触感、
現実を生きていながら、今となっては何を思い出すことも出来ない闇の中に田所の意識はあった。
二時間ほど時間を潰し図書館を後にすると、その門の前には
その姉弟は、無論、
二人は何をするわけでもなくただただ立ち暮れる夕焼けを
田所がそんな二人を
すると、後ろから
「お姉さん!」
声をかけたのは有銘だった。
後ろを振り向くと、二人ともが田所をじっと見ていた。
「……わ、私?」
「うん。そうだ」
金髪
その碧眼は見ていたら吸い込まれそうになるほど綺麗でいて、そしてどこか悲しさに満ちていた。
「……な、何かしら?」
若干の戸惑いを感じながら田所が
「この世界はあなたが思うほど
「……!」
「だからね、僕達と一緒にこの世界を変えていこうよ」
「…………!」
一瞬何を言われているのか理解できなかったが、頭で理解した瞬間、驚きで声が出せないとはまさにこのことだ、と田所は実感する。
当時の田所はこの少女と少年が小波有銘と小波瑠璃であることを知らなかった。
当然、初対面であり、一緒に何かを話したわけでも何かをしたわけでもない。
そんな少年少女にいきなり己の中にある
それ
それが田所静江と小波有銘、小波瑠璃の出会いであった。
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