無我夢中
無我夢中。
怒りに任せて動き、相手の足を掬う形で得た好機。
「あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!」
それに無我夢中で飛び込んだ僕はノロストロイを組み伏せて相手の動きを再現しながらこちらの攻撃を一方的に浴びせていく。
魔法に毒に呪い、触れるだけで相手の魔力を奪う術も生命力も奪う術もある。
完全なるゼロ、距離なら……僕の方が!
「この、クソがァァァ!舐めるなよっ!?」
自爆を恐れて魔法も使えず、拳だけで僕を叩きのめそうとするノロストロイの攻撃一つ一つに死にそうになりながらも自分の生命を維持する数多の手練を使いこなしてくらいついて行く。
削れ、削れ、削れ……相手を削るのだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!」
「いい、加減にしろっ」
「ぐふっ!?」
何をされたのか。
己の体を揺らす衝撃を受け、ノロストロイを掴んでいた僕の手が緩んでしまう。
それで、もう駄目だ。
緩んだ僕を掴んだノロストロイはそのまま投げ飛ばして、自由を取り戻して何事もなかったのように立ち上がる。
「想定外だ。斬られてもなお、ここまで粘るか。何が、個人としての能力が低いだ。諜報員どもめ……まったく。どれだけの手札を持っているのだ」
確実に、消耗はさせているだろう。
だが、致命的ではない。
「はぁ、はぁ、……はぁ」
最初で最後の好機。
それを呆気なく失って投げ飛ばされ、地面を転がった僕は息を切らしながら空を見上げる……もう、ダメだ。そもそもとして、僕がルーエたちを心配することが間違いなのだ。
あの子たちを自分が守る、などと……あいつらであればまずは復讐。
僕の死体を目にしても、ノロストロイに倒されることもないだろうし……自殺もしないよう、遥か昔に約束だってしている。
「……んっ」
こんなところで僕が奮起する理由などまったくないのだ。
「クソったれが」
僕は言葉を吐き捨てながらゆっくりと立ち上がり、再び刀を構える。
もう、既に自分が何をしたいのかもわからなかった。
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