諦め
「……ねぇ、コーレン?」
「ん?何?」
酒瓶を片手にベッドの上に腰掛けてボードゲームで遊んでいるネアン、フィーネ、ウルティのことを眺めていた僕の元へとルーエが寄ってきて声をかけてくれる。
「前に私のたちのパーティーを辞めた言っていた話だけどぉ」
そして、ルーエはそのまま少し前に僕が話したことについて語り始める。
「……あぁ、何?」
「ごめんねぇ?私たちが、無能でぇ」
「何を言っているの?無能なのは僕の方でしょ?」
「うぅん。本当に、無能なのは私たちの方だよぉ。私たち三人にあるのは圧倒的な実力としての才覚だけぇ。私たち三人のパーティーだったら、世界の敵として勢力を上げて殺されちゃうよぉ」
「……」
若干あるかも?って思ってしまった僕は口を閉じる。
「ずっと、頼り切りだったぁ」
地味に体を寄せて僕の手の平と自分の手の平を絡めてくるルーエに何も言わずに彼女の言葉へと耳を傾ける。
「あの二人は知らないだろうけどぉ、私はコーレンがいつも周りから誹謗中傷されていることも知っていたぁ。大変だったのは、他においろいろあるよねぇ、いつも雑用して、いつもいつも働いて、毎日のように悪夢にうなされてぇ」
「……」
「それでも、私は何も出来なかった。ずっと、世界が怖かった。どうしても、動けなかった。動き方が知らなかった……昔のように、ずっとコーレンに甘えちゃった」
「別に甘えてくれることは良いよ。ずっと、そうだったし」
「でも、コーレンは辞めたがった」
「……」
「……ようやく、気づいた。私はもっと頑張らなきゃいけないって」
違う。
違うのだ……僕が確かに働きすぎなこともそうで、周りからの言葉に傷ついてないと言っても嘘になる。
でも、結局のところは僕が既に折れちゃっていることが問題なのだ。
駄目駄目なルーエたちも嫌に思ったことなんて、本当に一回もないんだよ、僕は。
「だから、私はもっと頑張る。もっと、色々なことができるようになって、コーレンがいっぱい抱え込んでいることを分けて欲しい。今まで、見ないようにしていたコーレンの弱さ……にも、向き合って。私が戦い方を教えてあげる。だから、言わないで。ずっと、私と一緒にいて欲しい。私は、コーレンのことが好きだから。わかっている、コーレンに辞めたいって言われてから動き出すのは遅いって。ここにまで来てコーレンありきで動いている私が駄目だって。それでも、私は、私は……っ!」
「……ありがと」
「……」
だけど、僕は静かにルーエの言葉へと己の感謝を告げることしか出来ないのであった。
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