二人で
「あぁぁぁぁぁぁぁ」
あいさつ回り。
それに一体、どれだけ時間がかかったのだろうか?多くの場所を巡り、色々な人との挨拶を終えた僕は椅子へと腰掛けながら深々と声を漏らす。
「疲れたぁぁぁぁ」
流石に何十人という人間にあいさつ回りをするのは疲れた。
「だけど、ここは私以外誰もいないからゆっくりして。ほら、紅茶あるから」
「ありがとぉ」
僕が今、お邪魔しているのウルティの為に用意された部屋である。
彼女の部屋の中でくつろぐ僕へとウルティーは紅茶を淹れてくるだけでなく、優しく声までかけてくれる。
ありがたいことだよ、本当に。
「……ふぅ」
ゆっくりと、ちびちび紅茶をすする僕の対面に座るウルティは静かに紅茶を飲んで一息ついている。
「どの人も、さ。コーレン本人には言及せずに周りの話ばっかり……こんなの、酷いよ。みんな言葉を交わしているのはコーレンなのに」
「まぁ、いつものことだから特別に反応するようなことじゃないよ。僕だって気にしていないし」
「それでも、ここまで円滑に物事が回るように裏からのサポートをしているのはコーレンでしょう?たった一人で大量の人に挨拶して回って、簡単にどう動くかの打ち合わせもして、ここまで頑張っているのに、周りから軽んじられるなんて、何かが間違っているよ」
「別に、こんな仕事僕がやる必要もないしね。別に他の人にも頼ればすぐに何とかなる話だし。それなのに一人でこだわっているのは僕の我がままだから」
ウルティが僕のことを評価してくれることは純粋に嬉しいが、それでも僕は大したことなんてしていない。
一人でやっているから大変なのであり、別の人の手を借りればすぐに終わるようなことだ。誇ることではない。
「僕のことなんかよりも具体的に僕たちでどう動くかを決めていこうよ。ウルティは僕たち星霜の風と一緒に行動を共にするでしょう」
「もちろん。でも、その前に待って。私は、コーレンに過剰なまでに過小評価してほしくないの」
過小評価なんてしていない……そもそも、ウルティは、一人ですべてをこなしているではないか。
何の力もない僕が、この程度の雑事で誇れるわけがない。
「ありがとう。ウルティがそう言ってくれて嬉しいよ」
僕はどこかでもこちらのことを気遣ってくれるウルティに感謝の言葉を告げながら立ち上がり、ここら一帯の地図を取りに向かう。
「それじゃあ、決めていこうか」
「……うん」
僕は机の上に地図を広げながらウルティへとそう告げるのだった。
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