第三章

最前線

 カスシージャ王国で龍殺しを果たした僕たち、星霜の風のパーティーはその後、すぐに魔王軍との最前線へとやってきていた。


「随分と早いわね、もう龍を殺したの?」


 人の多い前線基地へと共にやってきたルーエたち三人をVIP用に用意されていた個室へと叩き込んだ僕はその後、ウルティと合流していた。


「まぁね。僕のパーティーメンバーである三人は強いから」


「……そうね。龍と言われたら、私でも勝てないかも」


 僕がウルティと雑談しながら向かっているのはこの最前線基地にいる総司令官である。

 ここにきて、まず最初にやらなければならないのは挨拶周りだ。

 

 ウルティと雑談しながら基地の内部を歩いた僕は指令室へとやってくる。

 そこの扉へと僕はノックを行う。


「入れ」


「失礼します」


 ノックに対して返答が来てから僕は指令室の扉を開ける。


「冒険者である星霜の風。カスシージャ王国に巣喰らう龍の討伐の後、本基地と合流致しました」


 指令室の中へと入った僕は淡々と事実のみを述べていく。


「おぉ!これはこれは、星霜の風の……コーレン殿ではないか」


 指令室の中へと入ってきた僕に対して総司令官が立ち上がってこちらへとその手を差し出してくる。


「お初目にかかります。総司令官殿」


 僕はその手を握り、熱い握手を交わしていく。


「あぁ!もちろん……ところで聞きたいのだが、君以外の三人はしっかりと来ているのだろうか?」


 握手を交わした後、総司令官がすぐに口へと告げたのはルーエたち三人のことである。


「えぇ、もちろんですとも。三人の実力に何の陰りもございません。つい先ほど、龍を無傷で倒したばかりの三人の力をいつでもお見せ出来るでしょう」


「おぉ、それは何とも頼もしい。それでは三人は非常に期待していると伝えてくれ」


「えぇ、もちろんにございます。総司令官殿のお言葉があの三人にどこまで響くかはわかりませんが、それでも伝えておきましょう」


「そ、そうか……よろしく頼むぞ」


「もちろんにございます」


「それでは私はこの辺りで失礼しますね」

 

「あぁ、またよろしく頼む」


 僕は総司令官と簡単に言葉を交わした後に指令室を後にする。


「……失礼な、奴だね。ほんと」


「え?何が?」


 指令室を出て少し離れると共に告げたウルティの言葉に僕は首をかしげる。


「……っ」


「……ふふっ。あいさつ回りで行かなきゃいけない人はまだまだいるからね。手際よく進めていかないと」


 僕は顔を俯かせてしまったるウルティと共に基地の中を巡っていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る