後始末
龍は無事に討伐された。
むしろ、僕の仕事はここからだと言ってもいいだろう。
龍討伐では何もできなかった僕が、この後に輝くのだ……一体、僕は何なのだろうか?
「いやぁ……まさか、ここまで早く倒されるとは思ってみなかったですよ。それに、まさか施設もそのまま残るとは」
「これだけ大規模な施設であれば中にあるものも高価なものばかりでしょう。出来るだけ残しておきましたよ」
そんなことを考える僕はルーエたちの三人を馬車の方に返した後、龍を封印していた施設の責任者であるオレイスと言葉を交わしていた。
「それは……本当に助かります。我々も実はかつかつでして。ここにある施設のものだけでかなりの金額でしょう。中々手に入りずらい希少品もありますし。これは、少々依頼にも色目をつけないとですね」
僕との会話の中でオレイスは自然と報酬の上乗せを口にする。
「何にいたしましょうかね?実はこれから魔王軍と戦う最前線へと自分たちも向かうことになっているんですよ。ですので、あまり何かを受け取ったりする時間はないのですよね。恥ずかしながら」
それに対して僕は一歩引きながら答える。
「あらあら、それは……残念ですね。それではこれででしょうか?一旦、追加報酬の話は後回しにし、一先ずは魔王軍と戦う最前線において我が国がサポートさせていただくというのは。我が国としても仲の良い冒険者の繋がりは欲するところですから」
「おぉ。それはありがたい。魔王という強敵を相手にする中で、知己の中がいるのといないのとでは大いに違いがありますよ。それだけで報酬としては十分ですよ」
これが冒険者たちの世界であればとりあえず金に財宝となってくるが、貴族が何よりも重要視するのは名声。
こういう場では目に見える金銀財宝を欲するよりも相手からのサポートを引き出しておいた方が得だ。
勝手に豪勢にしてくれるし、今回だけでなく色々なところで恩返しをしっかりとしてくれる。
「いえいえ、そういうわけにはいきませんよ。今回の件は本当に我が国が助かったのですから」
だからこそ、貴族には出来るだけ貸しを押し売りするに限る。
「いえいえいえ、我々は当然の依頼をこなしたばかりですから。本来は上乗せなど求めるような話ではござません」
「いえいえいえ、こちらの依頼としてはあくまで龍の討伐であり、施設の保全ではありません。それなのに別途で保全までしてくれたとなればここはやはり金銭を」
「いえいえいえいえ───」
僕はオレイスと意味の分からない会話を交わしながら、龍討伐後の話を行っていくのだった。
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