疑惑

 何事もなく冒険者ギルドから帰ってきた僕とウルティは。


「匂いチェック……身体接触が三回!基本的な距離感覚はまだ許容範囲!」


「……身体接触、身体接触か」


「これは大罪ですねぇ」


 ルーエ、ネアン、フィーネの三人から執拗と言えるまでのチェックを受けていた。

 内容はもちろん、僕とウルティが不必要に近づいていないかというものである。


「なんや、僕はまともに女子と触れることすら許されないのか?別に三回当たるくらい誤差だろ」


「私はぁ……普通にコーレンは私たち以外の女子と言葉を交わしてほしくないよぉ?このまま冒険者なんてやめて四人で自給自足の生活をしたいと今でも願っているわよぉ?幼かったころの延長線上よぉ?」


「ちょ、ちょっ、それは辞めてくれない!?この情勢的に!」


 マジな感じで告げるルーエの言葉に焦りを抱いたウルティが慌てて口を開く。


「流石に冗談だよぉ。私はぁ、コーレンの英雄になりたいという夢までは否定するつもりはないからぁ。満足するまで王都にいるつもりだよぉ」


「……ははは」


 僕はルーエの言葉に対して乾いた笑みを浮かべる……英雄、ねぇ。あの日の夢を、どこまで行けば僕が満足できるのかは、もうわからないね。


「今さら昔に戻るのは純粋に嫌だぞ?便利な生活が一番だ。だからこそ、コーレンがその他の女に汚されることがないよう……」


「フィーネの言う通りだな!」


「はぁー、もうそれだけ心配なら大人しく三人も来ればいいじゃない。なんでコーレンだけに任せているのよ」


 そんな三人の様子に深々とため息を漏らすウルティは至極もっとな意見を告げる。


「無理に決まっているじゃない!私たちは基本的にコミュ障なのよ!コーレンと一緒じゃないと基本的に会話もままならないわ!……ここのメンバー以外に話せる友達なんて私はウルティともう一人くらいなのよ」


「ふっ!フィーネはまだいるから良いじゃないか。僕は本当にこの場にいる五人くらいだ。まともに目を見て会話出来るのはね」


「ふふふ……」


「ルーエは意味深に笑っているけど、酷さで言えばネアン以下よ。普通の日常会話はコーレンとしか無理で、私たち二人とも覚束ないこともあるくらいよ。その他の人間とはコーレンに関する話題しか話せないわ」


「もうやめませんー?この話ぃ」


「まぁ、そういうことなのよ。そんな私たちが会議の場に出席なんて無理に決まっているわ!」


 強さ以外の強みなどまるで持ち合わせていない三人は堂々と胸を張りながら心底情けない発言を行うのだった。

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