出陣

 魔王と戦うため、冒険者ギルドに対して全面的に従う旨を伝えた僕たち星霜の風。

 そんな僕たちにはすぐに依頼書がやってきた。


「……魔王じゃないのか」


 僕たちに頼まれた仕事は魔王軍との戦闘ではなく、アエロポリア王国の隣国であるカスシージャ王国の北部に住まう怪物。

 常にカスシージャ王国の兵士たちによってその身を封印されている巨大な龍の討伐依頼であった。

 カスシージャ王国のたちを対魔王軍に使えるようにするための措置であろう。


「依頼の達成金はどんな感じぃ?」


「んっ。いつも通りの感じだよ。有事が有事ということもあって、気持ち少ないような気もするけど、この情勢下での金額としては異例じゃないかな?」


 依頼金としては大体四人家族が一生涯楽しく暮らせるくらいの金額だ。

 

「まぁ、お金など大した問題ではないだろう?既に使い切れぬほどあるぞ。未だに僕は初めて大きな依頼を完遂した時にもらった高額の依頼金を使い切れてもいない」


「まぁ、私もそうですけどぉ」


「でも、そろそろ私は使い切るわよ?」


「……」


 僕はしっかりと使っている。

 自分の身だしなみを整えるためだったり、使えそうな魔道具を集めるためだったり、世界中の色々な食材を取り寄せるためだったり、結構お金は使っている。

 服とか他の三人が持っている数をすべて足し合わせて五倍にしても届かないくらい持っている。


「というか私たち四人の生活費のほとんどを何故かコーレンが払っちゃているから……本当に私たちがお金を使う機会がないのよね。ほんと、お金は貰って欲しいのだけど」


「いや、別に良いよ。家事類はすべて僕の管轄で、お金もそう……」


「……貰って欲しいのだけどなぁ。お金の使い道が……か、買い物とか私たちそもそも店員さんに話しかけられないから出来ないし」


「そ、それでもいいから。いつか使う機会があるかもしれないから」


 ただでさえ、役に立っていないくせに報酬金は四分割してもらっているのだ。

 家事くらいで身銭を切るくらいでちょうどよい。


「……本当に歪なパーティーよね。貴方たち」

 

 そんな僕たちの様子を端から見ていたウルティが口を開く。


「まぁ、ひとまずは頑張って。私はギルドの方から一足早く魔王と戦うための戦線に行くよう言われているから先に向かっておくわ。龍殺しなんて貴方たちで問題ないでしょうし、ソロに慣れている私が別のパーティーに入ってもうまくいかないでしょうしね。ここで一旦お別れね」


「あぁ、そうか、それじゃあ、また後で」


 僕は一旦別れることになるウルティの言葉に頷き、彼女へと声をかけるのだった。

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