三人は

 庭でのやり取りの後。

 ウルティはヤンデレ娘三人衆から詰められていた。


「なんでぇ?一度、コーレンが口をつけた葉巻をねぶねぶしたのですかぁ?」


「一体、何をしようとしていたのか聞いてみたいものだね。随分と長く吸っていたようだけど」


「そうよ!?う、ウルティってば自分は絶対に男を好きにならない!私たちを裏切ることはないって話していたじゃない!」

 

 その内容とは当然、コーレンが一度吸った葉巻をウルティが再び吸ったことに関することである。


「ち、違うわ!?た、確かにコーレンのことを思っていたけど……それでも、異性としてでは……」


「「「……」」」

 

 ウルティの声は徐々に尻すぼみになっていく。


「と、というかよ!聞いていたなら何とかしてあげてよ!好きなんでしょう?貴方たち!なら、コーレンが貴方たちとの実力のギャップに苦悩し続けているのよ!」


 そして、ウルティは話をすり替えるかのように彼女たち三人へとコーレンに関する率直な感想を叩きつける。

 星霜の風のパーティーを端から見ているものであれば、一度は思うことであろう。

 何故、苦悩し続けるコーレンを、三人は放置し続けているのか。


「嫌よぉ」


「僕からすることはないな。というか、出来ない」


「話をすり替えないでくれる?」


 だが、そんな言葉に対する三人の反応は冷淡だった。


「……お、お前たちは、自分が好き好きって言いながら、コーレンのことを何も考えていないのか!?」


 それに対して、こらえようのない怒りを何故か抱いてしまった怒りを口にする。


「ふふふ……そもそもぉ、コーレンに強さなんて要らないのぉ。だってぇ、私たちが一生かけて守ってあげるしぃ。ふふふ……」


「コーレンは戦うよりも料理とか、もっと別のを見つけた方がよいと僕は思うのだ。だって、どれだけ頑張ってもコーレンは弱いままだし、鍛えているときはいつも辛そうだし……でも、コーレンは試行錯誤しながら料理を作っているときも、僕たちがそれを美味しいと言いながら食べているのを見るときも幸せそうなんだ。強さなんて追い求めずに別のを求めるべきだ。だって、才能がないのだから」


「し、仕方ないじゃない!才能あるんだから、どうしようもないでしょ!?私だって別にここまでの才能は要らなかったわよ!私にはわかるのよ、コーレンがどれだけ鍛えても私たちに及ぶことはないって……私が、どれだけ多くの人を泣かしてきたと思っているの?誰よりもコーレンが傷づいているところを間近で見てきて、それでもなおその努力が報われることは絶対にない!傷つきながら努力して、また挫折して。絶対に報われない。そんなコーレンを見たくないわ」


 それに対する三人の言葉は、どう反応するのが正解なのだろうか?彼女たちが告げることに、一切の間違いはない。

 どれだけ努力しようとも、人は飛べないし、男は子供を孕めないのだ。

 ただ、ウルティは己の中に明確な答えをもっていた。


「……ッ」


 彼女たち三人はどこまで行っても天才であり、凡人であるコーレンとも、そして自分とも考えが合うことがないのだとウルティは理解する。


「……そ、それでも」


 だからこそ、ウルティは言葉を漏らす。


「……なかなか、憧れは捨てられないのよ」


 そして、ウルティは自分の脳裏に浮かぶ本物の天才であった己の姉のことを思い出しながら、言葉を続けるのだった。

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