説明

「まず、私はこれでも一応大貴族の娘、ってことは知っているわね?」


 圧倒的な力で持ってソロで活躍し続けながら多くの功績を積み上げ、何時しか最強の冒険者、基本的にパーティー単位で語られる最強の冒険者は誰かという論争に、ソロで食い込んでくる規格外の天才。

 それほどまでに名声を高める中でも、一切の素性が明らかにされていないミステリアスな女性こそがウルティである。


「流石に友達の自己紹介は忘れないわよぉ?」


 だが、同格に語られることの多い冒険者パーティーとして、ウルティと個人的な交流も持っている僕たちは彼女の素性についても教えられていた。


「それなら良かった。では、これから語る魔王についての情報は市井で語られるふわっとした魔王像ではなく、大国の侯爵家の娘として生まれた私が教えられた内容となるわ」


「……助かります。パーティーへと参加した人もそれを知っていること前提で会話をしておられましたので」


「そうでしょうね。そこまで隠されている話でもないし。それで、本題に入るけど、魔王とはなにか。それを簡潔に言うと、数百年前に大暴れした存在よ。魔族と呼ばれる人ならざる存在を率いて甚大なる被害を出したわ。そして、彼らは本能的に人を敵としている。私たち人類とは決して相容れない。話し合いなんて以ての他ね」


 この世界にエルフや獣人などと言った亜人は存在しない……異世界で会う初の亜人が敵なのか。


「数百年前は勇者と呼ばれていたとある冒険者が魔王との一騎打ちの末、何とか封印することで事なきを得たのだけど……封印は永遠じゃない。復活は確実視されており、私たち人類は魔王の影へと常に怯えながら国家運営をしていたの」


「それでは既に上は魔王と戦う為の戦力を問題なく揃えている、と?」


「……最低限だけね。結局のところ、人間は数百年も我慢できずに同士討ちを始めたから」


 僕の疑問に対してウルティは肩を竦めながら答える。


「だからこそ、私たち王侯貴族は戦力と成り得る冒険者や傭兵の力を欲していて、そもそもとして実は冒険者ギルド自体が国との争いから一歩引いた中で戦力を保持することを目的として作られているから。だから、魔王との戦いで貴方達が駆り出されることも必須だと思うし、私からもお願いしたいわね」


「どうするのぉ?」


「コーレンはどうするのだ?」


「戦う?」


 戦うかどうか、その選択は常にルーエたちは僕へと尋ねてくる。

 

「……戦うほかないでしょう。どうしても、力ある者には責任が宿りますしね」


 そして、僕はいつもの通り、一人で戦うかどうかの選択を下すのだった。

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