帰り

 パーティー会場で突如として出てきた魔王という単語。

 それに対してイマイチ呑み込めていない僕に対して、自然と受け入れていた僕以外のパーティーの参加者。

 ただでさえそこにギャップがあると言うのに、対魔王の戦力として期待される現代最強の冒険者とも言われる星霜の風を代表してきてしまった僕の元にはいつも以上に多くの人が集まってきてしまった。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


 常に人に囲まれ、言葉を交わし、魔王とかいうまるで知らない奴への脅威の話について同調すること数時間。

 ようやく家の方に帰ってこれた僕はもう既にくたくただった。


「おかえりなさぁーいぃ。パーティーの方はなんだってぇ」


「うん。今回の議題は魔王が復活したとかなんとかで、僕たちには魔法に対抗するための戦力として期待しているみたいだね」


 出迎えてくれたルーエと共にリビングの方へとやってきた僕はいつも通り今回のパーティーでの議題、三人と共有する必要のある情報を共有していく。


「魔王ぅー?なんですかぁ?それはぁ」


「魔王?魔なる王ということか?それはこの僕のことではなくて?」


「そんなことよりコーレンから女の匂いがするんだけど、私が認めたのは手の平で優しく触れることだけだよね?明らかにそれ以外からの匂いもあるんだけど。ねぇ?どういうこと?」


 僕の言葉を聞いた三人のうち、二人は僕と同様に魔王とは何かピンと来ていない様子で、フィーネに至っては魔王に関してそもそも一切の興味を抱いていなかった。


「魔王はなんか強い奴らしいよ?伝説に語られているんだって……女の匂いについてはすまない。雰囲気だけじゃなくて、ちゃんと内容でもパーティーの主人公になっちゃって……どうしても、女性とのダンスを断れなかったんだ」


「へぇ……そんな人がいるんですねぇ。あっ、それとコーレンは一度、汚い雌豚に触れた部分を洗ってきてくれるぅー?そのあと、みんなでパーティーしましょうか」


「ふっ!どうやら僕とダンスする時間のようだな!」


「魔王とかどうでもいいし……うぅ、やっぱり私も行けばよかったかなぁ。それでも人前は苦手だしぃ。うぅ……いつもは女の子と触れないで帰ってきてくれるのに……やっぱり、人前に立つのも苦手な私じゃ、嫌われちゃうのかなぁ」


「……僕ってば結構本気で疲れているから、もう寝てていい?」


 いつも通りのヤンデレ具合を見せる三人に対して本当に疲れている僕は弱音を上げる。


「ちょ、ちょっと待ちなさい!?貴方たち……なんで魔王を知らないのよ!?もう少し興味持ちなさいよ!?」


 そんな僕たち四人の会話を部外者として、うちにあそびにきている客人として、客観的な立場に立つソロ冒険者のウルティがツッコミの言葉を上げるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る