魔王
パーティー会場の壇上に並ぶ世界各国の国王陛下。
もういい予感なども何もしない……最悪に最悪が重なる未来しか見えない。
「諸君たちに集まってもらったのは他でもない。君たちの力が借りたかったからだ」
そんなことを考える僕の前でアエロポリア王国の国王陛下が言葉を続ける。
「まずは昔話をしよう。今でも多くの文献によって語り継がれ、市井の間では恐怖の象徴として飾られている、そんな存在がいることはみんな知っていると思う」
……知りませんが?
僕はさもみんな知っているよね?というテンション感で告げられるアエロポリア王国の国王陛下の言葉に首をかしげる。
「その存在の名とは魔王。かつて、人ならざる存在である魔族を率いて我ら人類の生存圏へと侵攻し、その多くを踏みにじった伝説的な存在。今から数百年前に大暴れし、当時に勇者として讃えられていた一人の男によって封印されたとされている存在が、実際に存在することを、一部の王侯貴族の諸君は、重要な役職を持つ諸君は、当然知っているだろう」
魔王……魔王???
えっ……?何その、今では逆にあまりラスボスとして出てくることが少なくなってきてしまった存在が出てくるの?
いきなり魔王なんて言われても困るのだけどぉ。
「本題はここからだ」
僕が困惑しているのをよそにどんどんとアエロポリア王国の国王陛下は話を進めていってしまう。
「端的に言おう。魔王が復活した。かつての勇者に封印されていた魔王が解放され、再び魔族を率いて人類へと挑みに来る」
待って?本当に待って……?なんでそんな一昔前の異世界もののような話の流れになっているの?ここはドラ〇エの世界なの!?
実は魔王がいて、しかもそれが復活しましたとか簡単に受け入れられるようなものじゃないんだけど!?
「だが、それでも我は悲観的になるつもりなどない。我は信じている。決して、我らが魔王に屈することはないと。我ら人類が一丸となって戦えば負けることなどないことをこの私は知っている」
内心でひたすらに動揺しまくっている僕だが、そんな僕とは対照的にこの場にいる国王陛下たち以外の参加者たちは元からある程度の情報を持っていたのか、すんなりと受け入れている。
「故に、ここでこの私は宣言しよう。ここにいる我らすべての国王と共に宣言しよう。ここに、我ら人類が一つとなって魔族に対抗する共同戦線を構築することを。我ら人類全体の結束は、必ずや魔王を跳ねのけるだろう。人類の未来に幸あれ」
そして、話を締めにきたアエロポリア王国の国王陛下が手に持っていたグラスを掲げると、それに合わせて他の国王陛下や周りの参加者たちもそれに続いていく。
「……」
そんな中で、未だ話に置いていかれつつある僕も堂々たる態度でグラスを掲げるのだった。
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