第二章
コーレンの苦悩
コーレンの職務としては雑用である。
四人で暮らす家の家事を一人でこなすのは当然として、星霜の風で受ける依頼の選定をするのもコーレンだ。
そして、星霜の風が採取する一級品の物品。
龍の鱗などと言った希少素材をどう売り、どこに売るか。
それらの交渉を大商会だけではなく、国まで交えて行うのもコーレンだ。
ただの平民上がりとはいえ、それでも人を襲う魔物が闊歩する物騒な世の中では冒険者が持つ影響力とはかなり高く、それに伴って生まれる社会的繋がり。
貴族や王族などとの顔合わせ、交流、会談を行うのもコーレンだ。
どんな国、どんな世界であっても税金から逃れられることはない。
国家が国家である以上、常に国家の中心にあり続ける税金の支払い。
大量の依頼金で日々潤い、高額納税者である星霜の風、全体が納める税金の額の計算を行い、支払いを行うのもコーレンだ。
貰った給与を振り分けるののもコーレンだ。
依頼に必要なものをかき集めるのもコーレンだ。
依頼が上手く行かなかった時に謝罪するのもコーレンだ。
三人の見合いを断るのもコーレンだ。
何をするにしても、戦闘を除くすべての行為がコーレンだ。コーレンしかしていないのだ。
「……ねぇ、いい加減そろそろコーレンくんのことを考えてあげたら?」
「……なぁぜぇ?」
星霜の風の面々と同列に語られることも多いソロの冒険者であるウルティ。
ルーエ、ネアン、フィリアと友達であり、彼女たちの家へと訪れていたウルティーは自分の前にある紅茶のカップを手にとりながら口を開く。
「何故?じゃないわよ。割と本気よ?私は。今、コーレンくんは国から呼び出されて面倒な会話をこなして手続きを行っているんでしょう?……わざわざ客としてやってくる私の紅茶を淹れてから」
ウルティは三人の前で紅茶をすすりながら言葉を続ける。
「私も同じレベルの冒険者だからわかるけど、自分たちがやらなきゃいけない作業って多くて、一人でこなすなんて絶対に無理。それを一人でこなしていて、しかも私と違って雑に処理するのではなくちゃんと丁寧に対応しているのでしょう?何処に行っても、組織の人間がコーレンくんを褒めているわ。仕事が丁寧って。凄いわよねぇ、彼。私が事務作業員として欲しい人材よ」
実力に関しては他を圧倒し、飛びぬけているウルティは一般の冒険者とは違う視点でコーレンのことを評価する。
「純粋に働き過ぎだと思うのだけど、彼。普通に仕事のし過ぎで辞めちゃうじゃない?」
「「「……えっ?」」」
ちなみに戦闘を除く行為すべてをやっているのはコーレンだ。
だが、コーレンは普通に戦闘に関しても何もしていない三人たちと共にし、雑魚なりに頑張ろうと常に奮起している。
「流石に可哀想なんだけど……」
コーレンは誰がどう見ても働き過ぎだった。
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