ネアン

 冒険者。

 それは魔物などと戦ったり、貴族や商人の護衛をしたり、はたまた街の雑用をしたり、街中から寄せられる依頼をこなすなんでも屋のことを指す言葉である。

 そして、群れる動物である人間は冒険者においても人と人で集まって一つのパーティーを作る。


 そして、それは冒険者として活躍する僕も例外ではない───


「昨日、依頼を受けたから今日は休み。でぇ、今日のところ会談の予定はなし。それじゃあ依頼の選定かな。確か物資は……」


 僕は自分の手元にある手帳を見ながらぶつぶつと、ひとりごとを呟きながら自分の考えをまとめていく。


「馬の手配は問題ないな。しかと休ませてもある。稼働も問題な」

 

 だからこそ、僕は何も考えずにトイレの扉のドアを開けてしまう。


「……あっ」


 僕が開けたトイレの扉の先にいたのはズボンとパンツを降ろして便器に腰を下ろす一人の少女であった。


「あっ」


 肩の長さに揃えられた短い黒髪にきれいに輝く紫の瞳、そして泣きぼくろがチャームポイントな美少女。

 そんな少女こと自分と同じ冒険者パーティーであり、後衛担当で自由自在に魔法を操って地形までも変えてしまう大魔導士、ネアンと僕の視線が合う。

 下を脱いでいるせいでそのきれいな足を晒している状態のネアンと。


「す、すまん……」

 

 ───例外ではなく、三人の仲間と共に一つのパーティーを作る僕はその仲間たちと王都の一等地に建てられた居住地で生活していた。

 ちなみにパーティーメンバーは僕を除いて女である。

 男一人に女三人というかなり不味い状況であり、油断しているとラッキースケベが起きてしまうようなところに僕は暮らしているのだ。


「……ねぇ」

  

 完全な失態。

 それを犯してしまった僕は扉も締めずに彼女の方へと視線を送る。


「おやおや……そんなに僕の放尿するところが見たかったかな?」


 僕からの視線を浴びるネアンは手に持っていた魔導書を閉じてこちらへと声をかけてくる。


 じょぼじょぼじょぼじょぼじょぼ


 普通に聞こえてくるネアンの放尿音。

 

「同じ仲間として信頼しているコーレンが相手でも流石に放尿まで見せるのは少し恥ずかしいな。それでも君にはすべてをさらけ出していたいんだ。そのまま見ていってくれ」


 それでもなお平然とした様子を見せるネアンは僕への言葉を続ける。


「そ、それとも……何だろうか?一緒にするか?」


「頼むから扉を締めさせてくれないか?魔法で僕の体を完全に硬直させないで?」


 扉を今すぐにでも締めたい僕なのだが、ネアンの魔法によって自分の体を縛られているせいで少しも動くことが出来なかった。


「コーレンには私の全てを見て欲しいんだ」


 パンツもズボンも降ろした状態で下半身を露出した状態で便器に座って放尿音を垂れ流しながらも冷静な顔を崩さず告げるネアン。


「……ごめん、本当に解いて?焦ったのか魔法が暴発してまばたきも出来なくなったせいで目が死にそう」


 そんな彼女に僕は本気で懇願する……色々なものが限界を迎えそうだった。まずは目だ。


「……えっ?あぁ!?ごめん!今すぐ解除する!」


 僕の言葉を聞いたネアンは少しの困惑の後に慌てて立ち上がって、こちらへと駆け寄ってこようとする。


「おぉい!?立つなよ!?まだ出しているんだから飛びち……あぁー」


 それを僕は慌てて制止するが……もう遅かった。あまりにも。


「はぁうわぁぁぁぁぁぁあああああああああああ」


 便器から完全に立ち上がってしまったことで、おっしこを優しく受け止めてくれる便器から離れてしまったネアン。

 ゆえに、彼女はそのまま自分のおしっこをそのまま床にぶちまけ、己のパンツとズボンも一緒に汚してしまう。


「……はぁー」


 彼女の白く綺麗な足を伝っていく黄色い液体を見ながら深々とため息を吐く……君が着ているそのパンツもズボンも高い良い奴なのにぃ。

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