第4話・自〇配信・英雄の怒号(2)

なんだかんだ四話目です。

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スレで流れの配信について盛り上がっているころ。


「はぁー、やっぱり死ぬの怖いなぁ。でも生きててもしょうがないしな。」


誰も見に来てないと思ってそう独り言ちる。ふと配信画面が横目に移る。



・・・コメ欄・・・


:おい!馬鹿なことやってねぇーで!さっさと地上に戻れ!


:落ち着けよ。話聞いてあげるから。とりあえず地上戻ろうぜ?な?


:今なら釣り配信でした!でどうにかなるから!


:命無駄にすんなよ。生きたくても生きれない奴なんか何人もいるんだぞ?


:死ぬのが怖いのは当然だ。君の考えがわかるとは言わないが、

 これからきっといいことあるって!


:俺らが迎えに行くから、そこでじっとしておけよ!<七星>


:え!?七星!?よかったじゃん!!!早速いいことあった!!!

 だから。。。ね?


・・・コメ欄(終)・・・


なんとか励まそうと、考え直させようとしてくる人たちと七星の助けるというコメントを見ながらより悩まされる俺。やっぱり一人じゃないのかもと思い始め、階段を上り、地上へ戻ろとした矢先。。。


ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!


大きな地鳴りが発生して、階段から足を滑らせてしまった。

階段から転げ落ち、痛みに耐えながら体を起こす。しかし、目線を上げると地鳴りの元凶が目の前にいた。羽の生えた巨大なトカゲ。そう。ドラゴンだ。


・・・コメ欄・・・


:やばい!ドラゴンだ!なんで!?


:イレギュラーだ!深層から上がってきたのか!?


:にげろ!階段上がろうとしたってことは死ぬ気はもうないんだろ!!!


:とりあえず!あと10分ほどで着く!!!何とか!それまで耐えてくれ!<七星>


:七星!!!頼む!!!間に合ってくれ!!!


・・・コメ欄(終)・・・


俺にはコメントを読めるほどの余裕はもうなくなっていた。まるで金縛りにあったみたいに、その場から動けない。どうにか、必死に足が動いてくれることを願うが、

どれだけ願おうが、媚びようが、都合よく回避できるわけもなく明確な死へのカウントダウンがイメージとなって頭に流れる。まるで時間がゆっくりになったような錯覚さえ覚え、生きるのをあきらめてしまいそうになる。


「もう、だめかもな。。。自〇配信なんてしようとしたから、天罰が下ったのかも。

 自業自得だな。でもやっぱり死ぬのは怖いな。。。さようなら。。。」


そう心の内を吐露しながら、せめて苦しまないように死にたいとおもい、目を閉じる。・・・しかし、待てど暮らせど痛みどころかドラゴンの足音、息遣いすら感じられない。恐る恐る目を開けてみると、そこには色がなくなり灰色一色になった世界が広がっていた。まるで白黒でとられた写真のように一切の色がなく、そればかりか目の前のドラゴン、阿鼻叫喚に包まれていたコメント欄が時が止まったように一切動かない。いや、「時が止まったように」ではなく実際に「止まっていた」。


混乱し、軽いパニックに陥っていた俺の耳にある声が届いてきた。


「お前はそれでいいのか?このまま、お前を貶めるようなことをした地上のやつや、

 お前の家族を奪ったダンジョン。今の状態に陥っているお前をどうにか助けようと

 しているやつ。それを全て諦めてほんとにお前は死を受け入れていいのか?

 ほんとにそれがお前の望んだことなのか?」


突如聞こえてきた声に驚きはしたが、不思議なことに誰なのか、どこから話しかけてきたのかなどの疑問は沸いてこない。今、俺の胸の奥にあるのは、問いに対する答えだけ。理不尽な目にあった怒り、悲しみ、自分の弱さに対する呆れ、苛立ち。それが胸の奥から這い上がってきて、無意識のうちに叫んでいた。


「い。。。いいわけ。。。いいわけねぇだろうが!!!!おい!

 俺に力をよこせ!!!!」


力とは何か、なぜこの謎の人物に力を求めているか。自分でもわからない。しかし、なぜだか確信があった。


「ふはははは!!!その心意気やよし!よかろう。ならばわしの名前を呼べ。

 今のお前さんならわしの名前がわかるはずじゃ。わしの牙、爪で、あの竜風情を

 引き裂き、食い殺してやろう!!!」


そう、何者かが吠えた時、頭の中に召喚するための文言と名が刻まれた。

俺は、この理不尽を覆すためにそれを唱えた。


「季は秋、守護するは西。その牙、爪で我が前の邪悪を退け、

 幸をもたらさんとするものよ。我が呼びかけに答え、我が前に顕現せよ。

 四神獣が一体、白虎。名は、白秋(はくしゅう)!」


そう言葉を唱えた時、洞窟のようなダンジョンに降るはずのない巨大な雷とともに

一体の白い虎が現れた。甲高い遠吠えを上げた後、こちらに振り返り、人間のような表情を浮かべて白虎、いや、白秋は言った。


「ようやくわしを呼び出せるようになったか。随分と待たせてくれるものよのう。」


「ようやく?どういう意味だ?」


「おぬし、ちとさっきからキャラ変わっておらんか?まぁ、よい。

 おぬしの質問に答えるなら、わしはおぬしが生まれた時からおぬしと共におる。

 そんなことは後じゃ、先にトカゲ風情をかみ殺してからゆっくり話そうぞ。

 もうすぐしたら、時止めも終わるじゃろう。」


「わかった。」


そう返事すると、今まで灰色だった景色に色が戻り、目の前のドラゴンもコメント欄も動き始めた。


~~~コメ欄~~~


:ふぇ?いつの間にか移動してる?つかその白い虎なに?


:なにがおこったんや?


:地鳴りで、階段から転げ落ちて、ドラゴンから逃げろ!ってさけんでたのに

 いつの間にか移動してるし、よくわからない白い虎がいるし、夢でも見てんのか?


:記憶が飛んだのか?いやありえない。


:とにかく!何でもいいからにげろ!その魔物は見たことないが、

 ドラゴンと敵対してるっぽいし、今のうちに逃げろ!!!!


:そうそう!今のうちに逃げたほうがいい!


:その虎。。。どこかで。。。まさか!?流の名前といい、

 雷をまとう白い虎といい、四葉家の先祖返りか!?<七星>


:四葉家?先祖返り?どういうことだ?


~~~コメ欄(終)~~~


色々と俺の知らないことを知っていそうな七星のリーダーと、コメント欄のパニックについては後で話をさせてもらうとして、まずは目の前の敵を倒さなくては。


「え~、コメント欄の皆さんにはあとで説明するのと七星のリーダーらしき方に

 後でいろいろ説明してもらうとして、白秋どうすればいい?」


「わしが、一人で戦っても赤子の手をひねるぐらい簡単じゃ。おぬしは、わしに指示を出せばよい。わしはその指示に従いおぬしから必要な分の魔力を吸って相手と戦うからの。それと今のおぬしならドラゴンくらい余裕だぞ?今回はわしが戦うがの。

なまった体をたたき起こさねばならぬからな。」


「いやいや、さっきまでビビり散らかしてた人間が伝説の神獣呼び出したからって、

 生身一人で勝てるわきゃねーだろ。とりあえず、白秋。嚙み殺せ。」



「承った!おぉ!おぉ!羽の生えたちょっとでかいトカゲ風情がわしに対して睨みを

 きかしておるわ。そればかりか威嚇までしてきておるだと?全くやれやれじゃな。

 身の程をわきまえろよ貴様。。。白雷爪(はくらいそう)」


よほどドラゴンに威嚇と睨まれたのが腹に据えかねたのか、底冷えするような低い声で怒気をあらわにし、白い雷をまとった爪で相手を切り裂く。肉の焦げるようなにおいと、耳をつんざくような雷の音。ドラゴンの断末魔を最後にドラゴンは息絶えた。


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