第14話 特殊クエスト開始
翌日、授業が終わって放課後になった。
教科書をカバンに入れていると、そっと肩を叩かれる。
「愛曽山さん、ゴールデンウィークはご家族とどこかに行くの?」
メガネ美人の委員長が尋ねてきた。
「今年はどこにも行かないよ。両親はドバイにいるんだけど、そっちに行くのはちょっと面倒だと思って」
「あ……そうなんだね」
委員長と少し世間話をし、また休み明けに、と挨拶をして別れた。
気づけば明日からゴールデンウィークに突入だ。
(学校で友達はできたけど、溶け込むのにまだ時間かかりそうだなぁ〜)
学校指定のカバンをぶらぶらさせながら愛美は歩く。
美人なメガネ委員長のグループに入れてもらったが、居心地がいいと感じるほどではないので、今後も仲良くしていきたいと思う。
高校では清楚キャラでいきたいから、ちょっと大人しく話している。
(アホ山アホ美と呼ばれてなるものか……!)
実は、起業家の親を持つセレブ女子と思われており、クラスメイトたちが距離をつかみかねていることに愛美は気づいていなかった。
家に帰って部屋着に着替え、RLO2にログインする。
(頑張ってもっと有名になろう!)
ログインが完了すると、大教会の中庭だ。
神父がいつもの笑顔を向けてくれた。
「おお、見習い聖女アイミよ。今日も一日頑張りましょう」
「はい、頑張りましょう!」
愛美は神父に挨拶を済ませて、大教会の衣装部屋に移動する。
大きな鏡があるので、新しい装備を着た自分を確認してニマニマと笑みを浮かべ、「清楚だわぁ〜」と自分を褒め称えた。
黒髪ボブカット、白いリボン、見習い聖女の装備。
黙って杖を持っていれば、可愛い聖職者に見える。
回ったり、ポーズを取ったりして満足すると、今後の方針について考えた。
(登録者数四千人だもんね。配信は超楽しいけど、もっと目立たないとズッ友が気づかないよね、きっと)
RLO2の動画配信ジャンルは多岐に渡っている。
RLO1から有名な古参配信者がやはり強く、登録者数が数十万のチャンネルはザラだ。人気配信者は運営のPR動画に出たりしていてうらやましい。
(やっぱり目立つには転職かな〜)
情報を調べない人である愛美も、ニッケに色々と教わった。
見習い聖女から上級職へ転職したプレイヤーは世界でまだ一人もいない。
愛美は大教会から出て、広場にある巨大なホワイトトパーズのような真っ白のモノリスを見上げた。
(ジョブモノリスって言うんだよね)
新発見された上級職ジョブの横に、プレイヤーの名前が刻まれている。
世界で新発見された職業に転職した人の名前が永遠に刻まれる、というものだ。
『上侍/プレイヤー:まるるか』
『聖騎士/プレイヤー:Nick』
『大魔導師/プレイヤー:Doon』
『魔剣士/プレイヤー:さわお姉さま』
『一ツ星コック/プレイヤー:道場サブロウ』……。
現在、見つかっている上級職は九十九個だ。
(色んな職業があるんだね)
愛美はここに自分の名前が刻まれることを想像して、気分が高揚してきた。
目立ちたがり屋の基質があるので、こういうところに名前が乗るのは全く問題ない。むしろ大歓迎だ。
(世界初。見習い聖女から上級職になったら絶対に注目されるな)
「転職について神父さんに聞いてみよう」
ジョブモノリスから大教会へ視線を向け、中庭にいる神父の元へ移動した。
話しかけると、神父は慈愛に満ちた笑みを浮かべて両手を広げた。
「転職についてですか。おお、見習い聖女アイミよ。あなたは見習い聖女の装備をしておりますね。大教会からの依頼を受ける資格があるようです」
「おっ、クエストですか?」
「受けていただけますか?」
神父の顔の横にログが出現した。
――特殊クエスト発生!
――『見習い聖女、伝説のはじまり2/街外れの墓地を浄化しよう』
「やった! 神父さん、ありがとうございます。お受けいたします」
はいのボタンを押して了承する。
「夜間になると、アンデッドモンスターが湧いてしまうと住民から相談を受けておりまして……。巨大都市ホープシティの外れにある共同墓地へ向かってください」
「わかりました」
マップが出てきて、共同墓地に星マークがついた。
ホープシティはとにかく広い。
共同墓地も大きく、ちょっとしたダンジョンくらいありそうだ。
(レベル7でクリアできるクエストなのかな?)
「くれぐれも一人で向かってくださいね。パーティーを組んでいると、なぜか亡霊たちが消えてしまうそうです。見習い聖女のあなたならどうにかしてくださると信じております」
「え? 散々、お供を連れてけって言ってたのにまたソロですか?」
「見習い聖女アイミに女神ナリアーナ様の加護があらんことを!」
「答える気ゼロですやん」
何度かツッコミを入れるが神父は壊れたAIのごとく同じ言葉を繰り返した。
愛美はあきらめて地図を確認し、とりあえずレベルは上げずに行ってみることにした。どうせ所持金0Gだ。デスペナルティは怖くない。
(アイテムボックスにはMPポーションが五個あるし、どうにかなるかな?)
「亡霊と深く言葉を交わさないよう、気をつけてください」
神父が心配そうに忠告してくるが愛美は聞いていなかった。
「やっぱりレベル上げたほうがいいかな〜? 今の魔力なら300ダメージくらい【自動治癒(オートヒール)】でどうにかなりそうな気がするけど。うーん……、ま、いっか!」
愛美は「いってきます」と神父に行って、大神殿から出た。
十分ほどで、巨大都市ホープシティの共同墓地に到着する。
ライブ配信をオンにし、特殊クエストを開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます