第11話 流浪のスケルトン再び


「わっはっは! 無敵〜!」


 愛美は流浪のスケルトンの通常攻撃を受け、高らかに笑った。


「【自動治癒(オートヒール)】の前では無力なのです!」


 調子に乗りまくった愛美は杖で防御体勢を取りながら敵を挑発する。


 ――68ダメージ


 敵の攻撃が入りHPバーが一瞬で減るが、【自動治癒(オートヒール)】がHPバーを押し返す。


 初めて見た視聴者たちは、意味がわからず混乱していた。


『え? ちょ、え?』

『どゆこと? 回復してる?』

『速攻で死ぬと思ったのに』

『ドヤ顔が腹立つけど可愛い』


 ――70ダメージ


 ダメージを受けても死なないドヤ顔の見習い聖女。


『昨日情報が出回ったユニークスキルじゃね?』

『【自動治癒(オートヒール)】か?!』

『だれか詳しく』

『春風のたよりの情報サイトに行け。リンク貼っとく』

『ユニークスキルやべええええ! ゾンビやんけ!』

『魔力とMPが高いからできる芸当じゃないか? 普通の職業だと回復速度が遅くて無価値になりそうなユニークスキル』


 コメント欄が盛り上がり、ユニークスキル持ちの見習い聖女がいると、愛美のライブ配信が拡散されていく。


「【治癒(ヒール)】! 【自動治癒(オートヒール)】!」


 ――165ダメージ


 流浪のスケルトンに【治癒(ヒール)】ダメージが入る。


 新しい杖のおかげで回復量が増えていた。


 さらに【自動治癒(オートヒール)】で徐々にHPが削れていく。


 敵と自分に【自動治癒(オートヒール)】をかけているのでMP消費も倍になっているが、まだ余裕があった。


(MPポーションは飲まなくても大丈夫だね)


『いやいやいや、165ダメージ???』

『どんな回復量??』

『レベル4って言ってなかった?』

『スケさんのHPめっちゃ減ってる!』


 コメントが飛び交い、愛美は防御体勢のまま、HPが減る流浪のスケルトンを集中して見つめる。


 HPが半分になると、流浪のスケルトンから不穏な空気が発せられた。


『ああああっ! スケさんのスキル来た!』

『俺もこれでやられたんだよ!』

『さすがにあかんやろ』

『よけて!』


 コメントが荒れる。


「……【パワースラッシュ】」


 流浪のスケルトンのロングソードが青白い光の軌跡を残しながら、愛美の首を狙って振り抜かれた。


「ここっ! 【治癒(ヒール)】!」


 攻撃が当たる瞬間、完璧なタイミングで愛美が回復を入れる。


 0付近まで減ったHPが一気に持ち直した。


「よし! 練習したかいがありました!」


『は?』

『パワースラッシュに合わせて回復入れた?』

『攻略組が編み出した0回復だ!』

『どんなセンスよwww』

『かなりシビアな判定のはずだぞ』

『結構怖いんだよなこれ。度胸あるな〜!』

『↑とか言ってるけど成功したことないヤツ』


 流浪のスケルトンはスキルを使った反動で隙ができた。


 愛美は見逃さずに、流浪のスケルトンに向かって【治癒(ヒール)】を連打する。


 ――159ダメージ


 ――163ダメージ


 ――166ダメージ


「……【パワースラッシュ】」

「【治癒(ヒール)】!」


 続いて二度目のパワースラッシュが放たれたが、0回復を成功させ、死なずに耐えた。


 流浪のスケルトンは恨めしげにカタカタと顎を鳴らす。


「……」


 愛美は【自動治癒(オートヒール)】で減っていく敵のHPを見つめる。


(もうちょっと……あと二割!)


 流浪のスケルトンは愛美に攻撃を浴びせてくる。


 愛美は三度目の【パワースラッシュ】も0回復でどうにか耐えしのぎ、【自動治癒(オートヒール)】で敵のHPバーが削れ切るのを待った。


 四度目のスキルが放たれることはなく、敵のHPが0になり、敵が光の粒子になって消えた。


 ――流浪のスケルトンを倒しました!


 ――特殊クエストクリア! 報酬がもらえます。神父に話しかけよう!


「やりました! 倒しましたよ!」


 愛美は練習の成果が出て嬉しくなり、その場でぴょんぴょんと跳んだ。

 黒髪と白リボンも一緒に揺れる。


『おめでとう!!!!』


 気づけば同接は100まで増え、コメント欄はおめでとうの言葉で溢れた。


 愛美がお礼を言って頭を下げる。


 ――レベルアップ! 見習い聖女がレベル7になりました。


 ――新しいスキル【プロテクト】を覚えました!


「レベルも上がりました。これでレベル7です。あ〜……HP5のままかぁ」


 愛美はステータス画面を見ながら眉尻を下げた。


 今回もHPと体力は上がらず、魔力と精神が増えただけだった。


――――――――――

名前:アイミ

職業:見習い聖女 Lv7(3アップ!)

HP:5/5

MP:130/940(510アップ!)

腕力:1

体力:1

敏捷:1 

器用:5

魔力:190(75アップ!)

精神:80(30アップ!)

スキル:【治癒(ヒール)】【祈り】【レスト】【プロテクト】New!

【小さな祝福Ⅲ】

ユニークスキル:【自動治癒(オートヒール)】

称号:【無手の博愛者】

装備:回復術士の杖、初心のローブ

所持金:3000G

――――――――――


 ステータスは愛美しか見えない。


 ニッケに、知らない人には見せるなとアドバイスをもらったので、ステータスを教えてほしいというコメントには丁寧にお断りを入れた。


「HPは5です。MPですか? うーん、それくらいならいいのかな? えっと、MPは940になりました!」


『レベル7で940? バグじゃね?w』

『もうツッコミどころしかないwwww』

『HP5、MP940、体力1ww バランスを圧倒的に無視したステータスw』

『HPMPバーのバランス悪すぎて瀕死にしか見えない件』

『瀕死見習い聖女爆誕☆』

『回復ゴリ押しの夢仕様!!!』

『RLO2配信界に大型新人現る』


 愛美の回復ゾンビ戦法にコメントは大盛り上がりだ。


 明るくて楽しそうな愛美の話し方にも多くの視聴者が魅了されていた。

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