第25話 妹②
男の人は、女の人の裸を見ると興奮する。
巫女のお姉さん――
『裸……裸……』
『どうしたんだね、ハミちゃん』
自分の胸を押さえてブツブツ呟いていると、津々羽さんが顔をのぞきこんできた。
『……でも、あたしまだほら、胸も小さいし』
『そんなことないって、あの頃よりだいぶ大きくなって……もう十分収穫の時期だよっ!』
あの頃というのは多分、あたしが初めてお兄ちゃんのことを好きだと話した時――中学生になったばかりの頃だ。
あれから二年、中学三年生になったあたしは、たしかに少しだけ胸が大きくなっている。
収穫時期というのはよくわからないが、お兄ちゃんから見てどうなのかは気になった。
他にも、お兄ちゃんのことでの悩みや疑問は次々とわいて、その度に神社へ来ては津々羽さんに相談していた。
あたしは、お兄ちゃんがあたしのことをどう思っているか知りたかった。そう言ったら、『大好きな妹でしょー』と返される。そうじゃなくて、あたしが知りたいのは異性としてだ。
『そもそもお兄ちゃん、女の子に興味ないのかな?』
あたしのふと出た疑問に、津々羽さんは『ヤヤ君も男の子なんだから今日見張るでしょー』と笑いながら教えてくれたのだ。
――男の人は、女の人の裸を見ると興奮する。
『裸って、家族でもですか?』
『どうだろうねー』
『逆は……えっと津々羽さんは、どうなんです? 弟がいるって』
『んー、逆か。逆もまあ、興奮するけど……でも弟はないかな』
念を押すように、『ないない』と津々羽さんがケラケラ笑う。
あたしは、その『ない』にがっくりとうなだれた。
『でもさ、ハミちゃんとヤヤ君は違うかもしれないから』
『そう……ですか?』
『だって、ハミちゃんはヤヤ君の裸見たらどう? なんにも感じない?』
『えっ、お兄ちゃんの裸って』
お兄ちゃんの裸なんて、最後に見たのはいつだろうか。
『顔赤いよ? ほら、でしょ? 裸想像しただけで。ハミちゃんはすっかり女の子だなぁ』
『えええぇ!? でしょじゃないですよ! だ、だってあたし……』
まだお兄ちゃんの裸なんて、想像していなかった。
少し、お兄ちゃんとの思い出を振り返っていただけ。どうやらあたしは、お兄ちゃんのことを少し意識するだけでも、顔を赤くしてしまうらしい。
こんなあたしがお兄ちゃんに裸を見せるようになるまでには、それはそれは長い訓練が必要だったのだ。
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