第11話 やっぱり待ち受けていたのは、裸
どこで聞きつけたのか追加で増えた女子たちにはお帰り願って、結局残ったのは俺を嫌っているお嬢様の
この二人が諦めない以上、俺はどちらかを選ばなくてはいけないわけだが――。
「三次審査ってことで、お試し交際期間にしてもらうのはどうかな? とりあえず二人ともと付き合ってみて」
さっきから二股だの七股だのふざけたことを言っていた黒沢――ではなくて、まさか浮津さんの発言だった。
「浮津さん!? なに言ってんの――」
「んーダメかな? このままだと、とりあえずでも審査して、どちらかが選ばれることになって……結果的に二人ともあんまり納得できる形にならないと思うんですよ。だったらもう、付き合う相手を決めるんだし、実際に付き合ってみて決めるのが一番じゃないかなって」
浮津さんはそう言うと、「どうかな
「どうって……でも、それお試しって言うけど、結局、佐志路部が私と浮津で二股するってことよね? そんなの……」
「そうですけどー。でもわたしも花澄ちゃんも、学生時代の恋愛経験のために応募したわけだよね?」
「それは、そうだけど」
「だったら、誠実さとかよりも、とりあえずお試しでも二人とも付き合える方がよくないです?」
浮津さんは、まるでもめ事を起こしたクラスメイトを諭すみたいに、優しい口調で蓮華院を説得した。
「そう、ね。……他に彼女を募集している手頃な相手がいるとも思えないし……」
「いたら、そっちにも立候補するんだ?」
「そ、それは! ……そうよ」
「ともかく、花澄ちゃんも賛成ってことだから。そういうことで、佐志路部君。二人とも三次審査で、お試し交際でお願いね」
そんなこんなで、なぜか二人とのお試し交際が決まってしまった。
――え、俺の意見は?
◆◇◆◇◆◇
始まりから終わりまで、流されるままだった。
しかも、俺の意思を表明できたとして、あの場で平和的に全員が納得する答えを出せたとも思えない。
情けない。
――情けないが、妹よ。俺は兄として、初めて恋人というものをつくって(お試しだけど)帰ってきたぞ。
だいぶ遅くなってしまい、部活帰りの妹とどちらが先に家へつくかというところだったが、リビングに妹の影はない。
俺はいそいそと自室に戻り、着替えてからキッチンへ戻った。
なにか冷たい飲み物でも――。
「あ、お兄ちゃん、おかえり」
「お、おう……ただいま」
裸の妹がいた。
「……シャワー浴びてたのか」
「うん、練習帰りだからね。汗かいて」
「タオルで、ちゃんと体拭けよ」
「はーいっ」
そう言いながら、妹は裸体の首にかけたタオルで、ごしごしと頭をぬぐった。
「麦茶、いるよな?」
「いれてくれるのー? ありがとー、いるー」
昨日と同様で、まるで自然なやり取りだった。
でも、妹は全裸だ。
恋人ができた実感というのは皆無だし、当たり前のように女慣れというのもしていないが――今日一日で、異常事態に感覚が麻痺した気がする。
妹のこの異常な振る舞いに、今ならもっと食い込んで聞けるんじゃないか。
「な、なあ
「どったのお兄ちゃん?」
俺は妹の名前を呼んで、真っ直ぐに顔を見る。
視線を少しでも下げれば、肌色に溢れている。ダメだ、目だけを見て話せ。
「……なんで、裸なの?」
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