第3話 どちらが大事かは、裸
グループチャットでクラスメイトの女子達に彼女募集中を表明する――(俺本人じゃなくて、友人の
もちろん妹の方が重大だけれども、目下の問題は明らかに前者だ。
黒沢を止められず、しかもあろうことか俺の彼女を立候補する人間が現れたという。そんなわけがない。冗談も休み休み言え。
(俺の彼女になりたがるやつがクラスの女子にいるなんて……ないない。わかりやすい嘘を……いや、そうか、嘘なのか!)
黒沢も本気で悪意を持って俺に嫌がらせするようなやつではない。こいつは顔も良いし、性格も良い。そんなことは中学からの付き合いがある俺にはよくわかっている。
――ようするに、本当に冗談なのだ。
募集もしていないし、立候補した女子なんてのもいない。すべて、黒沢が俺を元気づけようとやった、一芝居かなにかなのだろう。
正直、センスは疑うが。
まあ、実際バカらしくなって多少気もまぎれた。素直に感謝するには――少々、笑えないタイプの冗談だったが、気持ちだけでも感謝しておく。
「黒沢、ありがとうな」
「お、なんだ。
「……まあ、次からはもう少し別の方法でやってほしいけど」
疲れた俺の顔に、黒沢は爽やかな笑みで「安心しろ、昼休みまでには何人も集まっているから選び放題だ!」と訳のわからないことを言い席へ戻っていった。
(なんだあいつ、まだあの冗談を続けるつもりなのか……)
滑ったネタというのは、実は中々引っ込めるタイミングが難しいのだろう。
しかしさすがに昼休みまで引っ張られると俺も困るな――とため息をついた。
◆◇◆◇◆◇
授業合間の休憩時間、やはりどうも昨日のことで俺の集中力は乱れたままだ。
誰かに相談でもできれば――だが、妹が裸族になったと話せるような相手も思いつかない。
とりあえず一度顔を洗って来よう。俺はお手洗いでバシャバシャと顔を洗って戻って来ると、教室の前で
明るい髪色の女子に呼び止められた。
「ねえ、佐志路部」
「……
いくら校則のゆるい私立だからといって、あきらかに目立つ白い髪。
ただこのプラチナブロンドはどうにも
「あれ、本当なの?」
「……あれってなんです?」
白く長い髪、整ったモデルのような容姿。しかし彼女が一番よく知られていることは、あの有名企業蓮華院グループの社長娘だということだろう。親がなんだ、そんなこと子供には関係ない――と思っていた中学時代は、俺も軽率に(俺なりのフレンドリーだったんだが)接していたこともあったけれど、どうやらなにか逆鱗に触れたらしく、彼女のボディーガードらしい黒服連中に身柄を拘束されかけたことがある。
以来全力で謝罪し、今後は距離感を改めると約束したのだ。だから、高校に上がってからもしばしば話しかけられるが、その度に俺はビクビクと震えながら、可能な限り礼節を重んじながら受け答えしていた。
ちなみに、蓮華院の方は俺の身柄拘束未遂を手違いだったとむしろ謝ってきた。
――手違いってなんだ。一歩間違っていれば、俺はあのまま消されていただろう。
「そのしゃべり方」
「……は、はい?」
「もういい」
丁寧な対応をしていたはずが、ギロリとにらまれてしまった。
美人って、真顔だと怖いよね。
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