第10話 無気力、シルキーと一緒に寝ます。

 明日から【王立フリーデン学園】の受験だ。僕は今日も今日とて復習にいそしんでいた。

 当たり前のことだけど、受験で魔法を使用することは禁止されている。だから、筆記試験に出題される問題範囲を、記憶魔法で保管して取り出すことは受験中にできない。       

 何とも面倒くさい…だけどそれがルールだから僕は守るよ。卑怯な手段で合格しても父さんや母さん…シルキーが悲しむ。

 何より、嫌われるかもしれない……だから、そんなことは絶対にしない。


 正々堂々と合格してみせる。


 勉強を終えたら【天より愛されし楽園レンちゃんズガーデン】に転移魔法で向かった。なぜ、僕がそこに向かったのかと言うと、所謂いわゆる……願掛けをするためだ。

 何だか、自分の水魔法でお花に水やりをすると心が洗われて不安が無くなるんだ。だから、受験の不安を無くすために【天より愛されし楽園】に来て大切な花たちに水やりをした。

 ……僕だって不安になることはあるよ?剣とか魔法に対する絶対的な強さには自信はあるけど、それと比べて勉強はまだまだだからね。念には念、油断禁物。


 水やりをしてリラックスをしたら、また転移魔法で自室に戻って、夕食の時間まで試験範囲を復習した。

 そして、夕食の時間になると父さんと母さんに合格ができるように応援をもらった。


「レン…頑張って! 母さん応援しているわ!」

「レン、お前なら合格できる……自分を信じろ!」

「うん。ありがとう……父さん、母さん」



 その後は、明日の入学試験に必要なものを準備して僕はベットに座った。すると、コンコンッと扉をノックされてある人が入って来た。


「レン、寝ましょうか」


 入って来たのはシルキーだ。窓から月の光に照らされているシルキーの姿はとても綺麗だ。着ている服も露出を許さないメイド服ではなく、普通に露出をしている白いネグリジェを着ていた。

 メイド服だとおっぱいが目立たないけど、実はシルキーのおっぱいはすごく大きい。僕のお顔包むぐらいある自慢のおっぱいだ。


「うん、一緒に寝よ」


 僕がベットの中に入ると続いてシルキーもベットに入った。

 僕が3歳の頃から毎日こうしてシルキーと一緒に寝ているんだ。小さな頃の記憶だから曖昧だけど、父さんと母さんと川の字に寝ているときに、悲しそうな声が聞こえ目が覚めてしまった時のことだ。

 僕が声のした方へ向かうとシルキーの寝室から聞こえていたようだ。僕がドアをこっそりと開けると『うぅ……どうして私がレンを……レンをっ……!』とシルキーが僕に背中を向けてベッドの上で泣いているのが見えた。

 僕はとても悲しい気持ちになった。シルキーが泣いているんだと思うと……胸が痛くなる。

 だから、僕はシルキーを助けたいって思って、部屋の中に入ってすぐに、駆け足をしてベッドを這い上がった。

 そして、背中を向けて横に寝ているシルキーの背中に思いっきり抱き着いた。


「シルキー…だいじょうぶだよ。だから…なかないで」

「……!レンっ!」


 シルキーはすごい速度で振り返り、僕を強く抱き締めた。しかも、シルキーのおっぱいに引き寄せられるように。

 物凄くあったかい…だけど、シルキーを笑顔にしなきゃ。泣き顔なんて見たくない。

 僕は一生懸命にシルキーの背中に腕を伸ばして、小さな手で一シルキーの背中をなでなでした。

 シルキーが元気になるように、シルキーが悲しまないように、シルキーが幸せになるように…そう思いを込めながらなでなでした。

 そして、同時に僕はある感情を抱いた。


 ―――シルキーを助けたい、シルキーのことが大好きだということを。


 そんなことがあってから僕は毎日、シルキーと一緒に寝ている。シルキーがまた泣いて悲しんでるなんて絶対の絶対に嫌だ。


 この世で何よりも僕の”大切”な一人なのだから。


「シルキー」

「ふふ…今日はいつにも増して甘えん坊ですね……」


 僕がシルキーのおっぱいに顔を埋めるように抱き着くとシルキーは頭を優しく撫でてくれる。

 だって、昔のことを思い出したら寂しくなってきたんだもん。甘えるのは当然。あぁ…落ち着く……ポカポカしてすごく温かい…ずっとこの時間が続けばいいのになぁ……。

 でも……それはダメだ。僕はまだ、シルキーのことを助けられていない。だから、そんな自分勝手なことを望んではいけない。

 それに、シルキーが何に苦しんで、何に悲しんでいるのか…未だに僕はわかっていない。

 シルキーに聞くと、すごく悲しくて辛そうな顔をしていたから……追及はできない。

 だけどいつか、僕は必ずシルキーを苦しめる元凶を突き止めて必ず殺してやる。


 ―――シルキーを助けるんだ。


 もし…シルキーを助けることができたら、「今も大好きだよ」って僕の思いを伝えたい。

 一生僕の傍にいて欲しいから…シルキーには。

 そう気持ちを強くしていると、気持ち良くて眠たくなってきた。

 もうちょっとシルキーを抱き締めていたいけど…寝ようかな。明日の受験は代わりの領主探しをするのにとっても重要だからね。

 僕はシルキーのおっぱいに埋めていた顔を上げて大好きなシルキーの顔を見上げる。


「シルキー…僕もう寝るね」

「レン…寝る前に少しいいですか?」


 あれ? 寝ようと思ったんだけど、どうしたんだろう?

 もしかして…シルキーの苦しんでいる理由について教えてくれるのかな。

 あっ…やっと僕が力になれる時が来たんだ。


 教えて、シルキー。君が苦しんでいる理由を。


「どうしたのシルキー?」

「明日向かう、学園への馬車に私も乗せてもらえないでしょうか?」


 ……予想していたことと全然違った。何だか期待して損したよ…シルキーの力になれると思ったのに。僕は少しだけ不貞腐れた。

 だけど、どうしてシルキーは学園に行きたいのかな?何か用事があるのだろうか。

 まぁいっか。どんな用事か分かんないけどシルキーのことだからきっと大丈夫だろう。僕はシルキーのことを信じている。

 それに、ソフィー姉さんとシルキーとみんなで一緒に行ったらすごく楽しい。


「うん、いいよ」

「ありがとうございます…レン」


 あぁ…もう限界……睡魔に耐えられそうにない。まだまだシルキーとお話しをしたいけど…できそうにないな。明日の入学試験のためにもう寝ようかな?


「う~ん…おやすみなさいシルキー」

「おやすみなさい…レン」


 僕シルキーの女神のような微笑みで見つめられながら眠りについた。




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