第3話 姉の本音が書かれた日記帳

 この春に中三になった。千真と妹の冬美と同じクラスになる。


 小学生以来の距離感だ。また、三人でワイワイできるのか。


 でも、私はやはり千真の事が好きだ。この恋は禁じられた恋になる予感だ。


 それは妹の冬美も千真の事が好きだからだ。この三角関係は妹の目を隠してキスをする恋に例えられる。


 陰キャラの妹と違って積極的な私は自然と千真と付き合う事になった。T大に入学して素粒子物理学の研究をしたいと語る千真はカッコいい男子と言えて、女子の中でも人気が高かった。


 そう、嫉妬する妹の冬美に気配りをしての恋だ。キスの甘ささえ罪悪感があった。


 だから、時々思う、妹の居ない世界が有ったらどうなるかを想像していた。


 ホント、ダメな姉だ、それでも千真の事が好きであった。


 中三の夏、私と千真は受験勉強の合間に総合プールに行く事にした。簡単に言えばデートである。夏の暑さはプールにぴったりで楽しむことができそうだ。


「今日は勉強の事を忘れて楽しみましょう」

「ああ、唯には期待している」


 私が白のビキニ姿で千真の前に現れると。千真は照れた様子で私を見ている。


 どうやら、期待に応えたらしい。ここは更なるサービスだ。両腕を寄せて胸の谷間を作ると千真の視線を感じる。


 これが恋人同士のスキンシップなのだ。二人の間のジグソーパズルは完成していた。


 しかし、不意に妹の冬美の事を思い出す。私が悪い子でなければ三人で楽しめたはずだ。


 そして、中三の冬。


 駅前の複合施設にスキーソングが流れる。千真とのデートで街に来ている。


 しかし、今日は失敗して妹の冬美が一緒についてきてしまった。妹がいる動揺を抑えようと何時も以上に明るくふるまう。


「今日は楽しそうだな、冬美が居るからか?」


 違う逆だ、でも、本音は言えない。


「えぇ、久しぶりに三人でお出かけですもの」


 私は嘘つきだ。本当は妹を殺してしまいたい気分なのに……。


 それでも、明るく元気な唯を演じなければならない。


 洋服に雑貨、色々買って帰る途中の事である。私は千真と腕を組む。


「寒いのか?」


 千真の問いに私は小さく頷く。そうよ、心が寒いの、それは誰よりも強い独占欲であった。妹の冬美は独りで寂しそうにしている。千真を独占している現状に、私は心の中でガッツポーズをする。


 そんな自分が少しイヤになるが、これが私の本音だ。この醜い姉に対して従順な妹は今日のお出かけを楽しんだらしい。


 ホント、ヘドが出る。


 私は今日の気持ちを日記帳に残す事にした。

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