第496話 【驚天動地】世界を蝕む大樹
可愛らしい少女の姿を取った……いや、乗っ取った【魔王】。
殺意に溢れる様々な『植生』を繰り出すおれたちの敵は、しかしおれたち『勇者』
それはさながら……幾本もの長大な
依代とされ
わさわさと縦横に動く枝葉を、こちらを威嚇するように振り回し。
回避はおろか移動さえもを諦めるかのように、大地にしっかりと根を下ろし。
この地に溢れる魔力を吸い上げ我が物にしようと、敵対する
「防御と回復に特化させて、完全に迎撃主体に切り替えたってことね!」
「僕の【水】も…………くぅ、……あの腕っていうか、枝が
『……攻撃が大味になったかと思い近づけば、あちこちからトゲがめっちゃ飛んでくる。魔法障壁を食い破るよう改良されてるみたいだし……近付くのも容易じゃないよ』
「
作戦会議とばかりに顔を突き合わせていたおれたちだったが、お話もそこそこに飛び退き散開せざるをえない。
距離を置けばレーザーのような魔力砲(おそらく根から吸収した魔力を圧縮しただけのもの)が飛んでくるし、中距離では巨大なうちわのような枝葉が何本も振るわれてくるし、近距離では艦船の
戦闘スタイルを大きく変えた【魔王】は、以前にも増して殺意満々の攻撃を仕掛けてくる。
とにもかくにも、足を止めるのはマズい。
おれ(たち)やラニは運動力に自信あるけど、純粋な後衛火力であるミルさんは――水魔法の制御に専念するためにも――そこまで動き回れるわけではない。
……なので。
現在の状況を鑑みまして……現パーティー編成から、構成と作戦を変更する。
「【『
「オッケー任せろ、ミルさんはおれが護る。【
「惚れてもいいですか?」
「「いいですとも!」」
「わぁい」
相手が動かないのなら、
恐らく最重要ダメージディーラーとなるミルさんを主軸に据えて、
敵の攻撃が遠距離主体なのであれば、たとえ【魔王】の攻撃だろうと防ぎきってみせる。
また……
ひとたび体内に潜り込まれたら相当エグい絵面になるだろう、魔法障壁さえ食い破るという
ミルさんからの塩水魔法に気を引かれれば、勇者印のなんかすごい剣でバッサリやられる。
足元をちょろちょろと引っ掻き回すラニに注意を割けば、大ダメージの塩水魔法が叩き込まれる……という二面作戦だ。
『…………ッ、ええい……鬱陶しい!』
『ははっ! そう邪険にしてくれるなよメイルス。キミとボクとの仲だろうに』
『ならば大人しく……抵抗を止めて貰えると嬉しいのだがね』
『お断りだよ。『ヒトは諦めが悪い』って、教えただろ……ッ!』
『ぐ、ゥ!? おのれ……!』
赤黒い大樹に接近して翔び回り、絶えず放たれる対空砲火をものともせず掻い潜り、かつて【魔王】と渡り合った【天幻】の勇者の剣閃が疾る。
度重なる水魔法への迎撃に酷使され、末端から枯死が始まっていた巨大な
『植生』を司る本来の姿を現した……並外れた耐久力と回復力を誇る【魔王】の
『どうしたよメイルス。随分と大雑把じゃないか。……
『…………ッ、好き勝手言ってくれる』
『まぁボクらとしてはヤり易いけどね。その鬱陶しい枝葉を一本一本伐り落として、丸裸のただの柱にに仕立て上げて……その
『させると……思うのかね、ッ!』
『決まってる。やるんだよ、ボクが』
ガチペドロリコンツリー……もとい、現在の【魔王】メイルスの姿。
それを簡潔に表すと……『
腰後ろというか背中から
上と左右に伸びた幹は細く細かく分かれていき、多種多様な攻撃および防御のための枝や葉を形成し。
下に伸びた幹は次第に太さを増していき、ついには地面に突き刺さり、大地深くの魔力を吸い上げる。
つまりは……『【魔王】の大樹』と『依代と化した少女』との間は、ごく短いとはいえ幹で繋がれているだけであり。
幸いというべきだろうか、
(まだだよノワ。まだメイルスは
(……っ、…………ほんとに【魔王】……あっちの『樹』に移ってくれるの!?)
(断言は出来ないけど、可能性はある。アレは
(…………信じてるよ、ラニ)
(応えてみせるよ、ノワ)
『……良いだろう。君がそこまで言うのなら……その挑発に乗ってやろうではないか』
『全力で来なよ。ボクたちもまた、全身全霊で相手してやる。……今度こそ、逃がさない』
『こちらの台詞だ。……私の悲願を果たすためにも、君達は排除せねばなるまい』
互いに睨み合い、互いを殴り合い、両者の間にいかにも『最終決戦』といった空気が広がりつつあるが……しかしおれはおれで、やらなければならないことがある。
ほしいもの全部手に入れて一発逆転を狙う、おれたちの『よくばり作戦』最終段階。
それこそ……【魔王】本体と依代との分断、および
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