第486話 【恒常配信】来週もまた見て下さい



 おれは男だった頃から――まぁ今でもココロはおとこですが――ずーっと気にはなっていたんだ。


 女の子が海とかプールとかで泳ぐときに着る、ようするに『水着』。

 男性用の、ゆったりとしたハーフパンツ状の水着なんかとは異なり……特にセパレートタイプの、それこそ『ビキニ』とか呼ばれるタイプの刺激的きわまりないあの格好は、もうぶっちゃけほぼ『下着』なんじゃないのかと。


 そのほぼ下着姿にも等しい格好で、多くの人々でごった返す場に出るなんて……女の子はなんてココロが強いのだろうと。

 もしおれが女の子だったら、下着のような格好を衆目の目に晒すことに対し、抵抗を感じないものなのだろうか……と。




 ……まぁ、冷静に考えてですね。

 恥ずかしいに決まってるじゃないかと。




『ありがとう』『【¥10,000】』『ありがとう雀神』『ありがとう』『あーーっあーーーっえっちです』『大丈夫なのこれwwwww』『【¥11,081】ありがとうのわめでぃあ』『うーーーんwwwこれは健全wwwww』『のわめでぃあってえっちなんだぁ!』『スク水ロリ魔王だって四つん這い配信してましたし……』『ありがとうのわめでぃあ』『えっちです><』『【¥4,545】懲りないなぁわかめちゃんは』『【¥1,000】のわめでぃあえっち記念』『これはこれで』



「ふぐゥゥゥゥゥゥゥ……!!」




 この状況に至るまでにおれの脳内で試行されていた演算式は、以下の通りである。


 まず、女の子は下着のような格好の水着で水遊びに行ける。

 ↓

 下着パンツじゃないなら、つまり水着であるならば恥ずかしくない。

 ↓

 ならばセパレートタイプよりも布面積の多い水着であれば、もっと恥ずかしくない。

 ↓

 よって……スク水だけ着ていても、べつに恥ずかしくない。証明完了。Q.E.D.




 ところがどうだ。

 この……ぴっちりと肌に張り付く、伸縮性に富んだ濃紺色の布地は。


 胸まわりや腰まわり、おしりやおまたのあたりまでをぴっちりと覆い……まるで何も身に纏っていないかのような錯覚さえ感じさせる、この頼りなさは。



 誰ですか、下着パンツじゃなければ恥ずかしくないとか言いやがったやつは。おしおきしてやる。

 ええ、ええ…………クッッッソ恥ずかしいのでございますが!!




「ま、まんぞく……しましたかっ! 視聴者のみなさんは、これで、まんぞくなんですかッッ!!」


「はわわわわわわうわうわう」



 ぶっちゃけ恥ずかしい。めっちゃ恥ずかしい。穴があったら入りたいし、上着があったら羽織りたいくらい恥ずかしい。……何言ってるか自分でもよくわかんなくなってきたぞ。


 まぁ……だが、そのおかげで。おれが一人自爆して、恥ずかしい思いをしたおかげで。

 いつもよりも、多分に『省エネ』感の散見される『生わかめ』であっても……視聴者の皆さんに満足していただくことができたのだ。



 元々われわれ『のわめでぃあ』構成員は、今週いっぱい(というか今日まで)執り行われていた『にじキャラ実在仮想アンリアル林間学校』の運営に携わっていたため『お疲れモード』だったわけで。

 特に幼年組のなつめちゃん朽羅くちらちゃんはそれが顕著だったため、局長ストップを掛けておやすみさせているわけで。


 じゃあ止めればよかったじゃんとも言われそうだが、それこそ『にじキャラ』さん(と視聴者さん)のお陰でチャンネル登録者数がググーンと伸びたこともあり、つまりはここが大事な正念場でもあったわけで。



 そんなこんなで『あまり疲れない内容で』『それでいて満足してもらえる』配信とは何があるかと考えた結果……前々から根気強くアピールされていた視聴者さんのご要望を、限定的とはいえ叶えて差し上げようかと思った次第でございまして。

 なおスク水はラニちゃんがいつの間にか用意してくれてました。通販サイトのロゴ入り段ボールに入ってました。サイズはピッタリでした。ラニちゃんちょっとあとでしようね。




「……ではッ! 皆さんの目標も達成できたことですしッ! 九月二十五日『生わかめ』、そろそろおわかれの時間が近づいて参りましたッ!!」


「わ、わわうわうわう」



『半ギレwwwww』『いかないで』『わかめちゃんがおキレにwww』『おまたえっち』『そんな格好でスゴまれても……』『格好がえっち』『【¥10,000】いかないで』『ありがとうのわめでぃあ』『【¥10,000】けしからんチャンネルですね?フォローします』『ゆっくり休んで』『いかないで、もうすこしでいけそう』『【¥1,919】あと600分だけまって』『どうしたのわかめちゃんご機嫌ななめじゃん』『せやな……マジで休んでもろて』




 時間的にも良い頃合いだろう。むしろいつもより結構足が出てしまっている。

 まぁもっとも……こうしてすぐにクロージングできることも織り込んだ上で、自爆することを決めたわけなのだが。


 『にじキャラ』さんのイベントは終わったが、もちろんわれわれ『のわめでぃあ』の活動は終わるわけがない。

 これまで付いて来てくれた視聴者さんを、そして今回新しく注目してくれた視聴者さんを楽しませるために――生きる活力と楽しみを与え続けるために――精力的に活動していかなければならないのだ。


 ……まぁ、なんだかんだいって楽しいからね。苦じゃないし。




「今日はちょっと、だれかさんが粘ったおかげで夜遅くになっちゃいましたが……今後の『のわめでぃあ』活動方針としましてですね、前回ご好評いただきました『せっかくとりっぷ』のですね、第二弾を計画中でして。その行き先抽選をですね、近々また行いますので。……いや、本当思った以上に麻雀で時間飛んでっちゃったので……」


「わ、わうっ! みなさまの、ご期待に沿う行き先がえらべるよう、霧衣きりえめも気合いをいれて参りますゆえ!」


「はいっ! やっぱりウチの霧衣きりえちゃんはとてもかわいい! ……なので、また後日つぶやいたーで告知させていただきますが……恐らく来週の『生わかめ』にて、かわいい霧衣きりえちゃんのカッコいい見せ場を披露させていただく形になるかと思いますので」


「おまかせくださいませ、っ!」


「ヴッ!! …………というわけで、また来週もこの時間、よる九時からお待ちしております! それでは……『NOWAえぬおーだぶるえーITあいてぃーNOWAえぬおーだぶるえーITあいてぃー、こちらはインターネット放送局『のわめでぃあ』です。以上で今回の放送を終了いたします』。……それではまた! ヴィーャばいばい!」


「に、にーゃぁっ!」


「ア゛ッ!!」




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