第462話 【企画初日】ベテランチームワーク
(見て見てラニ! セラちゃんがほら岩に座って『ちょこん』ってア゛ア゛ア゛ア゛ちっちゃくてがわいいいい!!)
(ノワねえねえノワほら! ソリスちゃんとベルちゃんのおみあしがホラ!! アッ、もうちょっと! もーちょっとたくし上げてもろて)
(あっ、ティーさまきたティーさま! アッおみあしが!! アッ、アッ、ティーさまのおみあし!! もーちょっとたくし上げてもろて)
(見てごらんノワ、ハデスくんとエルくんガン見してるよ。Ⅰ期の女の子って露出控えめっていうか、ロングスカート多いもんね。いやーいやー、やっぱ足だけ入れる水辺用意しといてよかったわ)
(やっぱさすがだよなおれら)
鈴木本部長さんからのお言葉であったように、今日われわれはあくまで施設を提供しただけの立場でありまして。
もちろん
なんてったって……今回おれたちは出演するわけじゃないのだから。
だからこそこうして、既に全世界公開されている大御所チームのお祭りイベントを……特等席から俯瞰することができるわけだな。
(これはこれは……とーってもキャラがよく表れてる配置ですね。解釈一致ってやつだよ)
(ウィルムくんとオギュレくんの『悪役コンビ』が真面目にテントを立ててて、ティーちゃんたち女の子たち四人組はかしましくハシャいでて、エルくんとハデスくんの『宿敵コンビ』は仲良く鼻の下伸ばしてる……と。なるほど解釈一致)
(エルヴィオさんとか……パーティーの四分の三が美少女だもんな。冒険中でも絶対ムフフなことになってるって)
(ノワノワ、ちょーっと武力介入しちゃう? こう……『とらぶる』な感じで)
(んー、今回はやめとこ。ライブ中継だし。ティーさまの『ぽろり』とか『ちら』とか全世界公開しちゃった日には……)
(あー……しぬね、エルくん。ごめん、さすがに軽率だったわ)
(いいのよ。ぶっちゃけおれも本音いうと『とらぶる』なとこ見たかったし)
(ふふふふふ、そちもえっちよのう)
もともと企画趣旨としては、『ゆるーくキャンプを楽しんでるところを配信する』といった感じの催しだ。特に『これをやらなきゃいけない』なんていうノルマもないので、各々が好きなように楽しんでもらっている。
……その結果が、先程の解釈一致配置となるわけだな。
根が真面目な
現在の状況におけるMVPはというと、明らかに難易度が高いであろう巨体への【
プライベートでも仲が良いらしい彼らの、息の合った連携プレイによって……合計四つのテントが早々と立ち上げられたのだった。
ここまでの映像をみた視聴者さんが、果たしてどういう感想を抱くのかはわからないが。
たぶん、恐らく……今のおれと同じ感想を抱いていたことだろう。
勇者仕事しろ。
「そういえば魚いるらしいんすけど……どうします? ウィルムこう、いい感じに取れたりしない?」
「いやぁ…………さすがに無理であるな。多少は腕が伸びたとて、人間に毛が生えた程度よ」
「伸びたわけじゃないですよね? 元からですよね?」
「う、うむ。我輩生まれたときからこの腕の長さで五千年生きてますので」
「生まれたときから今の図体なワケ無ぇだろアホ邪龍」
「く……クソァ!」
おおっと、ここで全世界一億二千万人の視聴者さん(てきとう)のツッコミが届いたのだろうか。われらが勇者さまがプール兼生け簀に興味を持ったようだぞ。
いいぞその調子だ、そこは上手く使えば女の子たちを巻き込んで水着姿を披露できるぞ。さあがんばれ勇者。全世界一億人の健全な男子(てきとう)の願いはきみの活躍に懸かっているのだ。
背中こそ開いているものの、身体の前面は足先まで丈の長いローブで隠されていたエルフの王女さまを。
幼げで小柄な体躯ながら、修道服の上からでもあからさまに見てとれるたわわな実りを携えた聖女さまを。
大きく開いた肩口と腰まで入ったスリットがありながら、かたくなにそれ以上の肌色が許されなかった女魔法使いを。
…………幼稚園児くらいの背丈でふわふわ浮かぶ天使ちゃんは、まぁ……うん。そう。そうね、かわいいよね。そうね。
そんな彼女たちの、とびきりレアな水着水遊びシーンを堪能できるチャンスだったのだ。
場合によってはおれたちも魚に【変身】して、彼女たちのおまたの内もものあたりに体ごと突撃することも辞さない構えだった。
ちなみにおれはティーさま、ラニはベルさんを狙っていたらしい。
……まぁ、過去形になってるということはですね。どういうことなのか察していただけると思うんですけどね。
「じゃあ…………
「魔王も働きなさいよ。さっきベルの脚ガン見してたのバレバレなんだから」
「俺様を見くびるなよ。乳もバッチリガン見してたぜ!」
「さすが魔王様……最低っすね」
「おい待てコラテメェにだけは言われたか無ぇぞクソ勇者ァ!!」
「じゃあせっかくだし……釣りバカ対決すっか? オレちょっと釣竿無いか
「お願いね、おーくん。あとウィルくんごめん、わたしのカバンからタオル取ってもらってい?」
「婦女子の荷物を開けるほど落ちぶれては居らぬ。……鞄持ってくるので、それでいいです? アッ…………よいか?」
(ウーンやっぱ紳士的な邪龍よ。それはそれとして
(四本だけど……貸しちゃうの? 水着チャンスだよ?)
(おれの直感が告げてるんだ。釣りバカ対決のほうがウケるって)
(???? …………そ、そう?)
キャンプ場の外、カメラの死角へと抜け出し……なにやら周囲を『きょろきょろ』と見回している上級悪魔系
いかにも
先程の発言と今の行動、そして彼の思考パターンを推測すると……それすなわち。
「こっちですオギュレさん。四本ありますけど、二本で?」
「おぉ! ありがとね若芽ちゃん。……そうだなぁ、とりあえず二本借りていい? もしかしたらまた借りに来るかもしれないけど」
「大丈夫ですよ。わたしたちも楽しませてもらってますので」
「へへへ……いやぁ、本当ありがとうね」
「あっ、そうだ。もしわたしたちに要望とか、聞きたいことありましたら……今回みたいなのでもいいですけど、
「…………あぁ、そっか! ……いやぁ、この格好のときって……ホラ、スマホ持たないからさぁ」
「配信中ですもんね……」
いやぁ……やっぱりいいひとだ。
おれのような見た目ちんちくりん木っ端
どちらかというと『縁の下の力持ち』的なお方であり、配信中で目立つことはあまり無かったとしても……こういう潤滑剤的なメンバーの必要性も、おれはちゃーんとわかってるんだぞ。ふふん。
そんなこんなで、カッコよい姿でカッコよい去りぎわの挨拶(『アデュー☆』とか『チャオ★』とかそういう感じの)をおれに送りながら、小脇に『わくわく釣りセット』ふたつを抱えた上級悪魔はキャンプ場へと戻っていった。
……ここだけ切り取ると、これだけでもめちゃくちゃおもろい絵面だな。
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