第455話 【制圧作戦】愛欲
『さて……じゃあ、私が道を
「キンケーちゃん? 開くって、どうやって……」
『任せときなさい。
言うが早いか、この
溢れ出る魔力を隠そうともせず、隠密には全く適していないその黄金の姿で接近すれば……そりゃ当然、あの『巨人』も対処に出るだろう。
モタマさまの『陽光の
食らえば当然、ひとたまりもないだろうが……そう簡単に食らうほど、神域奉行はヤワじゃない。
『……祭事奉納は
ひらひらと挑発するように宙を舞い、威圧的な魔力を発し続ける金色の神鶏。
やがて鬱陶しげに頭部を振り回す『巨人』が、
『貰ったッ! 【
≪―――縺ェ窶ヲ窶ヲ菴輔□縺薙l縺ッ??シ!!??≫
『さぁ……私の秘蔵中の秘蔵、現代の
「や、ヤシオリ…………なるほど!」
その怪物をやっつけるにあたって、かつての大英雄が採択した手法こそが『醸造に醸造を重ねて作った超強いお酒を飲ませて、酔って無力化したところを殺そう』という、それはそれは大変
『あー、
あぁ……やっぱりそうでしたか。危なかった。セーフですセーフ。
……いやさすがにフツノさまとて、そう易々と思考を読んだりはしないだろうけど……なんかこう、本能的な警戒感というかな。
ともあれ……まぁつまり、たとえ神話クラスの大邪龍であっても、アルコールのもつ魔力には逆らえないのだということであって。
ましてやその
手強いとはいえ、さすがに神話に語られる邪龍ほどではない『巨人』が相手なのであれば。
その効果はこれまた……とてつもないものだった。
『……今よ! 若芽!』
「っ! はいっ!!」
≪―――鬆ュ逞――帙――>縲∬――協縺――励――>――≫
眠るとまではいかずとも……動作伝達系の魔力網をずたずたに狂わされたその巨体は、今や完全に麻痺・沈黙し。
おれたちはそんな『巨人』の、閉じきることなく地に付した顎門へと……意を決して飛び込んでいった。
………………………………………
………………………………
………………………
――――早く死ねばいいのに。
――――何でアンタみたいのが居るんだか。
――――せめてお前が■■■■い■の■だったらなぁ。
……うるさい。
うるさいうるさいうるさい。
何故……どうして、あたしがそこまで悪く言われなきゃならない。
あたしが何をしたと言うんだ。
……あたしの何が悪いっていうんだ。
――――部屋から出てこないで。いやむしろ帰って来ないでいいよ、お■■ゃ■。
――――可哀想よねぇ、■■■って。私達とは根本的に住む世界が違うんだから。
――――ウケる。本当■って生きてる価値無いでしょ。ブッサイクだし汚ならしいし。
――――***や****と同じ種から、どうしてお前みたいなのが産まれて来たんだか。
うるさいうるさいうるさい。
黙れ。消えろ。どっか行け。
あたしが何をした。あたしの何が悪い。
ただ***や****と同じように……同じ母の股から、同じように産まれてきただけじゃないか。
なんで、あたしが。
あたし……だけが。
…………
こんな理不尽な扱いを……ひどい言葉を言われ続けなきゃならないんだ。
――――お姉さんも妹さんもあんなに可愛らしいのに……■■■はねぇ。
――――本当。***と****のことで手一杯だもの。■なんかに構ってる余裕無いし……ていうか、可愛くないし。
――――■って臭いし汚いし不細工だし。
――――お前が■じゃなくて、***や****みたいな……可愛い■の子だったらなぁ。……いや***達に失礼か。
――――可愛くない■のアンタなんか……産むんじゃなかった。
――――何よその目は。
――――本当アンタって……可愛くない。
…………やめて。
もう、やめて。
――――そんなんだから。
――――アンタが■に産まれたから。
――――アンタがそんなに可愛げがないから。
やめて。やめて。
やめてやめてやめて。
―――― 可 愛 く な い か ら 、
皆 に 嫌 わ れ る の よ 。
………………………………………
………………………………
………………………
「…………これ、
「彼女が
動きを止めた『巨人』の、その口内へと飛び込んだおれたちを出迎えたのは……いかにも生物の口内といったグロテスクな内壁、
端的に言うなれば『異空間』のような、高さも広さも奥行きもわからない真っ暗な空間が……ただただ虚しく広がっていた。
恐らくは……
負の感情に起因する魔力で満たされた、まさに『混沌の領域』とでも呼称するのが相応しいであろう異空間では……幼い心をずたずたに引き裂くには充分すぎる言の刃が、後から後から降り注いでいた。
直接向けられたわけでもないのに……一本一本がこれ程までに鋭く、おれたちの心をいとも容易く痛め付ける。
こんな
自分を『いらないもの』として扱うこの世界に絶望し、自らを殺し得る程の負の感情を抱いたとて……それは仕方の無いことなのかもしれない。
「ノワ、大丈夫? やられてない?」
「大丈夫。動ける。……いかないと」
悪意と混沌の領域を一歩一歩進むたびに、濃密な悪意が身体に絡み付いてくるのを感じる。
……いや、どうやら絡み付く程度にとどまらず……実際におれたちを『侵食』してきているようだ。
彼女が『愛されたい』『愛される存在になりたい』と強く願ったことで会得した……周囲に自身への隷属を強いる【愛欲】の権能。
それがおれたちをも支配下に措こうと……いや、そんな生易しいものじゃないな。取り込み吸収してしまおうと、今もこうして精神干渉を試み続けている。
もはや理知的な制御を失った【愛欲】は、宿主の内に秘めたる魔力の猛るがまま、侵入者たるおれたちを捻じ伏せようと押し寄せてくる。
「……っ、これ……ヤバイよ。急がないと」
「だね。おれたちも、だけど……
目指すべき地点、
濃密な『悪意』の発生源……つまりは、単純に『悪意』が押し寄せてくる方向を目指せば良いのだ。
おれたちの心が『悪意』の奔流に押し潰されるのが先か。
それとも……おれたちがこの『悪意』の根元を絶つのが先か。
さあ……根比べといこうか。
泣く子も笑う『正義の魔法使い』の本気を、とくと見せつけてやろうじゃないか。
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